雨の日、窓の外をみて「雨か…」とため息をついてしまうことが多いのではないでしょうか。それは、外出が億劫(おっくう)になったり、お気に入りの靴の汚れが気になったりと嫌な方向に気持ちが持っていかれてしまうから。

でも、雨だから生まれた物語もあるはず。そんな“雨の日”が、“忘れられない特別な日”に変わる瞬間に出会える韓国ドラマで、ちょっとだけを雨を特別に感じてみませんか。(文=ヨシン)

■雨が降るのは誰かの気持ち

 雨が降る理由を「私が憂鬱なせいだ」と教えてくれたのは『トッケビ ~君がくれた愛しい日々~』のキム・シン(コン・ユ)でした。『トッケビ』は、高麗時代の英雄だったキム・シン(コン・ユ)が“不滅の命”を背負い、900年以上生きる“トッケビ”となってしまう物語。ある日、シンを解放できる唯一の相手“トッケビの花嫁”である高校生のチ・ウンタク(キム・ゴウン)と出会い、ウンタクがシンにとって気になる存在になっていくというファンタジー・ラブロマンスです。

 ウンタクは、早くに母親を亡くし意地悪な叔母に育てられますが、住んでいた家は引き払われ、学校では喫煙の疑いをかけられてしまい、帰る場所も居場所もなくドン底へ。何かあると訪れる防波堤で、一人泣く度に雨が降るウンタクの人生に、シンは傘を持って現れ、冒頭の言葉をかけます。まるで、「ウンタクが不幸だから雨が降るわけではないよ」とそっとなぐさめるかのように。

 シンがウンタクの顔をみると不思議と止む雨は、ウンタクに会いたくて仕方なかったシンの気持ちが晴れたかのよう。しかし、韓国を離れることにしていたシンが「明日、ここを発つ」とウンタクに伝えると、再び雨が降り出します。雨が止んでもシンが傘をさしたままだったのは、ウンタクと会えなくなる憂鬱な気持ちが雨になることがわかったいたから。雨に乗せたシンの気持ちが、沈んだ空気を温かな空間に変え、雨によって美しい時間となった本シーンに心を潤わされます。


 この“憂鬱な雨”が後に違う形でウンタクに降り注ぎますが、雨がなければシンとウンタクは、つながっていられなかったかもしれません。展開が進むにつれ、“雨”の形が変わる二人の運命を最後まで見届けてみては。

■大切な人に寄り添う雨

 もし雨の降る日に、目の前で大切な人が怯えていたら…。『彼女はキレイだった』には、幼い頃、母親を交通事故で亡くした時に雨が降っていたことから、雨の日にトラウマを抱えるチ・ソンジュン(パク・ソジュン)が登場します。

 主人公のキム・ヘジン(ファン・ジョンウム)とソンジュンは、親友であり初恋の相手。二人は15年ぶりにに再会することになりますが、ソンジュンは「太っちょ」と呼ばれるさえない少年から完璧なイケメンと成長し、美人で人気者だったヘジンはその面影のない大人になってしまいます。自信を無くしたヘジンは自分の正体を隠しながら、ソンジュンと同じ職場の上司と部下として働くことに...。

 第5話では、雨の日に交通事故を目撃し、恐怖のあまり車から飛び出してたソンジュンを、ヘジンが見つけるというシーンが描かれます。彼を見つけたヘジンは「大丈夫、何も起こらないから」と自分の上着をそっとかけると、冷たい雨と視界を防ぎ、辛い思い出まで優しく包み込みました。ソンジュンはこの時点で、目の前にいるのがヘジンだと気づいていませんが、昔もヘジンが傘になってくれたことを思い出します。本シーンは、お互いが今も変わらず大切に想い続けていることを、雨が教えてくれているようでした。ヘジンのように、大切な人の“心の傘”になれたらいいですよね。


■守りたい雨が降り注ぐ

 『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』は、主人公のコ・ハジン(IU)が現代から高麗時代にタイムスリップしてしまい、へ・スとして生きながら8人の皇子たちの運命を変えていくという物語。第11話(U-NEXTでは第17話)での、雨の中にいる二人はまるで絵のよう。それは、その裏にある残酷さと切なさがより美しくさせたのかもしれません。

 スが自分のために罪をかぶって処刑されるオ尚宮様の無実を陛下に訴えるため、太祖の御殿の前で2日間座り込んでいたところに降り出した雨。他の皇子が同じ雨の下でスを見守るも、想い合っていたワン・ウク皇子は、スに手を差し伸べずに去ってしまいます。そこで、スを慕うワン・ソ皇子が隣に立ち、黒い大きなマントを広げてスを雨から守る。スの肩を持つことは、陛下に反するのと同じ意味で命がけの行為。雨だけでなくスの命までも守ろうとする彼のもとで、うなだれていたスが姿勢を正し、また座り込む姿は涙なしには観られません。叶わないとわかっていても、二人の“守りたい”気持ちが、どうか届くよう願わずにはいられない雨でもありました。

 ちなみに本作では、他にも“雨”がキーワードになる場面があります。ソ皇子は雨をきっかけに大きく運命が変わった一人。高麗時代ドラマだからこそ観れる“雨の風景”に浸ってみてはいかがでしょうか。

 
 “雨”によって動き出した恋にトキめいたり、雨が降ったことで大きく変わる展開に涙したりと、胸はずむことがある韓国ドラマ。雨のしんどい日に、自分から素敵な雨に出会いに行くのもアリですね。

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