ヤマハ発動機と船場は、横浜みなとみらいの共創拠点「YAMAHA MOTOR Regenerative Lab(以下、リジェラボ)」で2月17日、バイク部品をアップサイクルした新作ファニチャーの発表会を開催した。同プロジェクトは、ヤマハ発動機の技術力や職人の情熱を、空間デザインを通じて可視化する試みの第2弾にあたる。


○「再生と共創」を体現するリジェラボの役割

2024年10月に開設されたヤマハ発動機のリジェラボは、自然・人間性・コミュニティをより良い状態へ再生する「レジネレイティブ(再生)」と「共創」をテーマにした実験的なスペースだ。

ヤマハ発動機の東山氏は、「完成された空間を提示するのではなく、あえて未完の状態からスタートし、訪れる人やプロジェクトに応じて変化し続ける空間」であると定義。ヤマハ発動機が提供する“遊び”を持続可能なものにするためには、自社のみならず多種多様な視点を持つパートナーとの共創が不可欠であると力を込める。

プロジェクトのパートナーである船場の荒毛氏は、同社が推進するエシカルデザインの観点からリジェラボの意義を強調した。

「単に格好いい、おしゃれというだけでなく、ヤマハ発動機のバックグラウンドや価値観を知ることから始めました。磐田の工場やマウンテンバイクパークでの体験や共感を通じて生まれたのが『つくらないツクリモノ』というコンセプトです。廃材をただ再利用するのではなく、新しい意味やストーリーを纏わせることで、価値ある存在へ生まれ変わらせることが重要だと考えています」(荒毛氏)

プロジェクト第1弾では、廃棄予定だった競技用プールの資材をアップサイクルしたテーブルなどを制作し、「日本空間デザイン賞2025」で金賞を受賞。オープン以来、来場者は1万人を超え、同拠点を通じた採用応募が全体の10%以上に達するなど大きな成果を上げているという。
○技術と職人魂を形にする第2弾プロジェクト

プロジェクト第2弾のテーマは、ヤマハ発動機の主力事業である「バイク」。ただし、モーターサイクル事業部では工場内でのリサイクルが徹底されており、廃材はほとんど存在しない。

ヤマハ発動機の鈴木氏はそうした背景を踏まえたうえで、「今回は端材の活用ではなく、長年培ってきた技術や職人さんの精神の循環にフォーカスしました。お客様に感動を届けるために一切妥協しない、ものづくりの姿勢を感じていただきたいと思います」とプロジェクトの狙いについて述べた。


船場のデザイナーである田口氏は、ヤマハ発動機の工場を見学した際のことを振り返り、「責任と誇りを持って向き合う職人の方々の姿に心を動かされました。リジェラボは何かを生み出していく場であり、その情熱を持ち続ける場でもあるので、創造性を刺激するようなものを作れないかと考えました」と語った。

今回制作されたファニチャーは主に4つ。1つ目が「鍛造(たんぞう)テーブル」だ。エンジンの心臓部を支える「鍛造」技術を可視化したデザインで、「鍛造」とは金属を強い力で叩き、一体成型することで高い強度を生み出す加工法を指す。

鈴木氏はこれについて、「エンジン内部では部品が1分間に数千回も超える回転や上下運動に耐え続ける必要があり、絶対的な品質が求められます。今回のテーブルには、通常の塊から完成品になるまでの工程が埋め込まれていて、金属の大変形という巧みな技術によって鉄の塊が機能部品へと転生し、資源が未来へ循環していくさまを表現しています」と説明。

田口氏は、「50ミリの厚みのレジンの中に部材を5層構造で配置し、見る角度によって表情が変わるようにしています。一部の表面はあえてレジンを染み込ませない処理を施し、金属本来のずんと重く冷たい質感を感じていただける仕掛けにしました」とその工夫を語った。

ヤマハ発動機の伝統と遊び心を表現したのが、2種類の塗装テーブルだ。

「SRシリーズモデル」には、職人の手作業による「サンバースト塗装」が施されている。現在、この高度な技術を担える職人はわずか2名。
鈴木氏は「塗装工程でも自動化が進む中、この塗装には手作業でしか出せない美しさがあります。失われかけている大切な技術を継承しようとするものづくりの精神を感じていただきたいと思います」と話す。

一方、スポーツモデル「YZF-R25」をモチーフにしたテーブルは、スピード感を表現。最大の特徴は、脚部に本物のフロントフォークを採用している点だ。

田口氏は、「鈴木さんから『フロントフォークを脚にできないか』と提案をいただきました。ヤマハ発動機らしくて遊び心がある、すごい面白い発想だと思いましたし、ヤマハ発動機と一緒に取り組んでいなければ出ないアイデアだったと思います」と振り返った。

最後が「ギアチェーン照明」。アルミ一体成形の土台に、本物の4ストロークエンジンの機構を搭載している。鈴木氏は、「エンジン内部ではわずかなズレや摩擦が性能に直結するため、極めて高い加工精度が必要です。長時間動き続けるための滑らかさと強度、その両方を成立させている点がヤマハならではのエンジンの特性です」と説明。

この機構を活かしたデザインについて、田口氏は「ハンドルを手で回すとピストンが往復し、実際のエンジンと同じ圧縮爆発のタイミングに合わせてLEDが点灯するギミックを組み込みました。シェード部分には塗装工程で使われるハンガーを骨組みにし、タンク用デカールの端材をパッチワークのように配置しています。
廃材の隙間から漏れる不規則な光が、エンジンの鼓動をドラマチックに演出します」と解説した。

田口氏は最後に「デザイナーとして、ヤマハさんのものづくりに対するプロ意識や情熱に触れさせていただき、私自身にとっても非常に大きな刺激になりました。この空間やファニチャーを通して、訪れる方々にもその素晴らしさが伝わり、未来をより良くしていく共創プロジェクトにつながっていけば嬉しいです」と期待を口にした。
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