もうすぐ新年度。この春から社会に出るみなさんは、新しい生活への期待と緊張が入り混じる時期ではないでしょうか。
また、社会人になると自分でお金を管理する場面がぐっと増えますし、将来のために投資を考え始める人もいるでしょう。

そこでこの記事では、これから社会人になる方に向けて、初心者でも取り組みやすい投資の制度や、失敗しにくい始め方をわかりやすく解説します。新生活を安心してスタートするためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

新生活で「投資」を考えたい理由とは

新社会人としての生活が始まると、お金の使い方がこれまでと大きく変わります。毎月決まった給料が入り、家賃や光熱費、食費などを自分で管理するようになる人も多いでしょう。「生活費以外のお金はとりあえず貯金しよう」と考えるかもしれませんが、このタイミングこそ、投資について知っておくとよい時期でもあります。

実は、お金の価値は常に一定ではなく、時間とともに変わっていきます。たとえば、100円で買えていた商品が150円に値上がりした場合、同じ商品を買うために、これまでより多くのお金を支払わなければなりません。つまり、同じ金額で買える量が減り、実質的にお金の価値が目減りしていることになります。

銀行預金は元本割れの心配がなく、安全性の高い方法です。しかし、最近は金利がやや上昇しているとはいえ、ただ預けているだけで大きく増えるわけではありません。そのため、物価が上がり続ける「インフレ」が進むと、通帳の金額は変わらなくても、お金の価値は減ってしまう恐れがあるのです。


投資と聞くと、「損をしたらどうしよう」と不安に感じるかもしれませんが、本来の投資は、短期間で大きな利益を狙うものではありません。時間をかけて、少しずつ資産を育てていくものです。これから社会人になるみなさんには、その時間がたっぷりあります。この時間の長さこそが、投資において大きな強みになるのです。

それに、新生活のスタートは、お金の計画を立てるのにちょうどよいタイミングでもあります。毎月の収入や支出がおおよそ決まってくるため、家計の見通しを立てやすくなります。その中から、無理のない金額で積立を始めることもできるでしょう。最初から大きな金額を準備する必要はなく、少額からでも、コツコツと続けることが大切です。
投資初心者におすすめなのは「NISA」と「iDeCo」

新社会人が投資を始めるなら、どのような方法がよいのでしょうか。投資にはさまざまありますが、まずは、少額から始めやすく税制優遇のある方法が最適です。ここでは、国が制度として用意している「NISA」と「iDeCo」をご紹介します。
迷ったらまず選びたいNISA

投資初心者にまず知っておいてほしい制度が、NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)です。
NISAは、投資で得た利益に税金がかからない制度で、長期的な資産形成を後押しする目的で作られています。通常、投資で利益が出ると約20%の税金がかかりますが、NISA口座での運用なら、その税金が非課税になります。

NISAをおすすめする理由は、少額から始められるうえ、制度に期限がなく、長く続けやすい点にあります。多くの金融機関では、月100円~1,000円から購入でき、無理のないペースで投資を習慣化できます。また、長期間積み立てることで、価格の上下に振り回されにくくなる点もメリットです。
iDeCoは老後資金づくりの制度

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための制度です。毎月一定額を積み立て、その掛金が全額所得控除になるため、税金を軽減できるという大きな特徴があります。その他にも節税メリットがあり、将来に向けて計画的にお金を準備したい人にとって、魅力的な制度といえるでしょう。

ただし、iDeCoには原則60歳までお金を引き出せないというルールがあります。そのため、新社会人の場合は、まずはNISAなどで柔軟に使える資産を育てつつ、余裕が出てきたらiDeCoを検討する、という考え方もひとつでしょう。
投資信託が初心者に向いているのはなぜ?

投資の世界に足を踏み入れると、よく見聞きするのが「投資信託」です。投資信託は、多くの人から集めたお金をひとまとめにして運用する仕組みで、株式や債券などに分散して投資されます。
ひとつの商品で分散投資ができるため、リスクを抑えやすい点が特徴です。

また、運用は専門家が行うため、個別株のように企業分析などを細かく行う必要はありません。仕事や新生活で忙しい新社会人にとって、手間をかけずに続けやすいという点も大きなメリットです。まずは、値動きが比較的安定しやすい「インデックス型」の投資信託から始めると、心理的な負担を抑えながら取り組めるでしょう。
新生活から投資を始めるための具体的なステップ

投資を始めるとき、多くの人がつまずきやすいのが、「何から手をつければいいのかわからない」という点です。ここでは、投資を安心してスタートするための流れを、段階ごとに整理します。
ステップ1: 投資を始める前の準備をする

投資を始める前にやっておきたいのが、毎月の収入と支出を把握することです。家賃、光熱費、通信費、食費などをざっくりでも把握しておくことで、「毎月いくらなら無理なく投資に回せるか」が見えてきます。なお、投資は余裕資金で行うものですので、生活に必要なお金には手をつけないようにしましょう。

