イラン情勢はどうなる? 想定されるシナリオ

2026年2月、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を実施し、中東情勢は緊張感を増しています。ホルムズ海峡の物流停滞や原油価格の上昇が懸念されるなか、株式市場への影響も注目されています。

こうした状況を踏まえ、SBI証券投資情報部の土居雅紹さんと根津真由子さんに、今後想定される3つのシナリオと、それぞれの場合における日経平均株価への影響について整理もらいました。


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今後のイランをめぐるシナリオと日経平均の見通し
○米・イスラエルのイラン攻撃は今後どうなる?

2026年2月28日に米国がイスラエルとともに、核開発に関する外交交渉決裂などの理由をあげてイランを攻撃しました。2025年6月のイラン・イスラエル戦争(十二日間戦争)のさなかに米国がイランの核施設に攻撃を加えてからわずか8カ月後です。今回の攻撃ではイラン最高指導者を含めイランの宗教・軍事関係の要人がターゲットとされ、イランの政治体制そのものにも影響を与えることを企図したものとみられます。この攻撃への報復として、イランは米国艦艇やイスラエルだけでなく、湾岸諸国への攻撃を開始しました。

この結果、原油や液化天然ガス輸送の大動脈といえるホルムズ海峡での物流が実質的に停滞して、軍事衝突が長期化すれば原油や天然ガスの供給不足・価格急騰から世界経済への影響が懸念される事態となっています。また、リスクオフの動きから米ドル、スイスフラン、金価格が買われています。現時点では、湾岸諸国への紛争拡大も懸念されています。そこで今後予想される3つのシナリオと今後の日経平均株価への影響をまとめてみました。
シナリオ1:短期終結

トランプ大統領は海外への関与をしないと主張して2度目の当選を果たしたことから、イランへの地上戦力の派遣は避ける可能性が高いと思われます。また、イスラエルとイランは陸続きではないことに加えて、国土が広大で8,900万人の人口を抱えるイランへのイスラエルによる軍事侵攻は想定しにくいと考えられます。

一方のイランも、軍事衝突が長期化すれば現在攻撃を受けている軍事施設のみならず、通信・電力・港湾・原油関連・水道といった各種インフラへの米国・イスラエルの攻撃が予想され、国家としての機能維持が困難になってしまいます。

そうなると、紛争拡大による原油供給遮断を懸念する世界各国の仲介で数週間以内には休戦となる可能性があります。
この場合、原油価格は落ち着き、為替・株式市場の混乱は収まると考えられます。副次的な効果としては、ドンロー主義に突き進む米国を嫌気して、ますます米国以外の主要国の株式市場と金に投資資金が向かうことも考えられます。

図表1は2025年7月25日から2026年2月20日までの、海外投資家の日本株への純投資額と日経平均株価の週次の値動きを見たものです。この期間に海外投資家の日本株買い越し額が1.2兆円を超えたのは3回で、うち2回は2025年10月の自由民主党(自民党)の総裁選挙と2026年の衆議院総選挙で自民党が大勝したときでした。これらは「日本が変わる」ことを期待した買いといえます。もう1回が2026年1月初めで円安進展・企業業績好調ということに加えて、日本株の比重が少なかった海外の投資資金が日本株への投資を増やしたためと考えられます。これには直前の米国によるベネズエラ攻撃によって米国離れが進み、日本株への投資を後押しした可能性もあります。

このように、イラン情勢が短期間で終結すれば、高市トレードによる日本株買いに加えて、米国離れによる資金流入も期待されます。この場合は、日本株の米国株に比べた割安感から日経平均株価は2026年年末~2027年初めにかけて7万円を目指す流れになると思われます。※

※日経平均株価は構成上位銘柄の比率の高さと計算方法の違いから、米国の代表的な株価指数であるS&P500との水準比較が難しい面があります。そこで、計算方法が近いS&P500とTOPIXで比較すると、2026年の予想PERでS&P500は21.88、TOPIXは18.13でした(2026年3月2日時点)。このため、同水準までTOPIXが上昇すると仮定した場合、21.88/18.13=約1.20684倍の上昇余地があると考えられます。
これに3月2日時点の日経平均株価58,057円24銭を乗ずると、58,057円24銭×21.88/18.13=70,065円77銭となります。
シナリオ2:限定的軍事衝突と外交交渉

前述の状況から米国やイスラエルによる地上侵攻はなく、周辺国の対イラン戦への参戦もなければ長期戦とはなりにくいと思われます。さらにトランプ大統領もSNS上でのビデオ声明で「作戦終了まで4週間程度を要する」と述べていて、これは長期戦にはしたくないという米国内に加えてイランへのメッセージにも読めます。

