“岡山が生んだ奇跡の不細工”というキャッチコピーで、10代から20代の女性を中心に絶大な人気を集めているYouTuber・まあたそ。その人気は止まることを知らず、2021年9月現在、YouTubeのメインチャンネルの登録者数が196万人を超え、9月10日(金)に自身初のスタイルブック『ストリート沼 MAATASO'S STREET FASHION STYLE BOOK』(宝島社)の発売が決定しています。

今回は、そんな彼女にファッションへの想いやYouTuberとして日々考えていることなどについて、たっぷり語っていただきました。(取材・文=於ありさ/写真=松林満美)

■ こってりラーメンのような1冊に

ーーまずは、初のスタイルブックの発売が決まった時の心境を教えてください。

「夢が叶った」と思うのと同時に、「ウチなんかが出していいんかな」っていう不安は、めちゃめちゃでかかったですね。スタイルブックって、かわいい人が出すイメージが強かったので。

ーー周りの反響はいかがでしたか?

周りの人もファンの方も「驚いてくれるかな?」と思ったら、そうではなくて「まあ、出すよね!」、「あれ?出してなかったっけ」みたいなテンションの人が多かったです(笑)。私としては意外だったんですけど、ありがたかったですね。

ーーお写真もかなり豊富ですが、撮影時のエピソードがあれば教えてください。

個人的には撮影を通して、さらにお洋服が好きになりました。タンスの奥から引っ張り出したお洋服もあったので「こういう組み合わせができるんだ!?」って勉強になりましたね。

あとは、この撮影のために、新しくタンクトップを買ったのですが、この夏はこればっかり着てるんじゃないかなってくらい、めちゃくちゃ気に入っちゃって! 普段、腕を出すことがあまりなかったので、「この本を作らんかったら、しなかったファッションじゃな」って思うと良い経験をしたなと思いますね。

ーー写真もコンテンツもボリューミーで「まるでファッション誌まるごと、まあたそさん!」との印象を受けました。どんな一冊になりましたか?

読み切るにはお腹いっぱいの、こってりラーメンみたいな1冊になっていると思います(笑)! たぶんこの世に存在する色を全部使っているくらいにカラフルですし、全部で150着以上着ているので、そういう風に思っていただけて嬉しいです。
ストリートファッションの歴史を振り返るページなどもあるので、ファンの方だけでなくファッション好きな人にも楽しんでほしいですね。

■「お母さんだから」と悩んだ過去

ーーそもそもいつ頃から、お洋服が好きなのでしょう?

幼稚園の時くらいですかね。というのも、お母さんがかわいい系のお洋服が好きで買ってきてくれるんですけど、それが嫌で…(笑)。自分で選び始めたのがこの頃でした。

ーー当時は、どんなお洋服を着ていたんですか?

今と変わらずオーバーなシルエットのファッションが好きでした。

あとは、すごく派手なやつ! 虹色の生地にニコちゃんマークがプリントされていて、ハートがたくさん散りばめられているみたいな(笑)! 子供の頃は、発表会の時に「絶対真ん中じゃなきゃ嫌!」ってくらいの目立ちたがり屋だったので、それが服にも反映されてたんじゃないかなと思います。でも、今思うとお母さんは「私のセンスって思われたくない」って嫌だったじゃろうな~(笑)。

ーー自分の好きなファッションを楽しむのって、意外と難しいことなんじゃないかなと思うんですけど、まあたそさんは周りの目を気にして好きな服を着れないという経験はありますか?

周りの目を気にしてというのはないんですけど、子供を産んで、すぐのころは「お母さんなら、地味にしなきゃダメだ」って思ったことはあります。ずっと金髪だった髪を黒髪にして、黒色のズボンにボーダーのTシャツを着て…。なんかもう「全然ウチじゃない!」って感じでしたね。

ーーそこから、どのようにして好きなファッションを楽しむ、まあたそさんに戻っていったんでしょう?

