テレビドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系/毎週火曜22時)の第1話が、4月20日(火)に放送された。本作は、インテリアメーカーで広報を担当し、インフルエンサーとしても活躍する真柴くるみ(川口春奈)が、価値観の違う人々とルームシェアをしながら、恋や友情を育む“うちキュン”ラブストーリー。
■『着飾る恋』のあらすじ
朝はきれいだったはずのまつ毛やファンデーション、ガッチリ固めた前髪、背筋を支えてくれたブラジャーや、熱気を帯びたストッキングなど、1枚1枚よろいを剥がしていき、完全なる素の姿に戻っていく22時。テレビの前で待機するさまは“SNS映え”からは程遠い。しかしそんな姿をも肯定するドラマが今回始まった『着飾る恋には理由があって』だ。
本作の主人公は、インテリアメーカー「el Arco Iris」の広報課で働く真柴。会社に貢献したいと宣伝を兼ねて始めたSNSでは、5年間毎日1日3回の更新を欠かさず、10万人近くのフォロワーを持ち、インフルエンサーとしても活躍している人物だ。
忙しい日々を送る真柴は、第1話で、マンションの契約更新を忘れ、部屋を追い出されることになる。そこで彼女に手を差し伸べたのは、くるみの唯一の女友達でフードスタイリストの早乙女香子(夏川結衣)。表参道の一等地に建つ香子のマンションに一人暮らし…と思いきや、そこには縁もゆかりもないカオスな3人がすでに住んでおり、真柴は、香子、ミニマリストの藤野駿(横浜)、オンラインカウンセラーの寺井陽人(丸山隆平)、アーティストの卵である羽瀬彩夏(中村アン)とともに、いきなりルームシェアを始めることになる。
■早速トレンド入りする“メロンパン号”
豪華俳優陣のみならず、制作陣も最強の布陣であるのが本作。脚本は、『恋はつづくよどこまでも』の金子ありさ、プロデュースは『MIU404』『アンナチュラル』の新井順子、そして演出は『MIU404』『グランメゾン東京』の塚原あゆ子らが担当する。
■横浜流星の“高い声”が新鮮!
さて、そんな本作、明らかに今までのイメージとは異なる横浜の演技にも注目が集まる。横浜がこれまで演じてきたのは、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)での不良高校生・“ゆりゆり”こと由利匡平、『あなたの番です』(日本テレビ系)でのコミュニケーションをとることが苦手な大学院生・二階堂忍、『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)での一見傍若無人ながら愛情表現が不器用という高月椿など、人と接することで、回を重ねるごとに人間味や魅力が増すキャラクターが多かったことだろう。
ところが今回演じる駿は、自由気ままにキッチンカーを営業するミニマリストというマイペースでコミュニケーション能力も高い性格だ。TBS公式サイトのインタビューでは、横浜自身も「今まで演じたことのない役」と駿を語る。さらに、オンライン記者会見では、監督から“明石家さんまや大泉洋の路線ながらも心は閉じている”という難しい要望があったことを明かしており、横浜自身も当初は役作りに不安や迷いがあったという。
しかし、蓋を開けてみると、陽気なキャラクターを演じる新鮮さにSNSでも反響が集まった。「mameshibashibaさん!」と、真柴のことをアカウント名で呼ぶ、その第一声は、普段よりも高い声となっており、「役で声の出し方変えてくるのすごいなぁ」「あんな高い声が出るんだ」と彼の演技の幅の広さに驚く投稿が散見された。映画『虹色デイズ』やFOD×dTV共同製作ドラマ『彼氏をローンで買いました』などでも確かに明るい役柄はあったものの、どちらかというと“チャラい”の方が相応しく、ここまで爽やかさを残しつつ、さらに吸い込まれそうな闇も持ち合わせているキャラクターは、まさに彼にとって新境地と言える。生き方も考え方も間逆な真柴とこれからどう仲が進展していくのか、期待が高まる。
■7年の重さを感じさせる巧みな演出
また、「塚原演出は趣深い」「塚原さん演出はずるい!」と、初回から演出に注目した声もSNSでは上がっていた。たった1時間を振り返ってみても、真柴が葉山祥吾(向井理)のネクタイを締める場面の高揚感や、羽瀬登場シーンの謎に包まれた空気、オリーブオイルが香ってきそうな駿の料理シーンなど、視聴者の心を引っ張っていく粋な演出は複数思い当たる。
特に素晴らしかったのが、やはり真柴の絶望シーンだろう。真柴が20歳のときに雑誌のインタビューで見かけてから憧れ続けていた葉山が、突然、代表取締役社長の座を退任したのだ。会社でも仲がうわさされるほど親密だった真柴と葉山。真柴は秘書よりも葉山を理解しており、行きつけの店や行動パターンまで把握していた…つもりだったのに。
何も言わずに忽然(こつぜん)と姿を消した葉山への真柴のショックは大きかった。お祭りムードの中進められる「el Arco Iris」初の路面店オープン当日。10万人のフォロワーを抱える真柴なだけあり、ファンからも声をかけられるが、落ち込みながらも対応するその姿は正面からは映されず、すべての事情を知る香子に近い視点から切り取られる。この時点で、視聴者たちは、わずか50分弱しか真柴のことを見ていないのに、巧みな演出により、7年も葉山の背を追っていた真柴の気持ちが痛いほど理解できるようになっている。“今はそっとしておこう”という気持ちは、後輩の茅野七海(山下美月)や秋葉亮(高橋文哉)のみならず、カメラワークからも感じられ、葉山を追いかける真柴の姿は、主に背中越しや引きの画で映し出される。傷ついた背中から広がる満開の桜はあまりにも残酷だった。
■星野源の主題歌を分割する手法も
さらに、塚原の演出といえば、主題歌のタイミングが絶妙なことでおなじみだ。『MIU404』での米津玄師の「感電」、『アンナチュラル』での米津の「Lemon」、『中学聖日記』でのUruの「プロローグ」、『Nのために』での家入レオの「Silly」などなど、書き出すとキリがないほど、ドラマを彩ってきた名曲は数知れず。
本作の主題歌を担当したのは星野源で、「不思議」というタイトルも含め初回放送で初解禁された。流れてきたのは、真柴が駿のカレーを食べたシーン。社長退任を聞かされて以来、カメラは様子を伺うように彼女を映し出してきたが、温かい手料理を食べたことで、張り詰めていた糸が切れたように泣き出す彼女をアップで捉えた重要な場面だった。
高音混じりの星野の声は、涙が止まらない真柴に寄り添うかのような優しさを持つ。かと思いきや場面は変わり、ソファで寝てしまった真柴をお姫様抱っこで駿が運ぶシーンに移る。部屋で寝かせようとした際、駿は体勢を崩し、真柴と顔を近づけることに。このジャストタイミングで流れたのが<“好き”を持った日々をありのままで文字にできるなら気が済むのにな>という部分。それは駿が真柴へ言葉にならない想いを感じたときの心情を表しているかのようにも聞こえ、流れるカットによって表情を変える「不思議」の魅力に、短い間ながらも引き込まれる瞬間であった。
さらに、ここだけでなく、一番最後に映し出された次回予告と駿の過去のシーンでも「不思議」が使われ、1話の中で2回に分けて、別のパートが流れる演出が行われた。放送直後の「星野源のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で星野は「曲をなんて大事にかけてくださるんだろうと感動してしまった」と塚原に感謝する場面も。
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