映画『ハリー・ポッター』シリーズの小道具制作ヘッドを務めるピエール・ボハナが緊急来日した。ボハナはハリー・ポッターたちの杖や炎のゴブレットなど、作品に登場する小道具を手掛けたチームをまとめてきた人物。
■小道具チームの仕事って?
「スタジオツアー東京」を訪れたことがある人ならご存知の通り、映画『ハリー・ポッター』シリーズには画面に映らない部分まで多くの人が関わっている。フクロウなどの動物を世話する動物部門があったり、ハリー役のダニエル・ラドクリフら子役たちに勉強を教えるスタッフがいたり…。映画だけでは分からない裏側を本施設では垣間見ることができる。
ボハナが所属するのは、小道具チーム。撮影のために既製品を集めてくるのはもちろん、『ハリー・ポッター』シリーズの魔法の世界を再現すべく、デザインから考え、作り、セットに装飾する…という一連の流れもボハナたちの役割になる。杖やホウキなど人気のあるアイテムのみならず、ダイアゴン横丁にあるいたずら専門店「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」の奥にある小物のほか、セットにある照明器具など非常に多くの仕事を手掛けてきた。「地味なように思われるかも知れないけど、重層的な仕事が必要とされるんだ」とボハナは語る。
■特別に「ダンブルドアの校長室」の中へ!
より近くでボハナたちの仕事を知るべく、今回は通常は入ることができないダンブルドアの校長室の中へ特別に潜入! 同セットは映画でおなじみのデスクがある場所を中心に、上へ行くと天文台へ、奥へ進むとラウンジにつながっている。
「ダンブルドアは天文学が趣味なので、デスクの上など細かいところにまで天文学に関連した小道具が置いてあります。棚の中には天文関連の測量のための機器などが入っていますが、これらも僕たちが手掛けました。
また特別に内部に侵入したことで、奥にある薄暗いラウンジ部分にはこだわりの家具が配置され、壁紙まで美しいことが分かる。「ここにある家具は、1840年くらいのヴィクトリア朝初期のフランスの家具がオリジナルで、それをスキャンしたものになります。ゴシック調の雰囲気が気に入ったんです。美術装飾担当のステファニー・マクミランさんのタッチが感じられると思います。とても居心地がいいですよね? ここで昼寝したいくらいです(笑)」
加えてシリーズが進むとセットを改修する手順も出てくる。「2作目まではデスクの書見台の縁に金色の装飾が施されていました。しかしそれが顔に近い場所にあり、撮影中に気になってしまうそうでアルフォンソ・キュアロン監督と相談し、『アズカバンの囚人』からは外しました」。シリーズが進むと新たな小道具を生み出すのみならず、既存のものも改修しなければならない。「スタジオツアー東京」に来ると改めて映画が総合芸術であることを実感する。
■『アズカバンの囚人』ではハプニングも
さて1月26日(金)の『金曜ロードショー』でも放送される『アズカバンの囚人』では、撮影中にハプニングがあったそう。
「スライドで狼人間の資料を見せていくシーンのために、僕たちはとてもステキなものを作ったんだけれど、撮影当日に自動でスライドが動かなくなってしまったんです。仕方がないのでスタッフがスライドの下に何かで覆われながら隠れた状態で1枚ずつ手で次の絵に変えていっていました(笑)」と驚きの裏側を明かす。
またハリーの杖も『アズカバンの囚人』では前2作からアップデートされているそうなので要チェックだ。「最初はJ・K・ローリングの希望を聞いて、すごくシンプルで線がきれいな杖を使っていましたが、キュアロンがビジュアル的にダイナミックなものを求めたので、『アズカバンの囚人』で作り直しました。持ち手は、木の皮が残っている部分やささくれがありますが、先端になるにつれ洗練され、シンプルになっていくというデザインです。この杖からはハリーの成長や『ハリー・ポッター』シリーズの物語を読み取ることができます」「ちなみに撮影中に一番杖を壊したのは、ダニエル。彼は撮影も多かったし、一番修理しました」と振り返った。
『賢者の石』から20年以上の年月が流れた今でも、新たな発見のある『ハリー・ポッター』シリーズ。小道具のみならず、衣装、美術、音響、VFXなど作品を見るだけでは分からない多くの職人の技を知ることで、きっとあなたの『ハリー・ポッター』愛は深みを増していくだろう。そんな貴重な施設「スタジオツアー東京」が日本にあることを、改めてうれしく思う。