少子高齢化で労働人口が減っていくと、地域の公共交通の担い手も当然ながら減っていく。山口県でもバスの安定運行を支える運転手不足が年々深刻化。
その山口県の南東部に位置する周南市では、公共交通の人材不足問題に解決策を求め、2024年度/2025年度の2回、自動運転によるEVバスの実証運行を実施した。本記事ではこの取り組みの実施主体である山口県とNTT西日本の担当者に、取り組みの概要と成果、新たに出てきた課題、そしてこの先の展望について取材した。
地域課題を背景に立ち上がった官民協働の取り組み
冒頭に記した深刻な背景から、山口県としては将来を見据えた持続可能な交通のあり方を考える必要に迫られていた。とりわけ、「若い世代にも魅力を感じてもらえるスマートな社会をどう実現していくのか。その中で、運転手不足に対する解となり得る自動運転をどう位置付けていくのかが大きな課題認識でした」と、県でデジタル技術を地域課題の解決につなげる取り組みを推進する西村一彦氏は語る。
公共交通をめぐるこの地域課題と、その中で若者にとって魅力的なまちづくりをしたいという行政側の意識に対し、何か有効な視点はないかと検討を始めたのがNTT西日本だった。同社山口支店の本永誠氏がこう話す。
「自動運転は交通課題の解決だけでなく、地域活性化や、魅力を感じてもらえるまちづくりにも親和性の高いテーマです。この問題意識を山口県に共有したことが、自動運転EVバス実証運行の最初のきっかけでした。その後に検討を具体化していく中で、実際のフィールドを持つ周南市や地域の交通事業者・防長交通にも声掛けし、自動運転によるバスが地域で成立するのか、現実的な選択肢になり得るのかといった視点で、山口県、周南市、防長交通、そして当社を含めた4者が一体となり、本格検討がスタートしました」(本永氏)
県では、公共交通を取り巻く課題に対してデジタル技術をどう活用していくのか模索していたタイミングでもあり、NTT西日本からの問題提起は県が抱く課題認識と重なる部分が多かったという。「単なる技術検証ではなく、周南市のまちづくり全体を見据えた取り組みとして前向きに受け止め、4者で議論を重ねながら、全関係者が同じ方向を向いて検討フェーズに進んでいきました」と西村氏は振り返る。
2年目に入った実証運行の概要と工夫ポイント
そもそもNTT西日本の山口支店としては、周南市の中心地・徳山における移動の利便性や回遊性を今後どう維持していくかが大きなテーマになっていたという。ただ自動運転は、同社にとってもこの地域でそれまで本格的に取り組んだ経験のない分野であり、技術面はもちろん関係者の理解や合意形成、役割分担を含めた体制づくりそのものが課題になったと本永氏。「多様な関係者をどう巻き込み、新しい挑戦に向けた土台を築いていくか、そこが当初の大きなハードルでした」と回顧する。
まず技術面についてはどのような課題に直面していたのか。NTTビジネスソリューションズで今回の実証運行における技術面を担当した浅井壮馬氏が、次のように解説する。
「将来的に目指すのは自動運転のレベル4(限定エリア・ルートなど特定条件下における、運転手が介入しない完全自動運転)です。実証を行うルートは新幹線が発着するJR徳山駅を中心とした比較的交通量の多い市街地ですが、そうした環境で自動運転レベル4を社会実装した前例は国内にないので、そもそも技術的に成立させられる走行環境なのか、また何を整えれば実現できるのか、どのようなリスクがあるのかなどを事前に机上検討し、実証を積み重ねながら一つ一つ確認していく必要がありました」(浅井氏)
その「比較的交通量の多い市街地」を通るルートとしては、徳山駅と徳山動物園を結ぶ往復約3.4kmが選ばれた。冒頭、この実証運行は24、25年度の2回行われたと記したが、ルートは両年度とも同じである。その選定については、やはりまずは自動運転EVバスの取り組み自体を住民に周知し、乗ってもらわなければ理解が得られないと考え、住民と観光客双方がよく利用するルートを選んだとのことだ。
2回目となった25年度の実証期間は11月から12月にかけての30日間で、12時~19時台に運行。バスは時速約20kmのゆっくりとした速度で走り、乗客の定員は9人となっている。将来的に目指すのは前述の通りレベル4だが、実証運行は両年度いずれもレベル2で実施された。
