東京で生きる女子たちを、オムニバス形式で描くドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS、TBS/毎週火曜深夜)の第5話が5月10日(火)の深夜に放送された。第5話の中心となったのは、美への欲求が強い彩(宇垣美里)。
■最悪の流れとなった第5話
整形費用を稼ぐためレンタル彼女として働く彩。美に執着する彼女は、レンタル彼女としての稼ぎだけでは足りず、お店を通さずに客と会い、金銭をもらっていた。第5話は、そんな彩が店を通さずに付き合っていると思い込ませている客の1人・桧山(岡部たかし)との食事から逃げ出すように自宅に帰ってきたシーンからスタート。自宅前には、「近くにいたから」と結婚を前提に付き合っているパートナーの光晴が待っていた。
「近くにいたから」と彼氏が訪れることは、嬉しい反面、嫌なことも多い。きっと視聴者の中にも「今日はボサボサの格好だから」「体調が悪いから」と、サプライズ訪問を喜べない経験をしたことがある人もいるだろう。美しくありたい彩にとっても、サプライズ訪問は全くもって嬉しくないものだった。この日は特にそう。コールセンターで勤務している普通の会社員であり、良き彼女としてふるまっていた彩とは、雰囲気の違う服装をしたレンタル彼女としての姿を、光晴に見せることになるからだ。
実際、そんな彩を見て浮気を疑う光晴。
ずっと普通の幸せに憧れていた彩にとって、自分がつくろってきたうそを相手に伝えることは、相当な勇気がいることだったろう。しかし、そんな彩の気持ちなど考えず光晴は、「こんな仕事してるなんて、聞いてないよね!」「さっき会っていた男が客だなんて確証はないよね」と責め立てる。
別に理解してほしいなんては思わない。もちろんうそはよくないことだ。しかし、彩がうそをついたのは、光晴を苦しめるためではなく、やっとつかみ取れた幸せを、本当のものにしたいからというのを光晴は理解してくれていただろうか。そう考えると、彩を高圧的にまくし立てるのは、少し違うのではないかと感じてしまった。
■あまりにも残酷すぎる恋の終わり
彩がレンタル彼女をしている事実を知り、「本音で話してほしい」と要求してきた光晴に、綾は、コールセンターでは働いていないこと、20代とサバを読んでいたが実際は35歳であること、顔はほとんど整形していることを告白。そんな彩の告白を受けて光晴は「仕事も年齢もうそで、見た目までうそ?」「顔整形なんだろ! うそってことじゃん」と絶句。そんな光晴に対して彩が返した「自分の欠点を自分の努力で治そうとすることって、うそなの?」は考えさせられる名言だった。
実際、見た目ではなく、性格や仕事の面で欠点をカバーすることは許されるのに、メイクや整形でかわいくなることは理解されないことも多い。今回の場合、光晴が彩に一目ぼれをし、交際が始まったのにもかかわらず、整形をしていることを知り、「詐欺師が!」と酒を荒々しく置いて彩をののしる光晴は、いかがなものかと思わされた。
さらにつらかったのは、彩が光晴のもとを去る前に、自分の整形前の写真を見せたシーン。その姿を見て光晴は特にフォローするでもなく、ただ目を見開き驚いた。「見た目に執着しすぎ」「整形は努力じゃない」、そんな風に正論を並べたのにもかかわらず、結局はありのままの彩に「それでも好き」「人間見た目じゃない」と言えるほどの強さを光晴は持ち合わせていない。コンプレックスを抱え生きてきた彩にとって、あまりにも残酷すぎる恋の終わりだった。
第5話での光晴と彩のやりとりを見て感じたのは、二人とも間違ったことを言っていないのに、分かり合えないつらさだ。お互いを好きでいるだけでは成立しない恋愛の難しさが描かれていたから、SNSではいつも以上に「つらい」の声が集まっていたのだろう。
自分の信じてきた“美”を尊重してきた結果、恋人の光晴と、レンタル彼女の仕事を失った彩。そんな彼女に、雪(吉川愛)が傘を差し出すところで第5話は終わった。次回以降、彩の心にどんな変化が訪れるのだろうか。