12月15日(火)。冬型の気圧配置が強まり、日本列島にも本格的な冬の便りが届き始めていた。

そんな日に放送された『この恋あたためますか』(TBS系/毎週火曜22時)の第9話は、気温とリンクするかのように、風の音色が一気に変わる結末に。特に、ドラマという作品の枠を超え、視聴者の心まで届いた中村倫也の恋の演技には称賛の声が上がっている。(文=阿部桜子) ※本記事はネタバレを含みます。ご注意下さい■クビ回避!かと思いきや

 北川里保(石橋静河)と破局した浅羽拓実(中村)が、「ココエブリィ」の本社に乗り込んできた第8話。続く、第9話では、浅羽を代表取締役の座から引きずり下ろした神子亮(山本耕史)に、浅羽が、井上樹木(森七菜)をやめさせないよう、頭を下げるところから始まる。

 「誰かのために。そんなの嘘に決まってる」。第3話でそんなことを言った浅羽が別人のようだ。この行動は、神子の心を動かし、一岡智子(市川実日子)が提案していた“スイーツ改革の復活”も見事実施されることになった。

 これにより、スイーツ開発から外されていた樹木も完全復帰。「やってやるぅ~!」と喜ぶ樹木に、スイーツ課からは拍手喝采。入社したばかりの、パワハラとも取れる雰囲気が遠い昔のように、チームの絆はより深まった様子だった。
しかし、胸をなでおろすと、やってくるのは恋の嵐。今回ついに、浅羽VS新谷誠(仲野太賀)の戦いのゴングが鳴り響くことになる。■里保、樹木の恋を応援

 「拓実は樹木ちゃんのことが好きだよ」。別れ際に里保から言われた言葉を、浅羽はまだ疑っていた。その想いを確かめるべく、今回、浅羽は樹木を焼き肉に連れて行ったり、休日を共に過ごしたりしてみたりする(浅羽曰く、デートは付き合っている二人がするものだから今回は違うらしい)。

 実はこのデート(仮)の前に、浅羽と新谷の間で、戦いの火蓋が切られていた。スイーツ改革で生まれた「恋する火曜日のアップルクランブルチーズ」の発売決定を祝し、樹木と新谷と里保が打ち上げをしている際、記念撮影をしようとした樹木のスマートフォンの画面に「日曜待ってる」と浅羽からメッセージが届いたのだ。

 TikTokで流行している「メッセージきた」のフィルターのごとく、ドッキリかと思えるこの展開に、樹木は大慌て。気まずさに一度席を立つが、追いかけてきた里保からは、浅羽と別れたことを告げられる。さらに里保は、「好きがだだ漏れてる」と浅羽に恋する樹木の背中を押しさえもした。

■新谷、浅羽に物申す!

 一方、新谷は、樹木への優しさを絶やさなかった。「行って、自分の気持ちを確かめてきて」と、浅羽とのデートを勧めたのだ。
「樹木ちゃんにはちゃんと選んでほしい。一点の曇りもなく、ちゃんと俺のことを」。樹木は何も言わず、大きく深呼吸をした。

 しかし、新谷は怒りを覚えていないわけではない。浅羽がバイトする「ココエブリィ」上目黒店まで、「どういうつもりだよ」とデートの誘いを抗議しに行ったのだ。最初は突然現れた新谷に、浅羽は少し嬉しそうだった。第7話で“嫉妬心”が理解できなかった浅羽。樹木と出かける約束をしたことに対し、本当に悪気がなかったのだろう。

 それでも新谷は怒りや悔しさがぐちゃぐちゃになった感情で震えていた。勉強やサッカーでは勝てなかったけれど、樹木だけは譲れないと強い口調で浅羽に伝える。「選ぶのは彼女だ」と浅羽は一言。浅羽の視線にはどこか余裕と自信すら垣間見えたが、クライマックスにはその冷静さすら失うほど、浅羽の心情に変化が起きた。
■浅羽×樹木デートの様子は?

