4月から社会人として働き始めて、初めてもらう給与明細。「思ったより手取りが少ない!」と感じる人もいるでしょう。
給与明細を見ると、さまざまな項目が引かれているけれど、特に確認せずに済ませている人もいるかもしれません。

実はこの給与明細、しっかり読み解くと、"損をしない働き方"のヒントがあります。そこで、給与明細の基本とともに、「4月~6月に残業しすぎると手取りが減る」と言われる理由についてわかりやすく解説します。

給与明細の見方をざっくり解説

給与明細のフォーマットは会社によって異なりますが、基本は「勤怠」、「支給」、「控除」、「差引支給額」の4つの欄に分かれています。

「勤怠」は働いた実績

「勤怠」の欄には、勤務日数や欠勤日数、有給日数、有給残日数など、働いた実績が書かれています。これをもとに給与金額を計算します。

確認する際に気を付けたいのが、締め日と支払日です。たとえば15日締め日、25日支払日であれば、当月25日に支払われる給与明細には、先月16日から当月15日までの働いた実績が記載されています。
「支給」は基本給や各種手当など

「支給」の欄には、「基本給」と「各種手当」が記載されています。これらを合計したものが「総支給額」になります。

手当には、時間外手当、役職手当、資格手当、住宅手当、家族手当、通勤手当などがあります。通勤手当は、社会保険料の計算の際には、月給(標準報酬月額)に含めますが、所得税の計算では、所定の金額まで非課税となるため、総支給額から差し引きます。

「控除」は給与から引かれるお金

「控除」の欄には、給与から差し引かれる社会保険料や税金などが記載されています。

健康保険、厚生年金、雇用保険の社会保険料と所得税、住民税が引かれます。他にも会社によっては財形貯蓄や積立金などが引かれる場合があります。
「差引支給額」が手取り

総支給額から控除の合計額を差し引いた額が差引支給額として給与口座に振り込まれます。これが手取り(可処分所得)になります。
社会保険料はどうやって決まる?

給与から引かれるものの中で特に金額が大きいのが、健康保険料と厚生年金保険料です。これらの社会保険料がどのように決まるのかを知っておくと「4月~6月に残業し過ぎると手取りが減る」理由がわかります。

社会保険料(健康保険・厚生年金)は、実際の給与そのものではなく、「標準報酬月額」という区分に基づいて決まります。社会保険料の計算を簡便化するために、毎月の給料を一定の幅で区分したものが「標準報酬月額」です。この標準報酬月額に、決められた保険料率をかけて算出した額が健康保険料や厚生年金保険料となります。

報酬月額部分に当てはめる給料は、基本給のほか、残業手当や通勤手当などの各種手当を含めた税引き前の給料です。そして、毎月の給料をその都度当てはめて決定するわけではなく、4月・5月・6月の給与の月平均額から、標準報酬月額を決定します。
決定した標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月の1年間の保険料の計算に使われます。
4月~6月に残業しすぎると手取りが減る理由

上記の理由により、4月から6月の3か月間にたくさん残業をして、それ以外の月は通常どおりの勤務だった場合、通常の給料に対し、残業代で増えた給料を基準にした高い保険料が徴収されるので、手取りが減ることになります。

なお、残業した月の翌月に給料が支払われるケースでは、3月から5月に多く残業をすると標準報酬月額が上がります。
どのくらい保険料が変わる?

では、実際にどのくらい保険料が変わるのかシミュレーションをしてみましょう。

<例>
通常の月収が25万円の人が、4~6月だけ残業で30万円になったケース

標準報酬月額が26万円から30万円に(2等級)上がります。

◆標準報酬月額が26万円の場合
・健康保険料: 12,805円
・子ども・子育て支援金: 299円
・厚生年金保険料: 23,790円

合計: 36,894円

◆標準報酬月額が30万円の場合
・健康保険料: 14,775円
・子ども・子育て支援金: 345円
・厚生年金保険料: 27,450円

合計: 42,570円

社会保険料が月額5,676円増えました。

7月から残業がなくなり、また月収25万円に戻った場合、増えた5,676円分手取りが減ることになります。この影響は1年間続くので、年額6万8,112円の減少となります。
社会保険料が上がることのメリット

今回のシミュレーションは、4~6月のみ残業があり、それ以外の月は残業がないという前提で、手取りがどの程度減るかを試算したものです。そのため、やや特殊なケースである点には留意が必要です。

実際には、年間を通して残業時間に大きな偏りがなければ、過度に気にする必要はないでしょう。ただし、この時期に意図的に残業を増やして収入を引き上げるような働き方は、結果的に社会保険料の負担増につながる可能性があるため、慎重に考えたほうがよいかもしれません。


また、社会保険料が上がることはデメリットばかりではありません。

次のようなメリットもあります。
*傷病手当金や出産手当金が増える

傷病手当金は病気やケガで会社を休んだ場合に、出産手当金は出産で仕事を休んだ場合に、給料の3分の2程度の給付を受けることができます。

支給額は、標準報酬月額をもとに計算するので、等級が上がると、将来の給付額も増える可能性があります。
*年金額が増える

厚生年金から支給される老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金は、標準報酬月額をもとに年金額が計算されます。そのため、標準報酬月額が高くなれば、受け取ることができる年金額も増えます。
まとめ

給与から差し引かれている項目を確認し、「なぜこの金額なのか」と考えることで、税金や社会保険の仕組みへの理解が深まります。初任給を受け取ったら、ぜひ給与明細に目を通してみてください。目先の収入だけでなく、将来の資産形成や保障も見据えながら、自分に合った働き方やお金の使い方を考えるきっかけにしていきましょう。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。
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