日本中のコンビニや駅、空港などで手軽に借りられ、どこでも返せるモバイルバッテリーシェアリング「CHARGESPOT(チャージスポット)」。我々のスマホライフに欠かせないインフラとなったこのサービスを、影で支えているのがロジスティクス(物流)の現場だ。
今回は、埼玉県にある狭山倉庫を訪問。返却されたバッテリーがどのようにメンテナンスされ、再び街へと送り出されるのか。CHARGESPOTを展開するINFORICHの本夛結香子さんに、その舞台裏について話を聞いた。
○CHARGESPOTを支える「ロジ業務」の裏側
――まず、CHARGESPOTのロジ業務全体の役割と、運用の流れについて教えてください。
狭山倉庫以外に千葉の船橋にも倉庫があるのですが、倉庫で担っているロジ業務は大きく分けて3つあります。まずは「配送業務」。バッテリースタンドを店舗に設置する際の調整や不具合による交換対応、閉店に伴う撤去・返却の手配などを担っています。
2つ目は「在庫管理」です。今、倉庫にいくつ在庫があるか、日々どのくらいのペースで出荷されているかといったことを分析し、「何カ月後に在庫がなくなるから、今のうちに発注をかけよう」といった予測と発注業務を行っています。
そして3つ目が製品の「輸入」。当社のバッテリーやスタンドは中国で製造されているので、海外からの輸入・通関の担当もロジが行っています。狭山倉庫では主にバッテリー、船橋のではバッテリースタンドの修理やリニューアルといった形で分担しています。
――全国から戻ってきたバッテリーは、どのような工程を経て市場に戻るのでしょう?
戻ってきたバッテリーは、主に「良品として返却されたもの」と「ブラックリストとして返却されたもの」の2つに仕分けます。
重要になるのがログ(記録)の残し方で、当社のバッテリーはすべてシリアルナンバーで管理しています。スタンドに刺さっていれば、今どこにあるかはシステムで把握できますが、倉庫に戻ってきた瞬間も必ずログを残します。「このシリアルは今、倉庫に帰ってきた」とシステムに紐付けることで、1個単位の動きを完全に追えるようになっています。
――「ブラックリスト」というのは、どういったものを指すのでしょうか?
ユーザー様から「充電ができなかった」「ケーブルが切れている」といった報告が一度でも上がったり、バッテリースタンドが異常を検知したモバイルバッテリーのことです。報告があるとシステム上でブラックリスト化され、回収の対象になります。これらは通常返却品とは別に、より慎重に不具合の有無を確認していきます。
○「5秒間の壁」と「ねじる動作」に隠された検品のこだわり
――検品作業において、特に重視しているポイントを教えてください。
検品の基準はかなり厳格で、具体的にはスマホにケーブルを挿してから「最低5秒間」はそのまま待ちます。挿した一瞬だけは充電マークが出るけれど、5秒経つと切れてしまう……という不具合パターンも稀にあるので。それを防ぐために、必ず5秒以上挿し続けて、安定して給電されていることを確認します。
あとは、スマホに挿した状態でケーブルを少しねじったり、引っ張ったりして接続を確認したりもしていますね。
――ブラックリストとして報告があったけれど、「実は壊れていなかった」というケースもありそうですね。
それもありますね。ユーザー様のスマホ側の端子が汚れていたり、相性が悪かったりして「充電できない」と報告されることもあります。そういったものは、この厳しい検品を通れば「良品」として再度市場に戻します。逆に、ブラックリストとして報告がなくても、動作に異常が確認されたり、少しでも膨張している場合は、絶対に市場には出しません。
○「新品同様」を目指す清掃と、リサイクルの考え方
――清掃、リフレッシュ作業では、どのような基準を設けているのでしょうか。
シェアリングサービスですので、戻ってきたものには飲み物のこぼし跡や、落下による擦り傷がついていることもあります。それらはアルコールやクリーナーなどを使って、スタッフが一台一台、本当に綺麗に磨き上げています。ただ、どうしても落ちない汚れや、深い傷があるものはNGにしています。
――傷については、どの程度のレベルでNGだと判断するんですか?
手順書で細かく決めていますが、特に触ったときに怪我をする可能性があるような傷は一発でNGです。表面が削れてチクチクしていたり、鋭利な傷があったりするものですね。そうしたものは廃棄対象となります。
――廃棄されるバッテリーは、その後どうなるのでしょう?
電子ゴミを出さないよう、認可を得た専門の産業廃棄物業者さんにお渡ししています。そこでリチウムイオンなどの部品を適切に抜き取り、再資源化・リサイクルされるスキームを組んでいます。
――そもそも、これほど膨大な数のバッテリーをどうやって効率的に回収しているのですか。
大きく2つのルートがあって、1つは設置店舗様からの返却です。返却が非常に多い店舗様だとスロットが満タンになってしまい、次のユーザー様が返せなくなってしまいます。その際、店舗様がご厚意でバッテリーを抜いて保管してくださり、一定数が溜まったら倉庫へ送っていただくという流れです。
もう1つは、私たちが「ラウンダー」と呼んでいる、市場の在庫を最適化してくれるパートナーさんたちの存在です。たとえば「渋谷で借りて、郊外にある家の近くのコンビニで返す」というケースが多いのですが、そうなると都心はバッテリー不足、郊外は過剰という「ドーナツ化現象」が起きます。
ラウンダーさんはその偏りを解消するために、余っている場所から抜き、足りない場所へ差しに行ってくれるのですが、その際、同時に「ブラックリスト」のバッテリーも回収してもらっています。
○厳密な管理が「いつでも使える安心感」につながる
――充電から再出荷までの工程で、効率化やミス防止のために取り組んでいることがあれば教えてください。
どちらかというと効率化以上に、厳重さを優先しています。最近、モバイルバッテリーの発火事故がニュースにもなっていますが、そのような事態が私たちのサービスで起こらないよう、常に高い緊張感と危機意識を持って取り組んでいます。ですから、最近では検品手順をさらに細かく設定し、「ケーブルが壊れていた」「バッテリーが膨張していた」といった詳細をこれまで以上に細かく記録するようにしました。また、膨張が確認されたバッテリーは専用のペール缶にて適切に保管し、そのまま産業廃棄物業者へ引き渡しています。
――もう一方の「船橋拠点」についても少し教えていただけますか?
船橋では主にバッテリースタンドのリニューアルを行っています。店舗の閉店やイベントでの短期設置で戻ってきたスタンドを検品し、そのまま使えるものは清掃して再び出荷。機能的に問題があるものは修理に回します。
中身や部品の一部を交換したり、あるいは外側の箱だけが黄ばんだり汚れたりしている場合は、外装だけを新品に交換して蘇らせています。
――最後に、こうした倉庫での地道な業務が、CHARGESPOTの「いつでも使える安心感」にどのようにつながっているとお考えですか?
私たちは、一定の年数が経った古いバッテリーや、充電サイクルが上限を超えたもの、蓄電容量が減ったものなどはすべて倉庫で省き、再出荷NGにして厳密に管理しています。そうした基準を徹底することで、市場にあるバッテリーは、安心してお使いいただける状態を維持しています。
普段何気なく使っているモバイルバッテリーの裏側では、ここまで徹底した管理が行われていた。
猿川佑 さるかわゆう この著者の記事一覧はこちら











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