総務省統計局の調査によると、東京23区の子育て世帯の約半数は世帯年収1,000万円以上とされています。年収1,000万円と聞くと「高所得」というイメージを持つ人も多いですが、実際には「思ったほど生活に余裕がない」という声も多く、SNSなどでもたびたび話題になります。


では本当に、年収1,000万円でも家計は苦しいのでしょうか。東京23区で子育て世帯が暮らす場合の生活費を試算し、家計のリアルを見ていきます。

東京23区の子育て世帯の約半数は年収1000万円以上

総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」※から、東京23区の子育て世帯(夫婦と子どもから成る世帯)の年収分布をみてみましょう。

※5年ごとに実施。令和4年が直近の調査となる

<東京23区の夫婦と子どもから成る世帯の年収別世帯数>
100万円未満: 3400世帯
100~199万円: 9500世帯
200~299万円: 1万7800世帯
300~399万円: 3万7200世帯
400~499万円: 4万4500世帯
500~599万円: 6万3200世帯
600~699万円: 5万7200世帯
700~799万円: 6万7900世帯
800~899万円: 7万7000世帯
900~999万円: 7万3400世帯
1000~1249万円: 16万2000世帯
1250~1499万円: 10万4800世帯
1500~1999万円: 9万1400世帯
2000万円以上: 7万3500世帯

年収1,000~1,249万円が急に増えているのは、100万円単位から250万円単位に変わったためです。そのため年収分布は正確に把握できませんが、1,000万円以上の割合は求めることができます。

東京23区の夫婦と子どもから成る世帯の総数は88万2,800世帯で、このうち世帯年収が1,000万円以上の世帯数は43万1700世帯になります。割合にすると約48.9%になります。

この結果から、東京23区の子育て世帯のおよそ半数が世帯年収1,000万円以上であることがわかります。
年収1000万円の手取りはおおむね700万円台

就業構造基本調査における世帯年収は税込み収入です。実際に使えるお金である可処分所得で考えると、年収1,000万円から税金、社会保険料などが差し引かれると、およそ700万~780万円程度になります。手取りで1,000万円を受け取るには、税込年収1,400~1,500万円程度必要です。


年収1,000万円でも実際に使えるお金は700万円台だと思うと、東京の高い住居費や教育費をその中から払っていくのは容易ではないことが想像できます。
年収1000万円のリアル家計シミュレーション

では実際に、東京23区で子育てをしている世帯年収1,000万円の家庭の家計状況について、モデル世帯を設定してシミュレーションしてみます。

<モデル世帯>
・世帯年収1,000万円(手取り760万円)
・夫婦共働き
・子ども2人(小学生と中学生)
・分譲マンション購入(住宅ローンあり)

手取り年収760万円の月収は約63万円なので、支出の合計が70万円では、毎月7万円の赤字になります。

家計費の中で突出して多いのが、住宅ローンと教育費です。
住宅ローン月額18万円の理由

住宅ローンの月額18万円は、借入額5,500万円を35年返済で、当初5年金利2%、それ以降の金利を3%で試算した場合の月額の返済額が約18万円になることをもとに設定しています。

東京23区の新築マンションの平均価格が1億5,000万円を超えていることから、東京23区に住むために、住宅ローンを5,500万円借り入れるのは、むしろ最低ラインに近いと言えるかもしれません。
教育費月額16万円の理由

教育費の月額16万円は、文部科学省「令和5年度 子どもの学習費調査」をもとに設定しています。公立小学校と私立中学校に通う場合の学習費総額(子ども2人分)を月額換算すると、およそ16万円程度になるためです。

特に私立中学校に進学した場合、教育費は平均で年間150万円程度かかります。東京都教育委員会の調査では、東京23区ではおよそ4人に1人が私立中学校に通っているとされており、一定数の家庭にとって現実的な進学パターンです。こうした状況を踏まえると、月16万円という教育費の設定は、現実に近い想定と言えるでしょう。
東京23区では年収1000万円でも厳しい

年収1,000万円と聞くと高所得のイメージがありますが、東京23区で暮らすには、住居費や教育費などの生活コストが高くなるため、家計に余裕がなくなることがシミュレーション結果から見えてきました。


一方で、東京23区の子育て世帯の約半数が年収1,000万円以上というデータもあります。つまり、年収1,000万円でも厳しいと感じる一方で、それ以上の収入がある世帯も多く存在します。そうした世帯が住居費や教育費により多くのお金をかけることで、地域全体の生活コストが押し上げられる側面もあります。その結果、子育てにかかる経済的なハードルが高まり、23区では暮らせないと判断した家庭が郊外へ移る動きも出てきています。東京23区の子育て環境には、こうした所得格差の広がりも見え隠れしています。

同じ年収でも、住む場所や教育方針によって家計の負担は大きく変わります。子育て世帯にとって、住居費や教育費のバランスをどう取るかが、家計の余裕を左右する重要なポイントになると言えるでしょう。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。 この著者の記事一覧はこちら
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