第84期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、12回戦全6局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた伊藤匠二冠―高見泰地七段戦は99手で伊藤二冠が勝利。
9勝目を挙げて自力でのA級昇級まであと1勝と迫っています。
○マジック2の伊藤二冠

8勝2敗で単独2位につける伊藤叡王は自力昇級圏内。とはいえ背後には大橋貴洸七段らのライバルが迫っており気の抜けない戦いは続きます。正統派居飛車党同士の対決となった本局は両者得意の相掛かりへと進展。後手の高見七段は力戦含みの△3三金型で迎え撃ちました。先手の桂の活用を阻んでいるのが主張で、局面が落ち着けば桂頭攻めが楽しみです。

黙っていては不満と見た先手の伊藤二冠が動きます。盤上中央に角を打ったのは桂取りの一点狙いだけにやや打ちづらいものの、後手の左金が愚形なだけに見た目以上に受けづらい格好。意表を突かれた高見七段は1時間超の長考で妥協の受けをひねり出しますが、ここから伊藤二冠の派手な手筋が光りました。角を切り飛ばして銀を取ったのがその始まりです。

○一人終盤戦に追い込み快勝

伊藤二冠はこの数手前にもタダのところに飛車を進める強手を披露しており、開始30数手で二枚の大駒を差し出す様子はさながら「序盤は駒の損得より速度」というような新感覚です。▲銀香△飛の二枚換えに成功した伊藤二冠は豊富な持ち駒を生かして攻撃続行。
攻めが一段落した局面は後手玉をいわゆる「一人終盤戦」に追い込んでおり優勢は明らかです。

逆転を目指す高見七段も食い下がりますが、伊藤二冠の指し手は最後まで冷静でした。終局時刻は21時46分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた高見七段が投了。全体を振り返ると、後手の注文に対して積極的な角打ちで応戦した伊藤二冠が大胆な大駒さばきでリードを拡げた快勝譜に。9勝2敗とした伊藤二冠は次戦・澤田真吾七段戦に勝てばA級昇級です。

なお、この日同じく勝利した広瀬章人九段が10勝1敗として首位でのA級昇級を確定させています。

水留啓(将棋情報局)
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