「人生100年時代」と言われる今、20代からの資産形成は待ったなし。とはいえ「投資の目利き力、どうやって磨く?」と悩む人も多いはず。
今回のテーマは、投資における「成功者」という幻想です。
投資の「成功者」という称号は幻想か
投資の世界でもビジネスの世界でも、多くの人は常に「成功者」を探し、その背中を追いかけようとします。本を買い、セミナーに通い、彼らが語る「正解」を必死に模倣する。しかし事実を言えば、この世に「成功者」なんて存在しません。
私たちが「成功」と呼んでいるものは、変化し続ける時間軸の中で切り取られた、一瞬の断面に過ぎないからです。また、人生100年と考えれば、いわゆる成功者とされる人たちの成功も人生の過程(プロセス)にすぎません。なぜ「成功者」という概念は、投資家の目を曇らせるのでしょうか?
世間が誰かを「成功者」と呼び始めるのは、往々にしてその人がピークを迎えた後です。しかし、市場は生き物であり、昨日までの勝ち筋が明日も通用する保証はどこにもありません。
かつて数千億円を動かした伝説の相場師も、手法が市場に適合しなくなった瞬間にただの人、あるいは敗者へと転落します。投資におけるゴールテープは固定されておらず、一歩進むごとに先へと移動していくものです。称号に安住した瞬間に賞味期限が切れる。それが投資の世界の現実ではないでしょうか。
振り子の法則
相場には「振り子の法則」があります。大きな利益を得たということは、それだけ大きなリスク(振れ幅)を許容した結果でもあります。右側に大きく振れた振り子は、物理法則に従って左側へと強く戻ろうとします。
莫大な資産を築いた後に、さらに大きな勝負に出てすべてを失うケースが後を絶たないのは、成功の体験が「リスク感覚」を麻痺させてしまうからです。大きな成功の後には、大きな失敗がつきもの。手にした巨大な果実の裏側には、常に同等、あるいはそれ以上の深さを持つ落とし穴が掘られていることを忘れてはなりません。
私たちが目にしているのは「運の良い生存者」
私たちがメディアやSNSで目にするのは、何万人という脱落者を踏み越えて、たまたま最後に立っていた「生存者」だけです。これを「生存者バイアス」と呼びます。
彼らが語る「必勝法」は、実はたまたまその時の相場環境に合致していただけの「結果論」である可能性が高いのです。同じ手法を使いながら、紙一重の差で市場から消えていった無数の敗者の声は届きません。私たちが学ぼうとしているのは、再現性のある技術なのか、それとも単なる「運の履歴書」なのか。そこを冷徹に見極める必要があります。
ハロー効果への対策
一度「成功者」というレッテルが貼られると、その人物が語るあらゆる言葉が真実に見えてしまう現象が起こります。これが、認知バイアスでいう「ハロー効果」です。投資で資産を築いた人が語る政治論や人生訓までもが、あたかも正解であるかのように錯覚してしまうのです。
しかし、投資のスキルと人格、あるいは別の分野での洞察力は別物です。実績という後光(ハロー)に惑わされず、個々の事象を切り離して考えること。この「解毒剤」を持たない投資家は、他人のカリスマ性に自分の判断を委ねるという、最も危険な思考停止に陥ることになります。
成功という通過点に居座ることのリスク
本来、成功とは特定の状態を指す言葉ではなく、目的へ向かう「プロセス(過程)」を指すのではないでしょうか。資産がいくらになった、という結果は単なる通知表に過ぎません。
「自分は成功した」と考え、その場所に居座ろうとした瞬間から、投資家としては冴えなくなっていきます。市場の変化を捉えようとする努力を怠り、過去の成功体験という資産を守ることに汲々とする。その保守的な姿勢が、次世代のプレイヤーに淘汰される最大の要因となります。保険をかけるような生き方では、市場のタイミングや勢いを見誤りやすくなります。
「未完成」であり続ける
では、投資における成功や勝利とは何でしょうか。それは「成功者」になることではなく、自分を常に「未完成」の状態に置き続けることだと思います。
過去の成功はシロップのようなもので、一度ハマると抜け出せません。過去の栄光を捨て、今日の市場から謙虚に学び続ける。
中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら











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