イスラエルがイランへ攻撃を実施したことで、緊張感が高まる中東情勢。UAEやクウェート、サウジアラビアといった周辺諸国にも影響が広がり、現地に滞在している邦人の退避が始まっている。


ところで、一部の中東諸国は日本人富裕層の移住先として人気の地域だ。例えば、UAEのドバイでは、節税を理由にドバイヒルズやダウンタウンに日本人富裕層が生活の拠点を構えている。彼らは今回の情勢悪化を受けてどう動くのか、日本人のドバイ移住を支援するドバイ総合研究所の鈴木結氏に、現状を伺った。

ドバイ在住の6割が「残る選択」

――今回のイスラエルイラン情勢を受けて、既に現地に移住されている富裕層の方や、これから移住を検討していた方の間にはどんな変化がありましたか?

これまでUAEやドバイへの移住を検討されていた方は、今の状況を受けて「様子見をしたい」という状態に入っている方がほとんどです。

一方既に移住されている方に関しては、私の体感ではあるのですが、退避しようとしている方は全体の3~4割ほどで、残りの6割ほどは留まる選択をされている様子です。我々が支援させていただいたお客様も、ここ1~2年で移り住んだ方が多いこともあって、退避する方は半分に満たないくらいです。

――なぜ退避しないのでしょうか?

移住されている方は、ドバイにビジネスの拠点や生活拠点を築いているので、そもそもドバイに長く住んでいく想定をしています。そのため、一時的に日本に避難したとしても、いずれまたドバイに帰らなくてはいけません。できれば日本に戻らず生活を続けたい、戻る必要がない、と判断する方もいます。

実際私の住んでいるビジネスベイという地域でも、日本で報道されているような目立った被害はそこまでありません。もちろん退避される方もいらっしゃいますが、皆さん冷静に今の状況を見極めています。

まだ攻撃を受けて明日で一週間といったタイミングです(取材時)。
例えばドバイの不動産に投資していたり、何かしらUAEに投資していたりする場合、自身の資産に影響が出てくるのは、もう少し先の話です。株式市場では即影響が出ますので、UAEの市場でも5%ほど下がった銘柄もあるのですが、不動産という観点では市場の変化に時差があります。そのため、退避の判断をしにくいというところもあるかと思われます。

また、戦争時やコロナ禍といった緊急事態にはドバイの不動産を手放す人も出てきて、不動産市場は値下がりする傾向にあります。そのため、投資家の立場からすれば逆にチャンスでもあります。

――現在移住されている富裕層の方は、どんな資産防衛の手段を取っていますか?

この一週間でやはり「中東ってリスクがあるよね」という話題は出ています。資産防衛もそうですし、自分の身をどこに置くのかというのは、皆さん再検討されている状況です。

とはいえほかにたくさんの選択肢があるというわけではなく、日本人富裕層に関しては東南アジアに一時的に移住しようという動きがこれからの1年間ぐらいで起こってくる可能性があります。
今後の移住トレンドへの影響は?

――今回の出来事をうけて、長期的には移住トレンドにどんな影響がもたらされるのでしょうか?

移住した先の地政学リスクを警戒・確認しなくてはいけないという認識が全体的に広がっていくでしょう。

当初はUAEに「安全だから」という理由で移住された方々は、今回の出来事が起きて「自分の移住先って本当に安全なんだっけ?」と不安になったり、あるいは「台湾有事が起きたら日本は安全なのだろうか?」と、戦争に意識を向けて移住を捉え始めると考えられます。

ドバイは人口が約400万人の都市で、面積もそこまで広くありません。そのため、都市規模の点では比較的防衛体制を取りやすい環境にあります。
しかし、今回のような事態が日本でも起きたら、全国を防衛できるだけの力が日本にあるのか、というのは富裕層の方も気にされるポイントです。むしろ日本から出ていく移住の動きは強まっていくかもしれません。

日本から近い東南アジアには戦争のリスクがないのか、それとも中東は戦争直後で次なる大きなリスクは考えにくいんじゃないか、などと先を読む視点がより重要になってきます。良くも悪くも緊張感は高まっていくでしょう。
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