24年度と25年度で異なる実証ポイントとしては、25年度は自動運転率の向上を図ったことが挙げられる。これは、前年度の実証で交差点を通過する際に一度停止する設定としたことから自動運転が継続せず、手動に移行するケースが多かったためだ。そこで信号機内の制御システムを入れ替え、信号が変わるタイミングの情報を車両に届けるようにしたほか、車両にカメラを取り付けて信号の色を認識できるようにしたことで、交差点でも止まらずに通過できるケースが増えた。また、路上駐車があるとどうしても手動に移行しやすいため、バス事業者やタクシー事業者に協力を依頼し、自動運転でスムーズに走行できる環境整備にも力を入れたという。
また、周南市のシティーカラーである水色を基調に、市のさまざまなイメージを盛り込んだラッピングバスのデザインを採用し、「市民が親しみをより抱きやすいように」(本永氏)する工夫も加えた。そのほか、JR徳山駅周辺では冬の時期にイルミネーションを行っているが、24年度の実証で夜間帯にニーズがあることがわかったことから25年度は17時以降も運行することにし、車内からイルミネーションを楽しめるようにした。「他の実証地で夜間に運行しているところはほぼないので、これも特徴的な取り組みの一つといえます」と浅井氏は話す。
今回はもう1点、特徴的な仕掛けが導入された。AIアバターによるバスガイドだ。導入の背景としては、運転手不足課題への対応で将来的にレベル4が実現した際、車内に運転手がいなくなるため、困りごとが起きた際や情報を知りたいときに尋ねることができなくなる。その点を想定し、今回はAIを活用して目的地や停留所に関する情報などを質問できる仕組みを準備したわけだ。
ここまでの成果と新たに見えてきた課題
さまざまな工夫の成果として、25年度は当初目標の1600人を大きく上回る2167人が利用した。1便の往復18人の定員に対しても平均で10人が利用するという、想定を超えた盛況ぶりだったという。西村氏は県の立場で感じたことをこう語る。
「まずは実証段階で多くの方に実際に利用していただくことが重要なので、SNSで情報発信を行ったほか、周南市全世帯(約5万8000世帯)にチラシを配布し、周南市役所とも連携しながら地域需要の創出に取り組みました。その成果もあり、他の都道府県における実証と比べて利用者数が非常に多いという結果を得られました。将来的な車内完全無人化を見据えたAIアバターガイドについても、今回は賛否両論という結果でしたが、今後は改善検討を進め、完全自動運転の実現可能性を高めていきます」(西村氏)
技術面を担う浅井氏は「24年度の自動運転率は73%にとどまっていたのですが、さまざまな工夫によって25年度は91%にまで向上しました」と手応えを感じながらも「レベル4実現を見据えると91%という数字にはまだまだ課題が残っています。25年度の結果をしっかり分析し、26年度予定の次回実証運行に着実につなげられるよう取り組んでいきます」と力を込める。
一方、プロジェクト全体の管理を担い、行政、地域住民の連携を推進する立場の本永氏は次のように話す。
「技術の実証だけでなく、利用者と実際に触れ合い、受け入れられるかどうかを常に意識しながら、届けられた声に耳を傾けて改善を重ねてきました。レベル4実現というと技術面が注目されがちですが、同時に、地域の方に安心して使ってもらえるか、自動運転という形が受け入れられるかといった社会受容性を高めていくことも重要です。その点、アンケートでは“こんな未来の乗り物が周南市を走るなんてとてもうれしい”といった前向きな言葉を目にし、こちらも喜びを実感しています。今後も自動運転がより身近な存在と感じられるように努めていきたいですね」(本永氏)
27年度のレベル4実現を見据えた将来展望
山口県内ではこれまでにも美祢市で自動運転を実証したことはあったものの、周南市のように公道で本格的かつ継続的に実証しているところはなく、やはり周南市が先行しているとのこと。
前述のように交通量の多い市街地でのレベル4社会実装の事例は国内に存在しないため、今後も、例えば自動運転率を100%に近づけていくなど課題は山積しているが、本永氏は最後に力強くこう語った。
「社会実装を見据えると、持続可能な事業モデルも重要です。既存の公共交通と同じく運賃収入だけに頼るのは、人口減少が進む時代には難しいのが現実。そこで広告や協賛など複数の収益手段を組み合わせ、さらには遠隔監視の標準化などによる運用の省人化も進めて、持続的に運営できる事業モデルの構築を目指します。そして最終的に、この周南市を“自動運転レベル4の聖地”にしたい。そういった強い思いを持ち、これからも4者協働の取り組みに力を入れていきます」。今後の展開を引き続き注視したい。











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