Sexy Zoneの中島健人と小芝風花が主演を務めるテレビドラマ『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系/毎週火曜21時)がいよいよ最終回を迎える。各話の放送時間中、Twitterで関連ワードがトレンド入りするなど、大盛り上がりを見せた本作。
■真っ直ぐさ伝わってくる四人の歌声
「夏のハイドレンジア」は、中島のパートからスタート。透明感のある歌声ながら、<雨の街に咲く花/ヒロインなんだ>でわずかに力強くなる歌い方は、中島が『かのきれ』の中で演じる長谷部宗介を想起させる。不器用ながらも、1人だけを思い続ける芯の通った宗介を理解している中島だからこその技巧だ。
1番のサビ前の菊池風磨の歌声は、楽曲を聞く人をエモーショナルな気持ちにし、ぐっと引きこむパワーを感じる。<まるで/時計の針/すれ違ってばかり>はささやくように切なく、<その笑顔が見たいのに/今>では本音があふれ出た恋をする“僕”を重厚感のある歌声で表現。そこから四人の歌声が重なるサビへとつながっていくことで、葛藤を乗り越えて、それでも“君”を思い続ける純粋さを感じさせる。
2番のソロパートでは、菊池から始まり、佐藤勝利が<差し出せる傘もない僕と>をはかなげに歌い、松島聡が<一緒に濡れてくれる人だ>と優しく歌いあげて、中島の<初めての恋が/初めての愛に>へとつながっていくことで、そこから一気に前向きな印象に。
全体を通して聞くと、切ないバラードと一言で片付けるにはもったいない、Sexy Zoneらしい爽快感のある1曲に仕上がっている。
■宗介の思いにリンクする歌詞
「ドラマと楽曲がマッチしている」との声も多く見受けられた同曲。その作詞・作曲を手掛けたのは、ミュージシャンの秦基博だ。
秦は、楽曲提供を発表した際に「ハイドレンジア=西洋アジサイ。
「幻滅させたくない」と正体を隠す“雨の時期”を乗り越えた愛(小芝)と、そんな愛を思い続ける宗介にリンクするのも納得だ。
また、<何が出来ると言うのだろう><差し出せる傘もない僕と>といったような少し弱気な歌詞が、2番サビ、フィナーレの大サビにかけて<君とともに/続きを/綴りたいんだ>と力強くなっていく変化は、幼少期は愛に守られる側だった宗介が、今は愛を「幸せにしたい」と頼もしく成長した姿と重なるように感じる。
もちろん、これだけではない。
大切な初恋、桐山梨沙(佐久間由衣)が演じていた現在の愛と再会しても過去にすがってしまっていたこと、愛の正体を確信し思いを伝えるまで、そういった宗介の心情の変化と重ねながら、今一度、歌詞を見つつ本作を楽しむのもおすすめだ。
■スタッフの愛を感じる演出も
また、各放送回ごとに楽曲の入るタイミングや止めどころが異なっており、『かのきれ』スタッフの愛情とこだわりを感じた。
例えば、第3話で同曲が流れたのは、雨の中でパニックになってしまっている宗介に愛が上着をかけるシーンでのこと。この時、イントロから始まり<泣き出した空を/見上げたまま/潤む瞳をごまかす君>でストップ。宗介が愛の頬に手を差し伸べ、ぼんやりとした表情で「愛…」と呼びかけた数秒後に<ハイドレンジア/こぼれる/涙は/僕が拭おう>のサビ部分から曲が再び流れた。
ここまで“僕”は宗介の視点であると解釈してきたが、このシーンは「泣き出した空」と「涙」がリンクしている上に、愛が宗介に「大丈夫」と語りかけた姿から“僕”は愛で“君”は宗介だと、感じさせるような印象を受けた。
また、第7話では、愛と宗介がお互いのもとへと走っていく姿と、これまでの二人の歴史を振り返る回想シーンが交互に映し出される中で、イントロから1番のBメロまでと、2番のサビから大サビまでが使用された。
仲むつまじかった小学生時代の様子を回想するシーンでは<出会えた日から僕の物語は始まった>との歌詞が流れ、歌詞の一言一言と、二人の今日までの歴史がリンクしているようだった。
特に宗介が涙を浮かばせながら安堵の表情で「やっと見つけた」と電話越しにつぶやくシーンは印象的だった。ここで「誓おう」という歌詞が流れたことで、初恋、すれ違い、不安や葛藤を経て「自分はずっと1人の女性、佐藤愛が好きなんだ」と確信する宗介の気持ちを強く感じたからだ。
この夏、多くの人の心を掴んだ『かのきれ』と、本作の良さをさらに引き立てた「夏のハイドレンジア」。今夜放送の最終回では、いったいどんな使われ方をするのか期待したい。