コミックスがシリーズ累計1100万部を突破した山本崇一朗原作の青春コメディ『からかい上手の高木さん』。6月10日から公開となる劇場版『からかい上手の高木さん』より、西片を演じる梶裕貴のインタビューが到着。

劇場版ならではの魅力や、思い出深いシーンを明かした。

【写真】梶裕貴、インタビューフォト

――梶さんが思う、この作品が愛されているポイントを教えていただけますか?

梶:コピーの「見守りたい初恋が、ここにある―。」が、全てを物語っている気がしますね。ピュアで微笑ましい二人の真っ直ぐな想いがあるからこそ、誰もが応援したくなるんだと思います。一生懸命に頑張っている人の姿って、本能で応援したくなりますよね。

――まさに本能で応援したくなるニヤキュンポイント満載ですもんね。

梶:山本崇一朗先生は本当にすごい! すごすぎる! まず、よくこれだけの“からかい”の種類を思いつくな、と(笑)。しかも何が素敵かって、高木さんの「西片が好きだから」という気持ちがしっかり伝わってくるところなんですよね。愛です、愛。そんな素晴らしい原作をもとに、大事に大事に作られてきたTVアニメシリーズ。より恋愛要素を深掘りしながら、彼らの中学校3年間を丁寧に追ってきてくれたなという印象があります。

――劇場版の製作を知った時の心境はいかがでしたか?

梶:驚きました! まさか劇場版とは! 「TVアニメとしてずっと続いてくれたらな」という想いは常にあったんですが、あくまでそれは“二人の変わりない日々”というか、“何気ない日常のやりとりが続いていく”みたいなイメージで。でも劇場版となると、大きな事件が起きたり、新キャラクターが登場したりといった、大規模なドラマが展開されるようなケースが多いじゃないですか?(笑)。
なので「からかい上手の高木さん」だとどんな描かれ方になるのか、最初はまったく想像がつかなかったんですよね。とはいえ、また新しく西片を演じさせていただける機会が生まれたことは、純粋に嬉しかったです。その後は、僕と高木さん役の高橋李依ちゃんとの間で、内容の予想合戦がはじまって(笑)。「修学旅行編かな?」とか「木村が急に男前になったり…?」なんて妄想して盛り上がっていました。実際に台本をいただいて「なるほど!」と。

――今回劇場版の収録をしてみて、TVシリーズとの違いはありましたか?

梶:違いというか…本作はシリーズを重ねるごとに、恋愛描写という点において、どんどんとアグレッシブになっている印象があって。そのピークかと思われたTVアニメ第3期の最終話を経ての劇場版ですから…そりゃもう凄まじかったですよ(笑)。“リアルな恋愛観”と“この先の未来”がはっきりと見えてきて「制作スタッフの皆さん攻めてるな!」と思いました。

 シリーズを通し、西片を演じる上では“(芝居の)生っぽさ”を大事にしてきました。西片は普段、コミカルなリアクションが多い。だからこそ、生っぽい芝居を「ここぞ」という時に入れ込むことで、中学生らしい繊細な心の機微を上手く表現できるのではないかと考えているんです。ただ今回の劇場版では、シナリオ自体がナイーブな方向に攻めている印象があったので、今までと同じような塩梅でお芝居をしていくと、西片の範囲を越えた、かなり大人びたものになっていってしまうのではないかという不安があったんです。
でも…完成したものを観て、そんなものは杞憂だったとスッキリしました! 色や音楽、演出が加わると、こんなにも絶妙なバランスで仕上がるものなんだと感動しましたね。やはりアニメは総合芸術。あらためて、監督をはじめとするスタッフの皆さんへのリスペクトの気持ちがこみ上げました。心から感謝です。

――TVシリーズにはないしっとり感が劇場版にはありました。

梶:そうなんです! エネルギッシュで笑いがあるのが「高木さん」ってイメージだったんですけど、今回は、もちろんその要素もありつつ“ドラマチックな恋愛映画”という印象が強い気がしますね。

――西片の変化や成長は演じていてどの部分に感じましたか?

梶:以前は“恋”という感情にすら気づいていなかったり、変に意識しすぎてドギマギするようなことが多かった西片ですが、TVアニメ第2期の途中からは、一人でいる時にも高木さんのことを思い浮かべたり、高木さんからの“からかい”を受けて連想する先が恋愛に絡んだことになってきたりと、確実に変化してきていると思います。まさに思春期真っ只中! 今では、自分の気持ちを素直に伝えられるようにもなりました。“高木さん”という存在が彼の中で大きくなっているのは明らかなので、そのあたりの心情変化はしっかりと意識しつつ…けれど大人っぽくはなりすぎないよう、匙(さじ)加減に気をつけて演じました。

――現場で思い出に残ったシーンまたはエピソードを教えてください。

梶:大きなキーワードとしては「夏休み」ですよね。そして、「虫送り」(※)「子ネコとの出会い」という2つのイベント。
二人の日常である学校生活とは、少し切り離された時間で会う、ってすごいことじゃないですか? 2人で予定を立てて、約束して会うわけです。その事実だけでドキドキしますよね。そんな風にして、毎日のように2人で過ごしているのが微笑ましいなと思いますし…同時に、もちろん楽しい瞬間だけじゃなく、壁にぶつかることもあって。そんな時に見せる、二人の新しい一面にも注目です。頼り甲斐のある西片や、今までになく楽しそうに笑う高木さん。高橋さんの声が、自然と1トーンも2トーンも明るくなっているように感じられましたね。予告映像にもある「ずっとずっと幸せだよね」のような少し切ないワードや、そんな言葉をもらす感傷的な高木さんの姿も、劇場版ならではかもしれません。

(※)虫送り…小豆島の中山地区で約300年前から行われている伝統行事。

――劇場版ではテレビシリーズと違う西片の一面がみられましたね。

梶:そうですね。でも、相変わらず中学生らしいバカっぽさや可愛らしさも残っていますよ。高木さんは、そんな西片も好きなんだと思いますしね。
あ、余談ですが、子ネコと触れ合う2人の様子が、まるで父と母のようにも見えて…どこか「からかい上手の(元)高木さん」へと繋がっていく原点みたいなものも感じました。

――これから劇場で観る皆さんに、見どころを教えてください。

梶:小豆島の大自然や棚田の風景がとても美しく描かれていますし、虫送りという伝統行事を通して、夏らしさを感じていただける映画になっていると思います。加えて、物語はもちろんのこと、音楽面にもご期待いただけると!今回も、大原ゆい子さんが主題歌と挿入歌を担当されているのですが、とてもとても素敵で。ドラマと見事にリンクした歌詞や、可愛らしさと大人っぽさを兼ね備えた歌声に、心を鷲掴みにされること間違いなしです。それから、堤博明さんの劇伴も新曲盛り沢山で最高ですよ!

 常に進化してきた「高木さん」の集大成が形となった劇場版。まさに映画館で観ていただきたい作品です。そして…映画を観終わった後には、きっと彼らの恋物語を、またイチから観直したくなるはず。皆様、この夏を「からかい上手の高木さん」と共に過ごしてみてはいかがでしょうか?

 劇場版『からかい上手の高木さん』は公開中。

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