あわせて、生活防衛資金として、すぐに使える貯金を確保しておくことも重要です。新社会人の目安は、生活費の3ヶ月分程度。これがあることで、病気やケガなどで万が一の出費があっても、生活を守ることができます。


「貯金と投資、両方はきつい」という場合は、貯金を優先しましょう。生活防衛資金を貯められていないうちは、無理して投資を始める必要はありません。

ステップ2: 投資の目的を明確にする

次に考えたいのは、何のために投資をするのかという目的です。目的がはっきりすれば、「いつまでに・いくら必要か」も見えてきます。すると、数ある中から最適な運用方法を選びやすくなります。

たとえば、老後資金のように何十年も先に使うお金であれば、時間を味方につけながら、ある程度リスクを取りつつ成長が期待できる資産で運用することも可能です。

一方で、数年以内に使う予定があるお金は、定期預金や個人向け国債など、安全性の高い方法で確実に確保しておくことが大切です。使う時期が近いお金ほど、「増やすこと」よりも「減らさないこと」を優先しましょう。
ステップ3: 実際に投資をスタートする

ステップ2まで進んだら、次はいよいよ実践です。まずは証券口座を開設し、NISAなどの制度を利用する場合は、その手続きもあわせて行いましょう。 初心者には投資信託がおすすめですが、最初からたくさんの商品を持つ必要はありません。まずは1本だけ積立を始め、慣れてきたら様子を見て保有数を増やすことをおすすめします。


金額も、はじめは月数百円~数千円から始めてみましょう。気持ちや家計に充分余裕の持てる金額でスタートするのがコツです。
ステップ4: 投資を続ける仕組みをつくる

投資は、長く続けることも大切です。そのためには、あらかじめ決めた金額を自動で積み立てられる「積立投資」を活用するのがおすすめです。給料が入った後に自動で引き落とされるよう設定しておけば、毎回判断する必要がなく、自然と投資が習慣になります。

また、日々の値動きを細かくチェックしすぎないことも大切です。短期的な価格の上下に振り回されると、不安が大きくなりやすいからです。見直しは、半年から1年に一度を目安にするくらいがちょうどよいでしょう。
投資を始めるときに気をつけたいこと5つ

投資を始めるときは、「まずはやってみよう」という前向きな気持ちが大切です。一方で、いくつかのポイントを知らずに始めてしまうと、必要以上に不安を感じたり、途中でやめてしまったりすることもあります。最後に、投資を始める際の注意点について解説します。
1.少額から始める

まず気をつけたいのは、最初から大きな金額を投資しないことです。
投資する金額が大きいと、その分、値動きによる不安も増します。新社会人のうちは収入が低めのケースもあるため、少額から始めることが重要です。「この金額なら、たとえ失ったとしても悩まない」と思える範囲でスタートしましょう。
2.長期的な視点で考える

短期間で結果を出そうとしないことも大切です。投資を始めた直後は、価格の上下が気になりがちですが、短期的な値動きに一喜一憂してしまうと、冷静な判断ができなくなります。投資は、長期的な視点で考えるのが基本です。数ヶ月、数年の変動ではなく、さらに先を見据えて続ける姿勢が求められます。
3.SNSや周囲の成功談に振り回されない

SNSや周囲の成功談に振り回されないことも、注意したい点のひとつです。「○ヶ月で利益が出た」「これで一気に増えた」といった話は魅力的に聞こえますが、多くの場合、大きなリスクを受け入れていた、相場の流れがよい時期に投資していたといった事情があるものです。自分の生活や収入に合わない投資方法をまねてしまうと、かえって不安が大きくなってしまいます。
4.投資の内容を理解しておく

商品の内容や手数料をよく理解しないまま投資を始めるのは避けましょう。内容をよく知らないまま始めてしまうと、「こんなはずじゃなかった」と感じる原因になります。難しい言葉が多くても、最低限「何に投資しているのか」「どんな値動きをする可能性があるのか」「どのような手数料がかかるのか」といった点は確認しておきましょう。
5.無理してまで投資をしない

最後に意識したいのは、生活を圧迫する投資は本末転倒だということです。投資のせいで毎月の生活が苦しくなり、必要な支出まで我慢するようになってしまっては、長く続けることはできません。状況によっては、すぐに投資をスタートしないほうがいい場合もあります。

新生活は何かと出費が多い時期だからこそ、「無理をしない」「続けられる」を基準に投資を検討してみましょう。
社会に出たタイミングこそお金と向き合いたい

社会に出ると、仕事を覚えたり、新しい生活リズムに慣れたりと、毎日があっという間に過ぎていくかもしれません。しばらくは、お金のことまで考える余裕がないと感じることもあるでしょう。

それでも、生活が少し落ち着いたタイミングで、ぜひ一度お金と向き合ってみてください。収入や支出を把握し、将来にどう備えるかを考えることに、早すぎるということはありません。
今のうちからお金と向き合い、小さな一歩を踏み出しておくことが、未来の安心と可能性を広げてくれます。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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