先日まで放送されていた連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)でヒロインを務めていた川栄李奈。クランクアップ直後に挑んだ作品が、劇場版30作品目となる『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』での声優の仕事だ。
【写真】髪ばっさり ショートヘアになった川栄李奈(写真10枚)
■声の仕事はいつまでたっても不安だらけ
女優業と同時に声優の仕事も着実に経験を積み、本作では屁祖隠(へそがくれ)ちよめという、物語に重要な役割を果たすキャラクターを演じた。ちよめはくノ一であり妊婦というぶっ飛んだ設定であり、劇中では派手なアクションシーンも披露する役だ。
「本当にすごい役ですよね(笑)。アクションも多く、どんな加減で表現したらいいのか、すごく難しかったです。声優のお仕事は5~6回目なのですが、いまだにコツがつかめないんです。これまで私は声優さんとご一緒に収録したことがなく、間近でお芝居しているのを見たことがないので、テクニックを勉強することもできなくて…。いつも不安だらけで毎回手探り状態です」。
とは言いつつ、これまでの作品でも川栄の声の表現力を高く評価する声は多い。国民的アニメーションとしてゴールデンウィークの風物詩となっている『映画クレヨンしんちゃん』シリーズでも、ゲスト声優という立場でありつつも、登場シーンは多く、製作陣の期待の大きさがうかがえる。しかし「それでも…」と川栄は顔を曇らせる。
「やっぱり声のお芝居は、本職ではない人間が混ぜていただいている…という印象が拭えず、何度経験させていただいても『自分で大丈夫なのかな』と思ってしまうんです。
■30代に向けて1つ1つ丁寧に作品に取り組みたい
本作のアフレコは、川栄がヒロインとして出演していた連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』がクランクアップして間もなく行われた。声の芝居で、しかも役も全く違うということで、何か大きく変化したか…ということは「まだ分からない」というが、“なんとなく”感じたことはあったという。
「作品によって毎回違うキャラクターを演じるので、いつも作品に入る前は『難しいな』と感じるのですが、朝ドラで膨大な脚本に数ヵ月ずっと触れていたので、本を読んでキャラクターを理解するスピードが上がったというか、スッと役をイメージできるようになった気がします。逆にちょっと脚本から離れると、セリフの覚えが遅くなったり、役が入ってこなくなったりするので、やればやるほど脚本の読み方というのは、身に付いていくのかなと思っています」。
AKB48を卒業してから約7年。2月には27歳を迎え、これまでの時間を「がむしゃらに突っ走ってきた」と振り返った川栄。
「本当にAKB48を卒業してから、ドラマや映画などを毎回2~3本掛け持ちするようなスケジュールでやらせてもらい、たくさんの経験を積むことができました。そんな中、30代も見えてきた今は、1つ1つの作品をより深く丁寧にやっていけたらいいなと思っています」。
■映画の現場をたくさん経験したい
少しずつギアの入れ方も変化してきたという昨今。それでも変わらないのは“楽しむ”ということ。
「頑張れるのは、仕事が楽しいと思えるから。
連続テレビ小説のヒロインという大役を全うした今、川栄にとっての野望とは――。
「ずっと朝ドラと大河ドラマに出たいという夢を持っていたのですが、もう1つ、映画で賞を取りたいという目標もありました。これまで圧倒的にドラマの出演が多かったのですが、これからはもっとたくさん映画の現場を経験したいと思っています」。
これまで出会ったことのないような作品、監督、さらには共演者…と川栄の夢は尽きない。
「『カムカムエヴリバディ』では深津絵里さんやオダギリジョーさんと一緒にお芝居させてもらっている中で、『こんな表現の仕方があるんだ』と自分が思ってもみなかった角度でのお芝居をたくさんされていて、現場で参考になることがたくさんありました。そういったすてきな俳優さんたちとお芝居できることが、とても幸せなことだと思っているので、これからもたくさんの出会いが生まれるように頑張りたいです」。
『クレヨンしんちゃん』という国民的アニメーションに参加できたことに「人生に大きな影響を与えてくれる出会いであり、この経験を自分なりに生かしたい」と未来に思いを馳せた川栄。アフレコイベントには、バッサリと髪を短くして登場したが「特に何かあったわけではないですが、切りたかったので」とつぶやくと「心機一転、すっきりしました」と笑顔で語っていた。(取材・文:磯部正和 写真:上野留加)
『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』は4月22日より全国公開。