ダイハツ工業が同社初の量産電気自動車(BEV)「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」を発売した。軽商用BEVなので気になるのは、ガソリンエンジン車に乗る場合に比べてトータルコストで「お得」になるのか、つまり、元は取れるのかという点。
そのほかにもいろいろと聞いてきた。

軽BEVなのにバッテリーが大きい!

「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」は軽商用車の「ハイゼット カーゴ」「アトレー」がベース。軽のBEVでは最大となる容量36.6kWhのバッテリーを搭載しており、一充電走行距離(WLTCモード)は257kmを実現している。ちなみに、ライバルになりそうな軽商用BEVのホンダ「N-VAN e:」はバッテリー容量29.6kWh、一充電走行距離245kmだ。

価格は「e-ハイゼット カーゴ」が314.6万円(2シーター/4シーター共通)、「e-アトレー」が346.5万円、「N-VAN e:」が269.94万円~291.94万円。荷室を比べると、「荷室フロア長」(2名乗車時)という数値では、N-VAN e:が1,585mm、e-ハイゼット カーゴが1,965mmとなっている。

初めて量産するBEVについて、ダイハツの商品企画担当に話を聞いた。

――ダイハツさんとしては、全く初めてBEVを作るわけですか?

ダイハツ担当者:量産BEVとしては、ダイハツ初です。過去には、台数限定でBEVを作って、お客様に使ってもらったことがありました。

――開発と生産のスキームを教えてください。トヨタ自動車、スズキとの共同開発だと伺いました。

ダイハツ担当者:BEVシステムの開発と車両の開発を分けて説明させていただきます。
バッテリーやeアクスルなどのBEVシステムは3社の共同開発で、そのシステムをクルマに載せるところ(車両開発)はダイハツが担当しました。

――クルマはダイハツ九州の大分(中津)第1工場で生産、販売目標は月間300台とのことですが、ダイハツで生産してトヨタ、スズキにOEM供給を行うということは、両社に作る台数を含めると、実際の生産台数は販売目標の300台を超える可能性があるわけですね。

――36.6kWhというバッテリー容量には驚きました。軽でも、これだけの電池が積めるんですね。

ダイハツ担当者:商用車ですので、一日に走る距離を考えて設定しました。仕事の途中で充電するということは、業務の効率を考えると、なかなかできません。普段使う走行距離をカバーできないと、お客様には使っていただけない。また、走行可能距離は冬場、夏場で変わってきます。それらを考慮した上で、安心して使っていただける走行距離を担保しようとすると、このくらいの容量になります。

――軽商用BEVは、Amazonなどの荷物を個人の住居に運ぶ「小口配送」で活躍しているイメージです。正直、ここまで走行距離がなくても大丈夫なお客さんが多そうな気がします。

ダイハツ担当者:いろいろなお客さまがいらっしゃいます。
ガソリンエンジンの軽商用車を使っていただいているのは、おっしゃる通り「小口配送」の方をよく目にされるかと思いますが、ほかに例えば建設関係、小売り関係など、いろいろな使われ方があります。走る距離も、業種によって違ってきます。

同じ小口配送でも、都市部なら1日に20~30kmというケースがありますが、郊外、地方になってきますと、1日に100kmを走るようなこともあります。また、普段は1日数十kmでも、月に1回とか、年に数回という頻度で、緊急でちょっと遠出をするということもあります。そういうときに使えないクルマだと、導入していただけません。

――なるほど。それであれば、もう少しバッテリー容量が小さくて、価格の安いバージョンを用意する手もあったのでは?

ダイハツ担当者:バッテリー容量は価格に跳ね返る要素でもありますので、どの容量が最適なのかについては、我々も悩みました。ただ、いろいろなお客さまに話を聞くと、仕事が止まる(つまり、軽商用BEVのバッテリー容量が不足する)ということに対する不安は、やはりありました。

BEV化しても積載能力は妥協なし!

――積載スペースはベース車両と同等で、最大積載量350kgも変更なしだそうですね。そこはBEV化しても譲らなかった?

ダイハツ担当者:ここは、妥協せず。

――BEV化すると床下にバッテリーを敷き詰めることになるので、床が高くなって、積載スペースが小さくなるはずだと思ったんですが。

ダイハツ担当者:全く同じなんです。


――気になるのは「元が取れる」かどうか、という点なんです。例えばBEVを買った人とガソリン車を買った人がいたとして、ライフサイクルでのコストを考えた場合、さすがに元は取れないと思うんですけど、コストの差はどのくらいになるんでしょうか? 商用車はしょっちゅう乗り換えるというよりも、長く乗り続けるクルマだと思うんですけど、トータルで考えると?

ダイハツ担当者:まず、ランニングコストはBEVの方が優れているので、「走れば走るほど(コスト面ではBEVの方が有利になる)」というところがあります。あとは、BEVは購入時に補助金が取得できます。

なので、使い方や補助金の金額など、いろいろな要素があるのですが、一例を申し上げますと、郊外~地方の小口配送で、1日に100kmほど走るとして、2025年度のCEV補助金(上限55万円)を取得できた場合は、だいたい5年くらいで元が取れます。もちろん、最近はガソリン代が下がっていたりしますので、そのあたりも影響してきますから、(元が取れるというのは)あくまで仮定の話ではあります。

――元を取れるとは思っていなかったので意外なお話ですし、もし自分が仕事で軽商用車を使う立場だとしたら、嬉しい驚きです。BEVなら給油にいかなくてもいいですし、車内は静かですし、エンジン音がないので早朝・夜間の配達でも周囲に気を使わずに済むと思います。それで「元が取れる」のだとすれば、BEVでいい、BEVがいいという事業者の方は、けっこういそうな気がします。

ダイハツ担当者:我々もそう考えていますので、販売の現場でしっかりと伝えていきたいと思います。
【フォトギャラリー】ダイハツ初の軽商用BEV
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