先日、X(旧Twitter)でこんな投稿が話題を集めていました。

「ワインって、ぶどうジュースの一番美味しいやつみたいな味すると思ってたんですよね」

……これ、共感する人も多いのではないでしょうか。


筆者もワインを飲み始めたとき、同じようなことを思いました。

「酸っぱいし渋いし、甘くないし、なんじゃこりゃ」……と。せっかくワインを買ってみたのにぜんぜんおいしいと思えず、しかたなくオレンジジュースで割って飲んだりしていました。

ワインはぶどうから造られるお酒なのに、どうしてぶどうジュースみたいな味じゃないのか?

どうすれば、「ぶどうジュースの一番美味しいやつ」みたいなワインを探せるのか?

そんな疑問にお答えします。

「ジュースっぽいワイン」「ワインらしいワイン」の違いはどこからくる?

Xで投稿されていた「ぶどうジュースの一番美味しいやつ」とはどういうワインなのかというと、おそらく、「甘くて、ぶどうらしい香りがするワイン」のことだと思います。

実は、そういうワインもちゃんと販売されています。

ただ、ワインの世界ではどちらかといえばぶどうジュースみたいな味のワインは少数派です。ですから、スーパーやワインショップで何となくワインを買うと、ジュースみたいなワインではなく「ワインらしいワイン」に当たることになります。

そもそも、どうしてワインはぶどうジュースみたいな味や香りになっていないのか。

理由の一つは、ぶどう品種です。

少しマニアックな話ですが、ぶどう品種は大きく「ヨーロッパ由来の品種」と「アメリカ由来の品種」に分かれます(他にもありますが、ここでは割愛します)。

たとえば、海外のワインでよく見かける「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」はヨーロッパ系で、「ナイアガラ」や「コンコード」はアメリカ系です。


一般的に、ヨーロッパ系ぶどう品種はワイン向き、アメリカ系ぶどう品種は生食・ジュース向きとされています。

理由はさまざまです。ヨーロッパの気候に合う合わないとか、アメリカ系ぶどう品種はジュースにしたほうが売れるとか、文化や歴史的な背景も重なって、「ワインはヨーロッパ系ぶどう品種で造る」という考え方が世界的に定着しています。

さらに、アメリカ系品種で造ったワインには「フォクシーフレーバー」というぶどうっぽい甘い香りが出ることがあり、ヨーロッパでは嫌われやすい傾向があります。

一方で、日本ではフォクシーフレーバーはそれほど嫌われていません。そのため、日本ではアメリカ系ぶどう品種から造ったワインも多く流通しています。

ぶどうジュースのようなワインを飲みたい場合は、あえてアメリカ系ぶどう品種で造ったワインを探してみるのもいいでしょう。
ワインの「甘口」と「辛口」ってどうやって選べばいい?

次に「甘口」「辛口」問題です。

ワインはぶどうジュースにアルコールを添加して造るのではなく、ぶどう果汁そのものを発酵させ、アルコールを生成します。

このとき、アルコールのもとになるのはぶどう果汁の「糖分」です。

糖分をすべてアルコールに転換すれば、アルコールが高くて、糖分のない辛口のワインができあがります。

ということは、アルコール生成を途中で止めてしまえば、糖分がワインの中に残り、甘口のワインに仕上がるわけです。
また、遅摘みしたり、樹上でぶどうの水分を凍らせたりして糖度を高め、甘口ワインを造る手法もあります。

ジュースみたいなワインが飲みたい場合は、この甘口ワインを選ぶといいでしょう。

甘口なのか辛口なのかは、ワインのラベルに書いてあることが多いです。

たとえば、「Dolce(ドルチェ)」や「Doux(ドゥー)」という表記があれば、それは甘口であることを意味しています。

ただ、問題があります。

甘口を表す表記って、すごく多いのです。甘口といっても極甘口もあれば半甘口もあって、それぞれ呼び名が異なりますし、国ごとでも表記は違いますからね。それを全部覚えるのはちょっと現実的ではありません。

しかも、ワインによっては「甘口なのに甘口とは書いていない」こともあります。

たとえば、フランスには「ソーテルヌ」という高級甘口ワインがありますが、ラベルにわざわざ甘口とは表記していないことがほとんどです。ワインの世界では「ソーテルヌ=甘口」という前提が共有されているため、ソーテルヌと書いてあれば十分伝わる、という考え方なのです。不親切だと感じるかもしれませんが、そういう文化なので、ある程度は慣れが必要です。


そんなわけで、甘口ワインを探すのは意外と大変です。

お店で探すなら、表ラベルではなく、より細かく情報が日本語で書いてある裏ラベルをチェックしたり、店員さんに「甘口ワインはないですか」と聞いたりして探すといいでしょう。
「ぶどうジュースの一番美味しいやつ」を飲みたい人におすすめのワイン

まとめると、「ぶどうジュースの一番美味しいやつ」みたいなワインを飲むなら、「ぶどうっぽい香りのする品種」と「甘口」をキーワードに探すと、イメージに近いワインに出会えるのではないかと思います。

いくつかおすすめの銘柄をご紹介します。

天使のアスティ:
イタリアで造られる甘口のスパークリングワイン。モスカート・ビアンコ100%です。この品種はマスカット系で、香りも甘く華やか。価格もお手頃かつアルコール度数も7%前後と控えめなので、ワインの入門にもぴったりです。有名なワインで、さまざまなECサイトやワインショップで購入できます。
ノーブルワン:
オーストラリアの有名生産者、デ・ボルトリが造る甘口ワイン。貴腐菌という菌をわざとぶどうに発生させ、水分を飛ばして糖度を凝縮するという手のかかった造り方をしています。この製法で造られるワインは「貴腐ワイン」と呼ばれ、フランスやハンガリー、ドイツなどが本場。
ただ、それらの国の貴腐ワインの多くは驚くほど高価なものも多いので、まずはぜひノーブルワンを飲んでみてください。いわゆる「ぶどうジュースのような香り」一辺倒ではなく、しっかりとワインらしい香りですが、味わいはしっかり甘口です。
キャンベル・アーリー ロゼ:
宮崎県の都農ワイナリーが造る色鮮やかなロゼワイン。キャンベル・アーリーはアメリカ系の品種で、フルーティーな香りが特徴です。甘口ですが、甘すぎず、さっぱりと飲めます。ちなみに「キャンベル・アーリー ドライ」というロゼワインもあって、そちらは辛口なのでご注意を。
クライン・コンスタンシア ヴァン・ド・コンスタンス:
南アフリカ産の甘口ワインで、ぶどう品種はミュスカ・ド・フロンティニャン、つまりマスカット系の品種を100%使用しています。かのナポレオンが愛飲し、晩年まで求めていたヴァン・ド・コンスタンスというワインを復刻したもの。1万円以上する高級ワインですが、それだけの価値がある極上の名品です。

山田井ユウキ/ワインエキスパート ワインも含め興味のおもむくまま多ジャンルで執筆するフリーライター。ワインの物語を伝える“ワインストーリーテラー”として活動中。著書に『ワインの半分は物語でできている。
』など。[有資格]ワインエキスパート/WSET Level3/ドイツワインケナー/第8回J.S.A.ブラインドテイスティングコンテスト・ファイナリスト この著者の記事一覧はこちら
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