ディズニー&ピクサーの最新作となるアニメ『私ときどきレッサーパンダ』の配信開始を前に、米ロサンゼルスにて3月2日(現地時間)、ワールドプレミアが開催された。

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 母親の前での“真面目で頑張り屋ないい子”と、友達の前の“好きなことに夢中な等身大の女の子”、〈自分らしさ〉に葛藤する主人公のメイが、ある出来事をキッカケに感情をコントロールできなくなってしまい、モフモフのレッサーパンダに変身してしまう。

そんなイマジネーションあふれる物語が描かれる本作。

 ロサンゼルスのエル・キャピタンシアターで開催されたプレミアでは、ドミー・シー監督に続き、メイ役に抜てきされた新星ロザリー・チャンや、メイの母親ミン役を演じ、『ラーヤと龍の王国』でも声優を務めた女優サンドラ・オーも登場、にこやかに写真撮影に応じた。

 そして、第62回グラミー賞の年間最優秀楽曲賞(「Bad Guy」)など5冠の快挙を史上最年少18歳で達成したアーティスト、ビリー・アイリッシュも“レッサーパンダ”をほうふつさせる帽子をかぶり、さっそうと登場。ビリーは本作のオリジナルソング「どんな君も」をはじめ、劇中に登場する人気ボーイズ・グループ“4★TOWN”が歌う楽曲のすべてを兄のフィニアス・オコネルとともに手掛けている。

 日本のアニメーションが大好きなドミー監督は、本作でもジブリなど日本アニメに大きな影響を受けているそうで、「『美少女戦士セーラームーン』は特に大きな影響を与えてくれました。パステル色の色調や、女の子たちの友情などに、それは見て取れると思います。『らんま 1/2』『フルーツバスケット』も、メイがレッサーパンダへ変身するシーンにおいて、アニメーションの持つ遊び心という点で、大きなインスピレーションを与えてくれています」と明かした。

 本作には、レッサーパンダになったメイや周囲の姿を通して、“自分らしさはひとつじゃない”というメッセージも込められている。ドミー監督は「生きていくことって難しい、ということも受け止めてもらいたいです。“成長して大人になる”ということは、予測できないことの連続ですからね」と背中を押してくれるメッセージを優しく解説。

 そして、ビリー・アイリッシュとフィニアス・オコネルが手掛けた楽曲については「私は二人の作る音楽の大ファンだったので、彼らがノーとは言えないような(笑)、風変わりな依頼をしました。普通こういう場合、“曲を書くのを検討してもらえませんか?”と接触するものですが、私たちは、一緒に『ボーイズ・グループ』を作り上げませんか? と彼らに話したんです」と、プロジェクトの始まりも打ち明けた。


 劇中登場するボーイズ・グループ“4★TOWN”が歌いあげる「どんな君も」は、本当の自分らしさに悩むメイに対し、“どんな君でも君だよ 本当の自分を隠さないで”と、背中を押してくれる楽曲となっている。

 会場にはディズニー&ピクサーの名作を数々生み出してきたプロデューサーのリンジー・コリンズも登場し、「“完璧になる”ことは出来ないということ、そして、あなただけがそのようなことで悩み苦しんでいるわけじゃないんだよ、というのを忘れないで欲しいです」とメッセージを寄せた。

 アニメ映画『私ときどきレッサーパンダ』は、ディズニープラスにて3月11日より独占配信。

 ドミー・シーら登壇者コメント全文は以下の通り。

<登壇者コメント全文>

■ドミー・シー(監督・脚本)

――本作に影響を与えた日本のアニメについて

 私が主に影響を受けているのは、1990年代から2000年代初頭にかけてのアニメです。『美少女戦士セーラームーン』は、我々にとって特に大きな影響を与えてくれました。映画の全体的なスタイルにおいても、例えば本作でのパステル色を使った色調や、女友達同士の友情などに、それは見て取れるかと思います。『らんま 1/2』や『フルーツバスケット』なども、メイが人間からレッサーパンダへ、またレッサーパンダから人間へと、突如ポン!と変身するシーンにおいて、アニメの持つ遊び心という点で、大きなインスピレーションを与えてくれています。

――日本のファンへのメッセージ

 生きていくことって難しい、ということも受け止めてもらいたいです。“成長して大人になる”ということは、予測できないことの連続ですからね。

――日本の好きなアニメは?

 スタジオジブリの、宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』です!

――ビリー・アイリッシュとフィニアス・オコネルのオリジナルソングについて

 私は長い間、二人の作る音楽の大ファンでした。それで、ノーとは彼らが言えないような(笑)、風変わりな依頼をさせてもらったんです。
普通こういう場合、映画製作サイドのほうから音楽家に、“何か曲を書くのを検討してもらえませんか?”と接触するものですが、我々の提案は、一緒に「ボーイズ・グループ」をひとつ作り上げませんか?というものだったんです。

■リンジー・コリンズ(プロデューサー)

 “完璧になる”ことは出来ないということ、そして、あなただけがそのようなことで悩み苦しんでいるわけじゃないんだよ、というのを忘れないで欲しいです。人は誰しも、そんな過程があるし、それが成長して大人になる、ということの一部なのだと思うんです。

 本作は面白くてドキドキもするし、主人公のメイの中に、皆さんが自分自身を見出すことができると思います。また、母親である方々が見たら(メイの母親)ミンの方に、自分と似たものを見出すはず。そして、13歳や14歳の頃は自分もそうだったなぁ…と必ず感じる瞬間がある映画だと思います。

■ピート・ドクター(ディズニー&ピクサー チーフ・クリエイティブ・オフィサー)

 ドミー監督は、私が『インサイド・ヘッド』を監督した時に一緒に働いていたので、彼女の脳内が、すごく不思議で独特で、いかに素晴らしいかを目の当たりにしていて、よく知っています。本作は、まさにそんな彼女独特の才能が反映されていて、同時に誰にでも訴えかける普遍的な映画にもなっています。ピクサー映画ながら、そこにひとつ捻りが利いているんですよ。

■ジム・モリス(ディズニー&ピクサー 社長)

 私の心を本作が鷲掴みにした点は、どんな子供も経験するような、これまでとは違って自分の親とも異なる存在になって独立した存在にならなければならない時期を、説得力ある形で描いているところです。親のことは愛していて尊敬しているけれど、もう親とは違う人間にならなければならない、あの難しい時期をね。ドミー監督はそんな物語を生み出すうえで、本当に素晴らしい仕事をしてくれました。


 本作は、我々ピクサーの映画としては、スタイル面ではいつもと少し異なるところもありますが、それは監督としてのドミーの資質が反映されているものであり、見ていて楽しいものだと思います。その一方で、ちゃんとピクサーの映画でもあるのですが、そうでありながらドミーらしい、他にはない独特さがしっかり刻まれている映画になっていますよ。

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