シリーズ最新作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』が公開となる本日、今夜21時からの『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、原点となる第1作『ゴーストバスターズ』が放送される。最新作『~アフターライフ』が、1980年代の『ゴーストバスターズ』『ゴーストバスターズ2』と直接つながる正統続編だからこそ今回の放送は見逃せないのだが、それを差し置いても、全米興収2.2億ドル&日本配収41億円と、公開当時の年間ランキングでぶっちぎりTOP、大ブームを巻き起こした傑作SFアクション・コメディを楽しまない手はない。

特に注目したいのは吹き替え。今回の放送は「ソフト版」となるが、収録されたのはDVDが発売された1999年。今から20年以上も前なだけに、レジェンド級の実力派声優がイキイキとしたセリフ回しを繰り広げているのだ。

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■吹き替えのポイントは、個性派キャラクター3人のコントさながらの“ノリ”!

 今やコメディ作だけではなく、俳優、脚本家としても成功を収めたダン・エイクロイドが、元々は同じバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』仲間のジョン・ベルーシ、エディ・マーフィらと共演するべく脚本を執筆したのが本作。その後紆余曲折を経て、エイクロイド、同じく『サタデー・ナイト・ライブ』出身のビル・マーレイ、エイクロイドと共に脚本を改稿したハロルド・ライミスがバスターズの面々を演じる形となった。

 大学の研究職をクビになったため、一緒にお化け退治専門会社を立ち上げる3人組ながら、超常現象を半ば信じず、プレイボーイ気取りの小ずるいクセモノ男ピーター・ベンクマン(マーレイ)、純な超常現象オタクで臆病なレイモンド・スタンツ(エイクロイド)、メカニック担当の堅物イゴン・スペングラー(ライミス)と、三者三様の個性的なキャラクターがコントさながらの掛け合いをするのが大きな見どころだが、それだけに、吹き替えではその“ノリ”が再現できるかが大きなポイント。だが安心召されよ、ピーター、レイモンド、イゴンを演じるのはそれぞれ、安原義人、玄田哲章、牛山茂というレジェンド級の面々なのだ。

■安原義人、玄田哲章、牛山茂──3人のレジェンド級声優が絶妙なトリオを結成!

 ゲイリー・オールドマン、ミッキー・ロークの吹き替えで知られる安原は、『ゾンビランド』ほか10作以上でマーレイの吹き替えも務めていて、もはやおなじみ。「二枚目よりもクセのある役の方が断然面白い」と公言していることに加え、かつて山田康雄や納谷悟朗も在籍し、コメディ舞台で知られるテアトル・エコーに所属するだけに、飄々(ひょうひょう)としたおトボケ演技はお手のものだ。そのユルさがある分、危機を迎えたニューヨーク市長を前に「止められるのは俺たちだけだ」とビシッと言い放つさまがシビれる!

 玄田といえば、アーノルド・シュワルツェネッガーを筆頭に、ローレンス・フィッシュバーンほか豪快な吹き替えが印象的だが、なんと本作では“オタクで気弱なボクちゃん”演技が楽しめてしまう。なかでもクライマックスのマシュマロマン登場直前、「しょうがないよ……思わず浮かんじゃったんだ……僕、ガマンしたんだよ……」のくだりは必聴だ。

 加えて、『スポットライト/世紀のスクープ』ほかでマイケル・キートンの吹き替えを務め、数々の洋画吹き替えにも参加してきた牛山が抜群の存在感を誇る。
ギャグをカマしているわけでもないのに、イゴンの冷静なひと言が絶妙なツッコミと化す。

■高木渉のキモ演技にびっくり! 2人のヒロインには駒塚由衣&安達忍

 ヒロインを演じるのはシガニー・ウィーバーだが、彼女よりも先に(吹き替え的に)語りたくなってしまうのが、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『ミクロキッズ』でも知られるリック・モラニス(コメディアン出身)演じるルイス・タリー。ウィーバーふんするディナに想いを寄せる隣人かつコミュ障の変人なのだが、その吹き替えを高木渉が務めているのだ。ジャック・ブラックの吹き替えやアニメ『名探偵コナン』の元太役が有名だが、最初は高木と気づかないほどの作り込み。「今夜パーティがあるんだけど、来ない?」の“キモさ”がたまらなくいい。

 ピーターと交流を深めつつも、破壊神ゴーザの番犬ズールに身体を乗っ取られてしまうヒロイン、ディナ・バレット(ウィーバー)役は、『ヴィレッジ』ソフト版や『エクソダス:神と王』でもウィーバーの吹き替えを担当した駒塚由衣。ラブコメ作品のヒロイン的演技から、魔物に憑依されてのセクシー化、そしてモンスターとしての雄叫びと、一作中での大きな演技の振れ幅に注目だ。

 出番は少ないながらも、ゴーストバスターズ事務所の受付嬢ジャニーン・メルニッツ(アニー・ポッツ)も、もう1人のヒロインとして要注目。初仕事の朗報に「仕事が来たわよー!!」と叫ぶのは、シットコム『フレンズ』ほかジェニファー・アニストン役でおなじみの個性派・安達忍。イゴンと惹かれ合う関係性は…最新作『~アフターライフ』に向けてぜひ押さえておいてほしいポイント。

■脇の脇まで聴き逃せない! 菅原正志、森田順平、岩崎ひろしも参加

 主要キャラクターの紹介が終わっても、まだまだ記したい声優陣がそろっているのが本作の特徴。バスターズ4人目のメンバーとして就職してくるウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)役は、『ブレイド』DVD版ほかウェズリー・スナイプスの吹き替えで知られる菅原正志が担当し、変人ぞろいのバスターズ中、唯一の常識人としてバランスを保つ役回りを好演している。
バスターズと対立する環境保護局のウォルター・ペック(ウィリアム・アザートン)は、コリン・ファース、ヒュー・グラントの吹き替えを多く担当する森田順平。これがなんとも憎々しい!

 そして、バスターズ初仕事の現場となる高級ホテルの支配人も可笑しくてたまらない。吹き替えを務めたのは、野沢那智から『スター・ウォーズ』シリーズのC‐3PO役を引き継いだほか、ローワン・アトキンソン、ロビン・ウィリアムズの吹き替えも務めた岩崎ひろしと聞けば、期待も膨らむはずだ。

■吹替翻訳は『コマンドー』のあの人! 画面に集中できるのも吹き替えの強み

 面白い吹き替え(それもコメディ作品)には、高い演技力と巧みなテクニックを誇る声優が欠かせないのはもちろんだが、こなれた日本語と心地よい掛け合いのリズムを持つ「吹き替え台本」も必要だ。本作では、傑作吹き替えのひとつとして高い人気を誇る『コマンドー』テレビ朝日版を手掛けた平田勝茂が吹替翻訳を担当。オリジナル版のノリとリズムを損なわず、そして原語の意味を逸脱しない範囲でなじみある日本語表現に変換された形で、すんなりと耳に頭に入ってくる「吹き替えゴーストバスターズ」が作り出されている。

 「字幕を読む」ことから解放され、画面に集中できることも吹き替えの良さであり、強み。豪華で上質な吹き替えを堪能しつつ、CGが映画に本格導入される以前の、最高峰のミニチュア特撮&光学合成がオンパレードの映像も楽しんでほしい。(文・村上健一)

 映画『ゴーストバスターズ』は、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて今夜2月4日21時放送。

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