映画『ハリー・ポッター』シリーズでドラコ・マルフォイ役を演じたトム・フェルトンが、8月14日(木)に開業する日本初の旗艦店「ハリー・ポッター ショップ 原宿」のオープンを祝して緊急来日。8月13日(水)には、シリーズの大ファンであるtimeleszの松島聡とオープン記念イベントに登壇し、松島と熱いハグを交わすなど、終始心温まるやりとりを見せていた。
■日本のファンは「情熱的なのに礼儀正しい」
今回トムがオープンを祝うべく訪れた「ハリー・ポッター ショップ 原宿」は、代々木公園から続く緑豊かな参道沿いにあるという立地にちなんで「禁じられた森」がテーマになっている。魔法動物が息づく魔法の世界が目の前に広がっており、映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』でドラコがケガをさせられたヒッポグリフのバックビークの姿もある。
改めて同シーンについて聞くとトムは「あの日は本当に美しい日で、バージニア・ウォーターの湖の周辺で撮影が行われました。いつもリーブスデン・スタジオで撮影していたので、外で撮影できることにワクワクしたんです。ルビウス・ハグリッド役のロビー・コルトレーンが1日中笑わせてくれたのを覚えています。そしてあの日以来、バックビークと僕は友だちになったんです(笑)」と冗談を交えながら振り返る。
本ショップのテーマになった「禁じられた森」をトムが初めて歩いたのは約25年前のこと。それからずっと変わらない熱量でシリーズを愛してくれる日本のファンは、トムにとって特別な存在だという。
「世界中のファンがシリーズに対して熱い気持ちを持ってくださっているのはすごくうれしいことで、特に日本のファンの方は特別な存在なんです。映画公開からこれだけ時間が経っているのに情熱的で、僕が子どもの頃には想像できなかったくらいに盛り上がってくれている。
トムが初来日を果たしたのは『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2009)の公開時。その時をまだ覚えているそうで「空港にはたくさんの人がいて、『わぁ、誰かを待っている人がいる!』なんて笑っていたのですが、僕のことだと分かって本当に驚きました。日本でも世界中のどの場所でも『ハリー・ポッター』を見てくれている人がいるんだと実感して、とてもワクワクしました」と当時を語る。加えて日本のファンは「情熱的なのに礼儀正しい」と絶賛。「それはすごくユニークな日本ならではの特徴だと思います」と分析する。
しかし、なぜこんなにも日本のファンからドラコが愛されるのか。トムに聞くと「むしろ僕が聞きたいくらいです」と笑いながらも、真剣にこう答えた。
■優しい人柄は「母」のおかげ
「僕はドラコは境遇の犠牲者だと思っています。ハリーとドラコは同じコインの裏表のような存在です。ドラコは家族がいて、お金持ちで、権力も地位もある。
今年の秋には舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のブロードウェイ公演でドラコ役を再演することが決まっているトム。人生のほとんどをドラコと歩み続けているトムだが、「もし『ハリー・ポッター』に出演していなかったらどんな人生だったか?」と聞くと悩みながらも「きっとなにかクリエイティブな仕事をしていると思います」と絞り出す。
「パソコンは苦手だし、テクノロジーも苦手、ビジネス的な仕事も苦手です。でも音楽や絵などに命を吹き込むような作業は得意です。だからそういった仕事をしていたかもしれません。僕が11歳か12歳の時に母がオーディションに連れて行ってくれたことは本当にラッキーでした。何年経っても『ハリー・ポッター』について話せるわけですから、心から感謝しています」と話す。
「1つ質問して良い? なんのキャラクターが好き?」と逆質問をしてきたり、ドラコだと答えると投げキッスをくれたりと、終始温かく取材に応えてくれたトム。さらに「ハリー・ポッター ショップ 原宿」のオープン記念イベントでも松島が触れていたが、トムは東日本大震災の際に義援金を寄付し、熊本地震の際に「ハリコン」で募金箱を設置するよう呼びかけるなど、震災復興支援も行ってきた。
いじわるなドラコ役で名を馳せたが、演じたトムはその真逆で実は“いい人”であることは周知の事実。そんなトムに「なぜそんなに人柄が良いのか」と投げかけたところ、「全然そんなことないんです」と謙虚に語り、母の影響が大きいことを明かした。
「母は僕に“自分らしくいること”を、父は“冗談を言うこと”を教えてくれました。母はある年は僕をバイオリン教室に通わせ、次の年はアイスホッケー、その次は歌、そして演技といろんなアクティビティーに連れて行ってくれたんです。兄が3人いる4人兄弟なのですが、母は僕たちがいろんなことに触れられるように2倍も頑張ってくれました。なので、そう思ってくださるのは、母のおかげなんです」
「僕が褒められるたびに思うのは、こうして人々の人生にたくさんの喜びをもたらす作品の一部になれて、本当に感謝しているということです。本や映画、ショップ、テーマパークを通じてたくさんの人々の人生に喜びを与える作品に少しだけ携われたのは本当にすごいことですし、心から感謝しています。『偉人の陰に偉大な母あり』という言葉がありますが、まさにそうだと思います」
同日に行われたイベントでは、ドラコの大ファンだという松島に「お会いした時に僕から愛をお渡ししました。次はその愛をバトンパスしてください」とリクエストしていたトム。トムの母から続く大きな愛を絶やさずに、今後もつないでいくのが『ハリー・ポッター』ファンにできる恩返しなのかもしれない。
(取材・文:阿部桜子)
「ハリー・ポッター ショップ 原宿」は、8月14日(木)からオープン。