そうはいっても最高指導者を含め多数の幹部を失ったイランの怒りは収まらず、収めどころが見つからないという可能性があります。
この場合、軍事的な衝突は継続するものの、全面戦争には至らず、衝突と報復を繰り返しながら、同時に外交交渉を行うものと考えられます。だらだらと続いていても危険度は下がらないので、安全資産への逃避は続き、各国の株価は原油供給減少の長期化への懸念から価格を切り下げることになりそうです。

このシナリオとなれば、一旦落ち着いたように見えても主要国の株価は上昇しにくくなり、日経平均株価はローソク足で見た場合の2月の衆議院選挙直後の窓を埋める54,300円~55,000円まで下げる可能性が出てきます。
シナリオ3:地域全面戦争へ拡大して第三次オイルショック?

周辺国への被害が拡大すると、イランの宗教指導体制のよりどころであるシーア派とは異なる周辺のスンニ派主流の国々では、イランへの報復を求める声が大きくなることが予想されます。一方のイランとしてはイラン国内の軍事施設が破壊されているので、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派といったイランの代理戦争組織による他国への攻撃を激化させる可能性があります。こうなると、イラン国内だけでなく周辺国に武力衝突が拡大して短期解決は困難となります。この場合はホルムズ海峡閉鎖だけでなく、周辺産油国の原油関連や港湾施設まで被害がおよび原油供給が長期的に大きく減少する可能性が現実味を帯びてきます。

ここまで進むと1973年10月に始まった第一次オイルショック、1979年1月からの第二次オイルショックに並んで、将来の歴史の教科書では「トランプ大統領が第三次オイルショックを引き起こした」と記録されるような事態になっていると思われます。


図表2は1979年3月からの1983年12月までの日経平均株価と日本の消費者物価指数の値動きです。第一次オイルショックでは当時の田中角栄内閣が推進した日本列島改造ブームでインフレが進んでいたところに、原油高とそれに伴う混乱で前年同期比20%を超える物価上昇(狂乱物価)となりました。1979年の第二次オイルショックでも1980年後半には8%を超えるインフレとなっています。第一次オイルショック、第二次オイルショックともに1年超の期間にわたってインフレが進んだことに注意が必要です。

日経平均株価でみると、第一次オイルショックは2年間下落基調が続いた一方、第二次オイルショックでは日経平均株価は上昇しています。これは日本が危機に対してどの程度備えができていたかという点に加えて、原油高の原因となった紛争が中東全域かイラン限定かという点に違いがあったと考えられます。今回の米国・イスラエルによるイラン攻撃の性格を考えると、原因が再びイランであるという点からも、第一次よりは第二次に近い性格と考えることができそうです。加えて、米国・イスラエル対イランが米国・周辺諸国対イラン・イランの代理戦争組織となったとしても、イラン側の継戦能力から激しい戦争が長期間続くとは考えにくいといえます。そうなると、戦争被害で原油生産能力が落ちて原油生産の早期回復が難しくなる一方、株価への影響は限定的となる可能性があります(インフレと株高)。

このシナリオを想定するなら、インフレヘッジとしての金投資(短期なら金先物や金CFD、中長期なら金ETF、金価格連動投信、金・銀・プラチナ取引)に加えて、株価上昇を見込んで日経平均先物や日経平均連動ETF・投資信託の買いポジションを持つことも一案と考えられます。
まとめ

・短期終結 → 日経平均株価は7万円を目指す
・限定的軍事衝突でだらだら長期化 → 日経平均株価は窓埋めで54,300円~55,000円?
・地域全面戦争 → 周辺国を含めて原油施設が破壊され、原油高がインフレを呼ぶ。ただし、株価にはプラスの可能性

中東情勢は株価にどう影響する? 日経平均の見通し

2月第4週の株式市場動向と次の注目材料
2月第4週(2/23-2/27)の株式市場動向

日経平均株価の2/27(金)終値は58,850円27銭で、前週末比2,024円57銭高(+3.56%)と週足ベースで大幅上昇。

月間でも、先月末比5,527円42銭高(+10.37%)と大幅上昇を記録しました。

騰落率の傾向(2/20-2/27)(図表6・7)

・上昇率上位:住友金属鉱山(5713)が上昇率トップ。
イラン情勢をめぐり、地政学リスクの高まりによる金価格の上昇を背景に、同社株に思惑買いが入ったとみられます。
2/27には上場来高値を更新しました。

・下落率上位:高島屋(8233)が下落率トップ。
同社は2/24に特別損失の計上および業績予想の修正を発表し、2026年2月期の業績予想を下方修正。
従来の黒字見通しから一転、最終赤字が105億円となる見通しです。
下方修正が嫌気され、売りに押されました。

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

投資情報メディア編集部 とうしじょうほうめでぃあへんしゅうぶ
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