テレビドラマ『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)が、9月10日に最終回を迎えた。シリーズ終盤では、“あの”瑞沢高校OBが再集結し、広瀬すず、野村周平、上白石萌音、佐野勇斗、矢本悠馬、森永悠希、優希美青――映画『ちはやふる』シリーズで青春をともに駆け抜けたキャストがスクリーンを飛び出して、再びわたしたちの前にカムバック。

本稿では、映画シリーズを振り返りながら、令和の高校生たちの青春を描いた“新生ちはやふる”の魅力を振り返っていきたい。(文=菜本かな)

■瑞沢「競技かるた部」をおさらい

 まずは、瑞沢高校に競技かるた部ができた経緯を振り返ろう。2016年に公開された『ちはやふる-上の句-』で、千早(広瀬)は瑞沢高校に入学し、太一と小学生以来の再会を遂げる。

 「高校に入ったら、競技かるた部を作る!」と決めていた千早は、すぐさま太一を勧誘。しかし、かるたへの情熱を失い、サッカー部に入ろうと思っていた太一は、「まだそんな勢いでかるたやってんのかよ」「お前と同じ温度でかるたやる奴なんていんのか?」と引き気味だった。

 ところが「日曜日の大会でわたしが優勝したら、一緒にかるた部作ってよ」という千早のなかば強引すぎる誘いにより、太一は、競技かるた部に入部することに。そこから競技かるた部は、“肉まんくん”こと西田(矢本)をはじめ、“机くん”こと駒野(森永)、そして奏(上白石萌音)と仲間を増やしていった。

 また、千早たちの2年後輩で、『ちはやふる-結び-』(2018)から新キャラとして参戦したのが、筑波(佐野)と、菫(優希)。筑波は、プライドが高すぎるあまりに千早らと衝突することもあったが、かるたに“沼”っていくにつれて、性格が穏やかになっていった。

 そして菫は現在、千早の代わりに瑞沢かるた部の面倒を見ている。当時もオシャレが大好きな“イマドキ女子”だったが、その様子は今も変わらない。彼女が登場すると、場の雰囲気がパッと華やぐ感じが懐かしかった。


 そんな瑞沢OBが集結した『ちはやふる-めぐり-』の最終戦は、主人公・めぐる(當真あみ)率いる梅園と瑞沢、北央、アドレの“東京御三家”が全国大会への最後の切符を掛けて争った。全国大会への最後の切符を争うことになった第9首では、太一と新の関係性も見どころに。 序盤から、千早(広瀬すず)や奏といった瑞沢高校かるた部のOBたちはドラマに登場してきたが、この2人はそれぞれ第8首、第7首でようやく姿を見せたのだ。

■太一&新と重なる風希&懸心

 太一は梅園の風希(齋藤潤)に、新は瑞沢の懸心(藤原大祐)に稽古をつけることになった。才能あるライバルに追いつくために必死で努力をしている風希は、かつての太一を思い起こさせるし、才能があるがゆえに周囲の弱さを理解できずにいる懸心は、団体戦で苦悩していたころの新とどこか重なって見える。

 ちなみに、現在のかるた名人は新。太一は準名人として、新の背中を追いかけている。10年前、高校最後の全国大会決勝で、“優勝”を賭けて激闘を繰り広げた2人が、今もなおお互いを刺激し合うライバルであり続けているなんて…!

 しかも、最終回では太一に特訓を受けた風希と新に指導を仰いだ懸心の戦いが描かれた。かつてのライバル関係が、“めぐり”となって次世代に受け継がれていくさまは、まさに『ちはやふる-めぐり-』のタイトルを体現している。

 一匹狼タイプの懸心は、団体戦を苦手としていた新とかぶる部分がある。そんな懸心に、新が送ったアドバイスは「団体戦で本当に強い相手は、カルタが強いだけじゃない。仲間ごと強くしていくんや」だった。


 決勝の追い詰められた場面で、仲間に掛け声を送っていた懸心の姿に、かつての新を重ねたのはわたしだけではないだろう。また、風希が懸心のことを「あいつには一生勝てねえ」と言ったとき、太一が「青春全部かけてから言え」と返したのも印象的だった。

 これは、高校時代の太一が師匠・原田秀雄(國村隼)からかけられた言葉。決勝戦の最中、風希はこの言葉を思い出して強くなることができたのだと思う。懸心と風希の対戦は、新が稽古をつけた懸心の勝利。『-結び-』の全国大会では太一が勝利を収めたが、本作では間接的に、新が太一にリベンジを果たしたと言える。

 また、青春ドラマには“恋模様”が欠かせない。太一と新は、かるた選手としてだけでなく、千早をめぐる恋のライバルでもあった。

■もっと見たかった…千早&太一コンビ

 映画版に話を戻すと、幼なじみの千早・新・太一は、小学生の頃、いつも競技かるたで一緒に遊んでいた。ちなみに、2人に競技かるたを“布教”したのは新。しかし、彼は故郷の福井に帰ってしまう。

 そこから、太一は千早と同じ瑞沢高校に進学し、ともに競技かるた部に所属する“仲間”となるわけだが、新は福井県にある藤岡東高校に進学。
全国大会では“ライバル”として2人の前に立ちはだかることになった。

 この流れだと、太一の方が優勢に思えるが、映画版で千早に告白をしたのは新だけ。あんなに近くにいたのに、太一は千早に想いを伝えられていない。

 ちなみに、新は全国大会の会場で千早に「すきや。千早」と告白(この告白、最高すぎるのでぜひ映画版でチェックしてほしい…!)。しかし、千早は「もっと強くなって、詩暢ちゃんみたいに周りに強さを与えられる人になりたい。世界一になりたい」と曖昧な返事しかしなかった。

 なので個人的には、『ちはやふる-めぐり-』で、千早と太一の絡みがもっと見たかった気持ちもある。ドラマ版の最終回で、奏と駒野がゴールインしたかのような描写があったが、千早と太一はどうなっているのだろうか。およそ10年の月日を経て、本当の友達になったのか? それとも…? 

 千早をめぐる太一と新の三角関係の行方も気になるところである。その一方で、風希と懸心のライバル関係はまだまだ続いていきそうだ。

 ドラマ版でいちばん印象に残った台詞は、奏がめぐるにかけた「過去はやり直せないけど、今からそれを正解にできる」。
「もしも、あのとき違う道を選んでいたら…」と後悔をした経験がない大人はいない。誰もがめぐるのように、“もしも、あのとき”を抱えながら生きている。でも、過去には戻ることはできないから、わたしたちは“今”を全力で生き抜くしかないのだ。

 ドラマ版の中心人物は、劣等感を抱えているキャラクターが多かったため、映画版のような華々しい快進撃…はなかったが、むしろそこが大人世代に刺さった理由なのだと思う。この夏、『ちはやふる』に再会できて良かった。またいつか彼女たちの“青春”が見られることを心から願っている。

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