 第9話には「令和最高のデート!!」というタイトルがつけられている。しかし、1回目の焼き肉デートでは、浅羽と樹木は、肉の焼き方で言い合いになった。浅羽も「あ、合わない。相性」とポツリ。樹木が「一緒にいて1回もいいことなかった?」と聞くと、「会社もクビになった」と、減らず口を叩き続ける。

 2回目のデートでは、浅羽主導で、アートやクラシック、グランドピアノを見に行くなど、明らかに樹木の好みじゃなさそうなコースを辿る。「飯くらいは合わせてやる」と向かった2度目の焼肉屋でも、トングを持つのは浅羽。またも焼き方で二人は争う。

 一見すると“令和最高”とは言い難いデートだったが、二人のデートは“デートコース”が主役になっておらず、あくまでも空間は、二人が共に時間を過ごすための言い訳にすぎない。例え罵り合いだったとしても、言い合いが止まらないのは、互いをよく見ている証拠だ。

 ケンカばかりの二人。でも、ヘッドホンを共有したり、1つの椅子に二人で座ってピアノを弾いたり、浅羽が樹木の口にサンチュで包んだ焼き肉を突っ込んだりと、心が通っていないとできない仕草があったのも否めない。
さらに、帰りの車内では、酔っ払ってシートベルトを着けられない樹木を助けるべく、浅羽が覆いかぶさる形に。シートベルトがカチッとなったとき、今まで以上に密着した二人は、恋の矢が心に刺さったかのような表情を見せた。

■90秒で心を奪う浅羽

 時は流れ、新谷と樹木のデート当日。「今日俺振られるんだよ」と行く前に里保に打ち明けるほど、新谷は緊張していた。デートも終盤、いよいよ「クリスマスを一緒に過ごしてほしい」の返事の時間がやってきた。怖くて何度も「タイム!」をかける新谷。しかし、その心配をよそに、樹木は笑顔で、あと一歩でキスができそうな距離まで近づいてくる。

 王道の流れを断ち切り、新谷を選ぶのか。「クリスマスは…」と樹木が言いかけ、誰もが固唾をのんだ時、なんと息を切らした浅羽が現れた。「あったよ、君と一緒にいてよかったこと」。まるで新谷など視界に入っていないかのように、浅羽は大声で、樹木に想いを伝え続ける。冷静沈着で感情を外に出さない彼が、泣きそうになりながら吐き出すように樹木の大切さをぶつけ続ける。
そして極めつけは、第1話でも樹木に言った「君が必要だ」の言葉。さらには、“俺には”が付け加えられている。

 浅羽の到着からラストまで、わずか約90秒。第9話まで積み重ねてきた繊細な中村の演技が、たった1分半ほどで、大きな音を立てて爆発する。心を閉ざした“仕事モード”の顔から、樹木に心を開いた瞬間、そして恋心だと気づいた時。振り返ってみても、たった9話の限られた出番の中で、中村の表情の変化は凄まじかった。表情だけではない。毛先、指先、呼吸法まで、桃色の恋の香りが漂っているようだった。画面を超えて視聴者まで浅羽の温度が届くこの演技には、Twitterでも「中村倫也しか勝たん」、「中村倫也の演技力の凄さよ」と称賛されていた。

 しかし、あと一歩のところで浅羽に“邪魔”をされた新谷の気持ちも無視するわけにはいかない。ラストシーン、樹木と新谷の表情も映ったが、新谷の顔には今にも殴りかかってしまいそうなくらいの怒りがびっしりと張り付いていた。Twitterでは「新谷殴っていいんだぞ」と同情の声が上がるほど。
一触即発の空気で第9話は幕を下ろし、残すところあと1話。ここから7日間で最終話を迎える覚悟は決まるのだろうか。新谷のように「タイム!」をかけたい気持ちでいっぱいだ。

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