今回のテーマは、「夜の街の暗黙のルール」です。

クラブは、単なる「お酒を飲む場所」という枠を超えた社交の場です。
中でも銀座のクラブは、大企業の役員や著名な経営者、文化人などが接待や人脈構築を目的に利用する場所でもあり、通うこと自体が一種の「成功の証」とも言われます。

銀座のように伝統や文化を重んじる街には、「信頼」と「粋(いき)」を尊ぶ独自の文化があります。ガイドブックやタウン情報誌には書かれていないものの、長年この街で受け継がれてきた慣習です。

では、さっそく解説します。

その1 クラブは「一見さんお断り」が一般的

キャバクラやガールズバーと異なり、銀座のクラブは「一見さんお断り」であることが一般的です。

排他的に聞こえるかもしれませんが、これは銀座が守ってきた「信頼の文化」に基づく仕組みです。

銀座のクラブでは、その場で支払わず後日まとめて支払う「ツケ(請求書払い)」が採用されているケースがあります。接待の席で財布を広げるのは不粋とされるためです。

この仕組みは、相互の信用があってこそ成立します。紹介者がなく、身元が不明な人を受け入れにくいのは当然の流れです。

また、クラブは大人の社交場。泥酔や迷惑行為があれば、長年の顧客との信頼が損なわれます。
そのリスクを避ける意味でも「一見さんお断り」は機能しています。

その2 クラブは「永久指名制」

銀座のクラブは「永久指名制」が一般的です。

ツケ払い文化の中で、支払いが滞った場合、その代金を担当ホステスが立て替えるのがルールとされるケースがあります。金額が大きくなることも珍しくありません。

もし顧客が毎回担当を変えた場合、トラブル時の責任の所在が曖昧になります。それを防ぐために、担当を固定する「永久指名制」が採られているのです。

また、紹介による来店では、紹介者の担当ホステスが新規顧客を担当するのが暗黙のルールです。紹介者の顔を立てる意味もあります。

一方で、担当以外のホステス(ヘルプ)を応援することは歓迎されます。クラブはチームで接客を行う場でもあるからです。
その3 キープボトルを空にして帰るのは不粋

銀座は大人の社交場。余裕のある振る舞いが求められます。


キープボトルを最後の一滴まで空にして帰る行為は、しみったれた印象を与えやすく、不粋とされがちです。

たとえ海外赴任などでしばらく来店できない事情があっても、「1本入れて帰る」と言える姿勢が粋だと評価されます。
その4 イベント時の素飲みは不粋

周年やママのバースデーなどのイベント日は、特別な意味を持ちます。

この日にキープボトルだけを消費し、追加注文をしない「素飲み」は不粋と見なされることが多いです。

イベント日の売上は、店やママの実績や人望を示す指標の一つでもあります。そのため、祝意を形にする意味でシャンパンなどを注文することが期待される場合があります。

混雑により入店を断るケースもあるため、利益貢献が見込めない席の使い方は好まれにくいという事情もあります。
その5 食事=「同伴」

銀座のクラブでホステスから「食事に行きませんか?」と誘われた場合、それは基本的に「同伴」を指します。

店外での食事をプライベートなデートと誤解するのは、銀座の文化を理解していないと受け止められる可能性があります。

クラブでの接客は対価を伴うサービスです。食事の誘いは営業の一環であると理解するのが前提となります。
その6 アフターではタクシー代を多めに渡すのがマナー

アフター(営業終了後の外出)に応じてもらった場合、タクシー代を多めに渡すのが暗黙のルールとされることがあります。


顧客にとっては延長線上のデートでも、ホステスにとっては時間外労働です。短時間で切り上げ、タクシー代を多めに渡すことが粋な振る舞いとされてきました。

もっとも、近年ではその慣習も薄れつつあります。
銀座は特別な街

夜の街には、「信頼」と「粋」を尊ぶ独自の文化があります。

中でも銀座は、お金があれば通える場所というわけではありません。信頼があり、遊び方を理解している人が長く通える場所です。

だからこそ、その価値が保たれているとも言えます。

銀座が、単なる消費の場ではなく、文化として語られる街であり続ける背景には、こうした暗黙のルールが存在しているのです。

みずえちゃん みずえちゃん 1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務しながら、大阪北新地でキャバ嬢デビュー。現在は銀座のクラブに勤めるかたわら、フリーランスのライターとして活動している。
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