TWOSTONE&Sonsの取締役に就任した長谷川創氏。PR業界大手として知られる東証プライム上場企業・ベクトルに創業初期から参画し、代表取締役社長や取締役副社長、グループCOOなどを務めながら、PR事業の立ち上げや上場をはじめ、ベクトルの成長をけん引してきた人物だ。
そうしたキャリアを背景に、PR事業のプロフェッショナルである長谷川氏がエンジニアプラットフォーム事業を中心に展開するTWOSTONE&Sonsに参画したことは大きな話題を呼んだ。
なぜ長谷川氏はTWOSTONE&Sonsに参画したのか。今後、同社でどのような役割を担うのか。これまでの経歴や経営観とともに話を伺った。
○ベクトル副社長を退任し、TWOSTONE&Sonsに参画した理由
TWOSTONE&Sonsは、エンジニアプラットフォームを軸に事業を展開し、グロース市場に上場する成長企業だ。IT人材不足という社会課題に向き合いながら、事業領域を拡張し続けている点でも注目を集めている。近年はエンジニア支援にとどまらず、企業のAI・DX推進を網羅的に支えるパートナーとしての存在感も高めている。
そうした環境のなかで、長谷川氏はどのような思いで同社に参画したのか。まずは、その背景から聞いた。
――まず、ベクトルの副社長を退任した理由から教えてください。
ベクトルでは創業期から参画し、スピード感を持って、会社を大きくしていくプロセスを牽引してきました。しかし、組織が成熟し、副社長という立場を全うするなかで、「自分自身がこれまでの成功体験の延長線上に留まっていないか」という自問自答がありました。
もう一度、成長の初期段階にある企業で、自分の持てるすべてを投じて「非連続な成長(Jカーブ)」を描きたいと純粋に思ったのです。
――長谷川さんがTWOSTONE&Sonsに参画したことに驚いた人も多かったと思います。
それはそうかもしれませんね。でも、実はTWOSTONE&Sonsとはそれ以前から関わりがあったんです。2018年頃、ベクトルはTWOSTONE&Sons(当時はBranding Engineer)に出資していましたし、基幹システムの入れ替えでも協力してもらいました。その縁がきっかけで、TWOSTONE&Sonsの代表取締役CEO 河端さん、代表取締役COO 高原さんとつながりが生まれました。
そして2023年に、お二人から、社外取締役の打診を受けました。そこから、毎月の役員会に出席したり、困っている部署に足を運んで話をしたりしているうちに、TWOSTONE&Sonsのドメイン領域に興味を持ちまして、このたび取締役に就任することになったわけです。これは代表2人にしてやられましたね(笑)。
○「面白い仕事」を求めて築いてきた異色のキャリア
――長谷川さんのキャリアについてもお聞きします。もともと、ベクトルの創業から関わっていらっしゃいますよね。
そうですね。
――そこから再びベクトルに戻られたわけですね。独立心や起業志向が強かったのでしょうか。
そういうわけではなかったです。90年代当時は、世の中の風潮としてもスタートアップや資金調達といった言葉すらないような時代で、むしろ公務員が人気の職種でした。そんな中でベクトルに戻ったのは、私自身がもっと多様で、楽しい仕事を求めていたんですよね。当時は独身だったので、守るものが少なかったことも大きかったですね。最悪の場合でも自分一人ならなんとかなりますから。
○広報PRの可能性を信じて事業をピボット
――そこからベクトルを東証プライム上場企業のPR会社になるまで育て上げました。
といっても最初はPRという概念すら知らず、2000年頃まではセールスプロモーション領域で駅前サンプリングやイベント運営などを行っていました。ターニングポイントになったのは、渋谷で実施した「着ぐるみが街を歩く」という街頭イベントです。私たちはそのイベント運営を担当していたのですが、ちょうどイベント中にクライアント企業の広報の方が来られて「こんな面白いイベントをやっているのに、どうしてメディアを呼ばないの」と言われて。
すぐに書店に走って、広報について書かれた本を探しました。ただ、今でこそ広報関連の書籍はたくさんありますが、当時はたった2冊しかなかったんです。「書籍だけだと物足りない。もっと広報について知りたい」と思って、次に総合代理店の広報プランニング部門にアポイントを取り、広報について教えてもらいました。
――ものすごい行動力ですね。
それくらい、広報やPRの領域に可能性を感じたんです。欧米では広報が経営層の近くに置かれるくらい重要な領域であることを知り、「日本でもいずれそうなる」という仮説を立てました。そこから、セールスプロモーション事業は一切やめて、PR事業にピボットする決断をしました。
――ベクトルの急成長の理由はどう分析していますか。
WebやSNS普及などの時代変化に合わせて、PRにおける情報拡散をいち早くデジタルシフトしたことでしょう。「デジタルで情報を広げるならベクトルだ」と認知してもらえたことで、他社にはない独自の立ち位置を築くことができました。
○変化の激しい時代に意識すべきなのは「動きながら修正する」こと
――ベクトルを長年率いてきた長谷川さんの経営観についてもお聞きします。
大事にしている考え方は、事業がうまくいっているときほど、新しい収益の柱作りに注力すること。また、戦略は「金脈がある方向性の特定」程度にとどめ、実行と修正にリソースを割くことです。マーケットはどんどん変わっていくので、戦略は細かく決めすぎるのではなく「動きながら修正する」ことが重要だと思います。
たとえば、今の時代変化スピードだとSNSの活用のやり方を考えているうちに、別のSNSに人気が移ってしまうことなんてよくありますよね。それなら早く始めてしまって、状況を見ながら戦略を変えていった方が経験値やデータを蓄積できます。
――スピードと変化に対応する力が大事なのですね。
特に経営者はスピードが重要です。トップの判断が遅れると、メンバーの動きはそれ以上に遅れるものだからです。可能な限り早いレスポンスを心がけていて、メールやメッセージは来た瞬間に処理するようにしています。
――成功する経営者の共通点は何でしょうか。
先ほどの話とも重なりますが、過去の成功体験にとらわれないことです。
○インプットを増やし、人と会って視座を上げることで成長する
――個人がキャリアを切り開くための行動指針についてアドバイスをお願いします。
おすすめしたいのは、情報との偶然の出会いを増やすことです。たとえば私は今もあえて紙の新聞を読んでいます。スマホのニュースアプリのようにパーソナライズされたものではない情報と出会いたいからです。そうやってインプットを増やすことで、アウトプットの質も上がっていきます。情報を咀嚼し、クライアントに合う形で提供すれば価値を生むのです。その際、クライアントからの要望はすべて「イエス」で受けるようにしましょう。たいていの案件は対応できます。まずイエスで受ける行動が挑戦心を育みます。
人と会うことも重要です。
――今後、TWOSTONE&Sons取締役としてどんな役割を担うのでしょうか。
参画から約2カ月ですが、既存事業とかけ合わせた新規事業の構築、M&A、企業アライアンス、事業提携、送客スキームの設計などに携わっています。
TWOSTONE&Sonsは今、急伸する企業によくある「組織が体系化される前に数字が伸びてしまっている」状態にあります。ここから第2の成長フェーズに移っていくわけですが、そのタイミングでメンバーたちの視座を経営視点まで引き上げることができれば、事業は一段と成長します。私の経験上、TWOSTONE&Sonsなら新しいフェーズを経て、事業規模を10倍に引き上げることも可能だと考えています。そのために、経営ボードメンバーとともに私の経験や知見を使っていくつもりです。











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