藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑戦するALSOK杯第75期王将戦七番勝負(日本将棋連盟主催)は、挑戦者リードで迎えた第5局が3月8日(日)・9日(月)に栃木県大田原市の「ホテル花月」で行われました。対局の結果、押され気味の終盤戦で受けの好手を出した藤王将が88手で勝利。
○永瀬、衝撃の「地獄突き」
直近の公式戦は5勝5敗(テレビ対局除く)と不調にあえぐ藤井王将。対局前の取材にも「精神的に良好とはいえない」と不安を覗かせます。後手番の藤井王将が角道を開けない力戦調の相掛かりを用いのは、相手の研究を外しつつ力戦に持ち込みたい狙い。しかし3勝1敗と奪取目前に迫る永瀬九段は先手番らしい積極的な指し回しでさっそく主導権を握りました。
永瀬九段は自玉を雁木に収めたのち、位を取られている玉側の端歩を突き上げたのが控室の面々を驚かせた軽快な仕掛け。瞬間的に香損になるものの、玉が不安定な藤井王将が強気な反撃に出られないのを見越しています。永瀬九段の記した封じ手が開かれ2日目がスタート。示された香成りは飛車先を突破して一気に終盤戦に飛び込むもので、実戦的には早くも先手優勢の雰囲気です。
○藤井、絶妙の自陣飛車で読み勝つ
盤面全体で駒の取り合いが行われて盤上は終盤へ。飛車を手にした永瀬九段が後手玉を寄せ切るのは時間の問題かと思われましたが、ここから劣勢の藤井王将が巻き返します。飛車での王手で合駒請求したくなる気持ちを抑えて、ジッとと金を作り攻めたのが読みの入った絶妙手。
藤井王将の受けの決め手を見た永瀬九段は「思ったよりもダメになってしまった」(局後の感想)と攻めの失敗を認めます。終局時刻は17時14分、最後は藤井王将が正確に先手玉を詰ませたところで永瀬九段が投了。永瀬九段としては評価値上は優勢となった終盤の入り口で、優位を維持するための正着が人間的でない異質の受けしかなかったのが不運でした。
絶妙の受けで競り勝った藤井王将はこれで七番勝負を2勝3敗の成績に。「依然として苦しい状況」(局後の感想)としつつも感想戦では笑顔が見られる場面もあり、見守ったファンも「気持ちがすこし楽になれば」とホッと一息つきました。藤井王将の先手番で迎える注目の第5局は3月18日(水)・19日(木)に名古屋将棋対局場で行われます。
水留啓(将棋情報局)











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