起業志願者が投資家に事業をプレゼンするYouTube番組『令和の虎』。鋭い質問や厳しい言葉が飛び交う場面も多く、「なぜそこまで怒るのか」と疑問に思う視聴者も少なくない。
本記事では、『令和の虎』チャンネルの仕掛け人・竹内亢一氏にインタビュー。番組の舞台裏や、虎たちが志願者を見極める視点について話を聞く。

怒りの正体は「感情」ではなく経営判断

『令和の虎』を見ている人から、「なんで虎たちはあんなにキレるんですか?」と聞かれることがあります。

でも僕からすると、あれは感情が爆発しているわけじゃないんです。あの場でやっているのは、シンプルに一つだけ。「この人に資本を預けられるか?」という経営判断です。

志願者のことが好きか嫌いか、ノリが合うかどうかの話じゃない。短い時間の中で、その一点を本気で見極めているだけなんです。

僕がいつも見ているのは、「事業計画×人間性×覚悟」の掛け算。

事業がどれだけ立派でも、人間性に不安があれば任せられない。人柄が良くても、覚悟がなければ壁は越えられない。覚悟があっても、ビジネスとして成立していなければ投資はできない。


掛け算だから、どれか一つが弱いと全部が崩れる。

虎たちがキレたり、強い言葉を使うのは、そのバランスが明らかに崩れていると感じたときです。
根拠なき自信とズレた受け答え

志願者でよくあるのが、「なんとなくイケると思います」という自信だけで来てしまうケースです。

市場をそこまで深く見ていない。競合もきちんと分析していない。差別化もふわっとしている。それでも「自分ならやれます」と言い切る。正直に言うと、これはかなり危ない。

経営は仮説と検証の積み重ねです。どの市場で、誰に、どんな価値を、どう届けて、いくらで売るのか。それは再現できるのか。資金を入れたら、どの数字がどう伸びるのか。


そこまで言葉にできて、初めてスタートラインに立てます。

虎の質問はそのロジックを確認するためのものであって、揚げ足取りではありません。

それなのに、質問の意図を汲まずにズレた答えをしたり、「いや、でも」と反射的に反論してしまう。

戦略が甘いのは仕方ない。でも、指摘を受けても修正しない、学ばない、変わろうとしない。これは致命的です。

経営は、変化を前提にした仕事です。その前提に立てない人は、どこかで必ずつまずきます。
覚悟の薄さと他責思考はすぐに伝わる

僕が一番重く見ているのは「覚悟」です。

虎は、自分のお金だけじゃなく、自分の信用までかけて投資をしています。だからこそ本気です。それなのに、志願者がほとんどリスクを取らず、安全な場所に立ったまま「お金を出してください」と言ってくると、どうしても温度差が生まれる。


たとえば――
自己資金は出さない。
本業はそのままで副業としてやる。
虎の資金で人を雇い、自分はフルコミットしない。

それでは、「なぜこちらだけがリスクを背負うの?」という話になりますよね。

投資は“覚悟のバランス”が合っていないと成立しません。そのバランスが崩れた瞬間に、信頼は一気に揺らぎます。

さらに、「タイミングが悪かった」「環境のせいで」といった他責のニュアンスが出た瞬間も、かなりシビアに見ています。もちろん外的要因はある。でも、それをどう乗り越えるかを考えるのが経営者です。

うまくいかない理由を外に求める人は、次にうまくいかなかったときも、きっと同じことを言う。経営は全部、自分事です。環境も、市場も、タイミングも含めて、その中でどう戦うかを決めるのが仕事です。


数字への甘さも同じです。本番で計算ミスが出る。売上予測の根拠が曖昧。市場サイズと自社の取り分がつながっていない。希望的観測のまま話をする。

それはつまり、「そこまで本気で詰めていない」というサインなんです。
怒られる前提で来る覚悟があるか

僕が一番伝えたいのは「怒られる前提で来てほしい」ということです。

虎は、志願者のいいところよりも、あえて弱いところを探します。重箱の隅をつつくような質問もします。でもそれは意地悪じゃない。投資する以上、最悪のケースまで想定する責任があるからです。

だから本番では、徹底的に突っ込まれる。
問題は、それを想定して準備してきたかどうかなんです。

怒られたときに、「なるほど、そこ弱いですね」と受け止められるか。「ありがとうございます、直します」と前を向けるか。それとも、「いや、でも」と守りに入るか。その差が、すべてを分けます。

虎たちがブチ切れるのは、能力が足りないからじゃない。「この人、怒られる準備をしてきてないな」「信用を取りに来ていないな」と感じたときなんです。

確かに、怒られるのは怖い。でも、経営の世界はもっと厳しい。市場は感情では動かないし、銀行も取引先も甘くない。

そう考えたら、番組で本気のダメ出しをもらえるのは、実は一番安全な環境です。そこで叩かれて、修正して、強くなれるなら、それは大きなチャンスです。


だからこそ、最初から怒られる覚悟で来てほしい。その覚悟がある人には、僕たちは本気で向き合います。

竹内亢一 たけうち こういち
株式会社Suneight 代表取締役 1981年三重県生まれ。中学卒業後にミュージシャンを目指し、鞄ひとつで上京。バンド活動で訪れた海外で「映像」の可能性の大きさに注目し、2006年より動画制作を独学で始める。YouTuberやコンテンツマーケティングといった言葉が日本で広まる前からYouTubeに着目し、2013年YouTubeマーケティング会社「Suneight」を設立。『マーケティングは統計学だ!!』を掲げ、創業以来蓄積した膨大な動画データを軸に、独自の方程式で動画マーケティングを展開。多くの企業の売上拡大や成長を支援している。現在は「令和の虎」にも出演中。関わったチャンネルで金の盾3枚、銀の盾29枚獲得し、国内有数の実績を持つ。著者に『知名度の上げ方 1年で10,000人のファンをつくる法則』(クロスメディア・パブリッシング)がある。 この著者の記事一覧はこちら
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