アドビは4月10日の「フォントの日」に合わせて、現在開発中の日本語の新フォントをメディアに公開しました。フォントの名前は「ネオクロ」。
一体どんなフォントなのか、Adobe Type CJKタイプチームマネージャー 大日方玲子さんと、デザインを担当するタイプフェイスデザイナーの吉田大成さんに話を聞きました。

アドビの日本語フォントで最も太い! 「ネオクロ」開発ストーリー

これまでにも、数多くの日本語フォントを開発してきたアドビ。日本語フォントには「かな」や漢字、縦書き、るびなど、欧文フォントにはない独自のルールがあるため、「アルファベットを単純に置き換えるのではなく、日本の文化や価値観を理解して、それに合わせて設計する『カルチャライズ』が必要」だと大日方さん。そうした背景からAdobe Fontsの日本語フォントは代々、日本のデザイナーが中心となって開発してきたと言います。

「アドビの日本語フォントは情報の伝達手段として人を支える存在でありながら、同時にワクワクさせるような、時代にあった新しいデザインを取り入れて、それぞれに個性のある表現へと発展させてきました」と、開発の歩みを振り返った大日方さん。「デザインだけでなく、カラー絵文字やバリアブルフォントなど、常に新しい技術的なチャレンジが含まれた、挑戦し続けるフォントでもあります」と強調しました。

2025年にリリースされた「百千鳥(ももちどり)」も、そのひとつです。太さや幅に加えて、縦横比(長体・平体)も自由に変更できる、バリアブルフォント形式に対応。構想から完成まで15年を費やしたこの日本語フォントは、リリース前から大きな注目を集めていました。

吉田さんによれば「ネオクロ」の構想は、そんな「百千鳥」が開発されていた、2020年にスタートしたとのこと。きっかけは川越で吉田さんが目にした、ペンキで手書きされた文字だったそうです。

「私たちタイプデザイナーは、日頃から街に出かけて参考になる文字がないか観察しています。
手書きの文字はヒントになることが多く、見つけたら写真を撮ってフォルダにまとめています。川越で見つけた『軽』という文字は、左側は太さが均一なゴシック体のようなのに、右側は払いの先端が細くなる明朝体のような、コントラストのあるスタイルが混在していて、面白いなと思いヒントにしました」。

「近年はSNS動画のサムネイルやタイトル用に、インパクトのある極太フォントが好んで使われている」と吉田さん。そこで、Adobe Fontsオリジナルの日本語極太フォントを作りたいと、構想がスタートしたそうです。
「ネオクロ」はバリアブルフォント、ゴシック×明朝ミックスの新テイスト

極太フォントといえば、力強いゴシック体が多いイメージですが、「ネオクロ」の特徴は、太い線と丸みのある線の組み合わせにあります。横線は太いものの、文字の角や縦の線は、吉田さんいわく「ふんわり丸く」なっています。吉田さんはこのデザインについて「角を立てるのではなく、角が丸くて点が三角だったり、払いが細くなったりと、ゴシックと明朝をミックスしたような新しいスタイルを目指しました」と説明します。

また「ネオクロ」は「百千鳥」と同様に、縦横に文字を圧縮できるバリアブルフォント形式に対応しています。漢字は正方形を維持したまま、かなと欧文のみが最大で半角サイズまで圧縮できる、独自設計を採用しているとのこと。「正方形の漢字と圧縮された『かな』が組み合わさることで、字幅のコントラストが生まれ、独特のリズム感と可読性が生まれる」と言います。

「漢字が正方形固定なので、かなを圧縮するときは漢字と並んだときに違和感がないように、横に圧縮するときは高さが、縦に圧縮するときは幅が、漢字と揃うようにデザインしています」と、吉田さん。

また、画数の多い漢字を極太かつ、正方形に収めるのは難しいといい、「太い横線が多い文字は、限られた枠の中で太さを分割するため、内側の線を少し細くして外側の線を太くするといった、工夫をしています」と明かしました。


「ネオクロ」はAdobe Fontsの日本語フォントの中では最も太く、SNS向けの動画のサムネイルのほか、「Webサイトのタイトルや、食品のパッケージなどの印刷物にも向いていると思います」と吉田さん。

実際にフォントとして使えるようになるのは、もう少し先になりそうですが、「リリースを楽しみにお待ちいただきたい」と話していました。

Adobe Fontsの日本語フォントが拡充!人気声優×フォントの異色キャンペーンも

「フォントの日」に合わせて、Adobe Fontsの日本語ラインナップが、大幅に拡充されたことも発表されています。4月には「gtai(株式会社G体)」をはじめとする新たなパートナーも加わり、56の日本語フォントが追加されました。これでAdobe Fontsで利用できる日本語フォントは、1100を超えました。

4月10日から、Adobe Fontsと4名の人気声優がコラボレーションする、「#文字から声がする」キャンペーンもスタートします。同じ言葉でもフォントごとに異なるニュアンスを、声優の“声色”で表現するというユニークな試みです。同日20時からは、新フォントを紹介するライブ配信も予定されているとのことなので、「ネオクロ」の全容をいち早く知りたい人は、チェックしてみてください。
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