「やばい! このまんまじゃ自分を見失っちゃう」って思って、少しずつ好きなお洋服を買い集めていくうちに「ウチはこれがかわいいと思ってるから、着る!」という精神になっていきました。

ただ、自分の中で戦いはありましたよ。
「派手すぎるかな」って思うこともあれば、YouTuberって若い子ばかりだから年齢も気にしちゃうし…。でも、そこで折れちゃダメなんですよ、絶対! 中途半端に好きなことをやっても心は晴れきらないですから、好きなことは貫くのが良いと思います。

ーーファッションを楽しみたい人に向けて、まあたそさん流のファッションアイテムを選ぶ基準を教えてください。

今持っている服に合いそうだからではなくて、単品で「かわいい!」と思ったものを選んでいます。極論、私はお洋服屋さんで売っていないものを取り入れることもありますね。ヘルメットについていたゴーグルや、ビジュアル系のファッションの人がつけるチョーカー、ライブグッズのカバン…「かわいい!」と思ったらなんでもファッションに合わせちゃいます。好きなものを詰め合わせた“歩くヴィレッジヴァンガード”みたいな人間なんです(笑)。

あと、めちゃくちゃ特定厨なので(笑)、SNSで見かけた全然知らない子のファッションを見て、かわいいと思ったアイテムを探し出して買うこともよくありますね!

■ 時給720円時代を忘れず、やりたいことをする

ーー近年、YouTubeを始める人もかなり多い印象ですが、改めてYouTuberの楽しさをお伺いしたいです。

「好きなことして、生きていく」という言葉通りの場所だと思います。だから「やりたいけど」と言いつつ、やらない理由を言っている人には「やりなよ! 何を迷うことがあるの!?」って思っちゃいますね。

でも、仕事っぽくなったら嫌だなっていうのはあります。

ーーどういうことでしょう?

初期の頃は、自分の出したい動画ばかりを出していたけど、ファンの子ができて、ファンの子が求めていることばかりを考え始めたら“まあたそらしい”動画からはずれていっちゃうこともあるし…。
でも、そこを乗り切って、貫いている人が生き残っていくんだなっては思うので、流されすぎるのはダメだなって。今も悩んでいます。

ーーまあたそさん自身は、なぜYouTubeを始めたんでしょう?

暇つぶしです(笑)。離婚して、保育園に子供を預けられるまで3ヵ月あった時に、家でちゃんと子供のことを見ておかないといけないし、バイトもできないし、なにか家でできることないかなと思って始めたんですよね。

当時、LINEもTwitterも送れる動画の秒数が決まっていて、共有できる場所がYouTubeしかなかったから、「友達に見てもらえたらいいや」って思って載っけてみたんですよ。そしたら、思った以上に知らない人からも見られて! 当時は怖かったですね(笑)。

ーーでは、今のまあたそさんになることは、全然想像できていなかったんですね。

そうですね。最初に動画をアップした時も、家の近くのコンビニの面接を受けようと思っていて、履歴書を買ってきていたくらいだったので。

ーーその葛藤はどうやって乗り越えたんでしょうか?

正直、今もわかってないです。画面の中に映る自分を見て「え? これホンマにウチ?」って思う時もあるし、ずっと夢を見ているんじゃないかなって思うこともある。だから「明日死ぬかもしれない」って思って、ずっとやりたいことをやっています。
もしも3秒後に地震が来たとして「あの時、やっとけばよかった」って思いたくないんです。

ーーYouTuberとしてのまあたそさんと、プライベートでのまあたそさんのスイッチが切り替わる瞬間ってあるんでしょうか?

名古屋…かな?

ーー物理的な移動で、スイッチが変わるんですね(笑)。

岡山でまどか(本名)として新幹線に乗って、名古屋あたりで化けの皮が剥がれて、まあたそになるんです。なんか動画に関しても、自分的には岡山で撮った動画の方が素の自分でおもしろいんですよね。東京で撮った動画は、ちょっと仕事モードになってしまっている感じ。

東京ではやりたいことを全部やって暴れて、岡山に帰ったら子育てをしながら規則正しい人間らしい生活をする、そのバランスがちょうど良いんだと思います。

ーー最後に、まあたそさんが活動をしている中で大事にしている心構えがあれば教えてください!

「天狗にならない、調子に乗らない」この2つですね。今こうやって夢心地だけど、いつまで続くかわからないですから。常に時給720円でラーメン屋でアルバイトをしていた時のことを思い出しながら、楽しいことをやっていけたらなと思います。

 スタイルブック『ストリート沼 MAATASO'S STREET FASHION STYLE BOOK』は、9月10日(金)発売。

編集部おすすめ