「持ち家か、賃貸か」というテーマは、住まいの永遠の論争ともいえる話題です。多くの場合、「どちらが得か」という視点で語られますが、意外と見落とされがちなのが"年齢"という視点です。
住宅ローンは何歳まで組めるのか。高齢になっても賃貸住宅は借りられるのか。年齢による制約も考慮して、後悔しない住まい選びを実現するために、持ち家と賃貸を年齢の観点から整理します。
住宅ローンは何歳まで組める?
住宅ローンの多くは、申込時の年齢と完済時の年齢に上限が設けられています。民間金融機関や「フラット35」では以下の基準が一般的です。
●申込時の年齢: 70歳未満
●完済時の年齢: 80歳未満
この条件から逆算すると、35年ローンを利用できるのは45歳頃までが一つの目安となります。ただし、完済年齢を80歳とする場合は老後も返済が続くため、65歳までに完済する計画を立てるなら、30歳頃までに借り入れる必要があります。
30歳までに住宅購入という人生最大の買い物を実行できる人がどのくらいいるのか、非婚化、晩婚化が進んでいる現代においては、少数派と言えるのではないでしょうか。
ここで、借入額3,000万円を定年(65歳)までに完済するケースをシミュレーションしてみましょう。
*借入額3,000万円を定年(65歳)までに完済するには
※金利2.5%(固定)、元利均等返済
・返済期間35年なら、30歳まで
毎月の返済額: 10.8 万円
・返済期間25年なら、40歳まで
毎月の返済額: 13.5 万円
・返済期間15年なら、50歳まで
毎月の返済額: 20.1 万円
年齢が高くなるに従って、毎月の返済額は重くなるため、住宅ローンは組みにくくなると言えるでしょう。
賃貸は何歳まで借りられる?
賃貸物件を借りるのに年齢制限はありませんが、高齢者の入居を敬遠する家主が多くいることが現実問題としてあります。
国土交通省の調査によると、賃貸人(大家)の約7割が、高齢者の入居に対して拒否感を有しています。
高齢者の入居制限を行っている賃貸人の入居制限の理由のトップは「居住内での死亡事故等に対する不安」となっており、90.9%を占めます。
この調査からは、高齢になるほど部屋探しが難しくなる実態が読み取れます。こうした課題に対応するため、国は「住宅セーフティーネット法」を整備し、入居支援などの対策を進めています。
住宅セーフティーネット法とは
高齢者や低額所得者、障害者など、住宅の確保が困難な人たち(住宅確保要配慮者という)が安心して賃貸住宅に入居できるようにするための法律です。住宅確保要配慮者向けの家賃債務保証や賃貸物件への入居相談、見守りや生活支援などの取り組みがあります。
2040年には、65歳以上の単身高齢者世帯が1,000万世帯を超えるという国土交通省による推計もあり、社会問題となることは必至です。一方で、民間賃貸住宅の空き家・空き室は年々増えています。住宅セーフティーネットを強化することで、空き家・空き室の活用にもつながります。
こうした取り組みはあるものの、地域差や物件差が大きく、単身高齢者ほど入居難度が高い状況は続いています。現状はなお厳しい状況にあると言えるでしょう。
老後資金の観点では持ち家が有利
持ち家であれば、自宅を活用した資金調達制度「リバースモーゲージ」が利用できます。
リバースモーゲージとは
自宅を担保に金融機関から資金を借り、死亡後に自宅売却などで返済する制度です。
リバースモーゲージのメリット
自宅に住みながら資金を確保できる
高齢期の住み替え費用を確保できる
住宅ローンからの借り換えができる
「住宅ローンからの借り換え」というのは、たとえば、定年後も住宅ローンの残債があり、返済が厳しい場合に、リバースモーゲージ型住宅ローンに借り換えることで、月々の返済は利息のみにできるため、返済負担を軽くすることができます。
リバースモーゲージの注意点
リバースモーゲージは、どの物件でも利用できるわけではありません。エリアや物件の種類に制限を設けている場合が多く、とりわけマンションは対象外となるケースがあります。住まい選びの知識として知っておくといいでしょう。
老後まで見据えた「持ち家VS賃貸」
ここまでの内容を含めて、持ち家と賃貸の特徴を整理しましょう。
●持ち家
年齢が上がるに従ってローンが組みにくくなる
住宅購入によって老後の住まいが確保できる
リバースモーゲージの利用で老後資金を確保できる
●賃貸
現役時代は住み替えが柔軟にできる
高齢期は家が借りにくくなる
資産として残らない
老後のリスクを考えると、住む家に困らず、自宅が資産になることは大きなアドバンテージになるため、持ち家に軍配が上がります。そうなると、「今すぐ、家を買った方がいい」という結論になりますが、現実は、家を買えないという状況があります。
家が買えないから賃貸に住むという構図
東京23区の新築マンションの平均価格が1億5,000万円を超えるなど、都心部を中心に住宅価格の高騰が続いています。
一方で、非婚化、晩婚化で住宅購入を考える層は限られ、また時期も遅くなる傾向があるため、住宅ローンを組みにくくなっている現状もあります。
その結果として、賃貸に住み続けている人は相当数いるのではないでしょうか。
これまでの「持ち家VS賃貸論争」はどちらが(金銭的に)得かという観点で語られてきました。
空き家問題と住宅の価値
持ち家派は安泰かというと、そうとも限りません。少子高齢化に伴う人口減少によって、空き家が増え続けています。
持ち家であっても、築40年、50年と経過した老朽住宅では資産価値の低下は避けられません。とりわけ空き家が増加している地域では、その下落傾向が一層強まる可能性があります。
都心でも安心はできません。持ち家がマンションの場合は、マンションの老朽化による建て替え問題があります。現状、立て替えのハードルは高く、建て替えられずに放置されるマンションが今後増えていくと考えられます。
購入時に多額の住宅ローンを組んでも、40年後、50年後の資産価値がどうなっているかは現時点ではわかりません。
まとめ
持ち家と賃貸の選択は、単純な損得だけでは判断できません。
一方で持ち家には、老後の住まいを確保できる安心感や、リバースモーゲージによって資金化できる強みがありますが、人口減少や建物の老朽化による資産価値の不確実性もあります。
賃貸を選択した場合の老後リスクについては、住宅セーフティーネット制度の強化に期待したいところです。
いずれにしても、年齢や家計状況など、現状をしっかり把握し、将来の住み替えまで見据えた長期的な視点を持つことが、後悔しない住まい選びにつながるでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。 この著者の記事一覧はこちら











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