過去に長澤まさみや上白石萌音、上白石萌歌、浜辺美波らを輩出した「東宝シンデレラ」オーディションが、東宝創立90周年プロジェクトとして6年ぶりに開催される。2016年に第8回グランプリに輝いた福本莉子が、自身のオーディション当時を振り返るとともに、未来のシンデレラを目指す応募者へエールを送った。
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■「変わりたくて」友人から薦められて臨んだオーディション
――6年ぶりに「東宝シンデレラ」オーディションが開催されますね。
福本:私が受賞させていただいたのが6年前なんですね。もうそんなに時間が経っているんだというのがちょっと驚きです(笑)。事務所の中で一番後輩だったので、先輩になるというのが不思議な感覚。高校時代も部活に入っていましたが、あまり後輩と接する機会もなかったので、ちょっと楽しみではあります(笑)。
――第8回「東宝シンデレラ」のオーディションは、推薦されてギリギリでの参加だとお聞きしました。
福本:そうなんです。当時「なにか変わりたいな」という思いがあったんです。そんなときに友人から「東宝シンデレラのオーディションがあるから受けてみたら」と言われたのがきっかけでした。漠然と芸能界に対する憧れみたいなものはあったのですが、オーディションを受けて…みたいなことは考えていなかったので、最初は躊躇(ちゅうちょ)しましたが「人生一度きりだから」とチャレンジしてみようと思ったのがきっかけでした。
――「東宝シンデレラ」が初めてのオーディションだったのでしょうか?
福本:一度雑誌のオーディションは興味本位で受けたことがあったのですが、書類審査に通ったあと、二次審査が東京だったんです。私は当時大阪に住んでいて、家族にも話をしていなかったので、そこで「もういいかな」と思って受けなかったんです。
――他者からの推薦というスタートでしたが、オーディションはどんな感じだったのですか?
福本:私のときは書類審査がなく、東宝の方が全国各地を回って、一次二次審査を同日に行っていました。そこで受かると東京での合宿審査になるのですが、今回も親にはちゃんと話していなかったので、どうしようか…という迷いはありました。ギリギリまで「どうなるんだろう」という思いがあったのですが、今回は「チャレンジしたい」と思って、東京に行きました。
――合宿審査はいかがでしたか?
福本:本当に大変でした。5人で1グループになるのですが、お芝居とダンスの審査があって…。2泊3日の合宿だったのですが、土曜日まで学校があったので、1人だけ遅れて行ったんです。私はダンスの経験がなかったので、夜までずっと練習をしていました。同じグループの最年少の子がダンス経験者だったので、その子に教えてもらって、必死に食らいついていった感じです。
――年齢も違う5人組。結構ライバル意識はありましたか?
福本:そういう感じではなかったです。みんな受かりたいという思いはあっただろうけれど「蹴落としてやる!」みたいなギラギラした感じはなかったです。
――合宿審査のあとは?
福本:合格者はグランプリファイナルという舞台に進みました。東宝の本社に行って、メチャクチャ偉い人がたくさんいる中で、ダンスをしたのを覚えています。その後、映画館で発表がありました。
――審査が進むにつれて「自分がグランプリかも」という手応えみたいなものは感じていましたか?
福本:勝手に自信満々で落ちるのも嫌だったので、あまり自分に期待はしていませんでした。結果は気にせず、目の前の審査に一生懸命取り組もうという思いでした。審査員にアピールしようなんて余裕もなかったので(笑)。
――グランプリ受賞の瞬間は?
福本:「本当に自分なの?」という信じられない感覚でしたね。もちろんうれしかったのですが、それ以上に私はただの高校生だったので、今後どうやっていったらいいのか…という不安の方が頭に浮かんできました。受賞後、テレビの生放送などにも出演したのですが、大阪の学校に通っていたので、学生生活ができるのかな…みたいな気持ちが大きかったです。
■学生生活と芸能活動の両立 多忙な日々がスタート
――実際、学生生活と芸能活動の両立はどんな感じだったのですか?
福本:グランプリを受賞すると、副賞で映画の出演や雑誌の取材など、これまで全く経験したことがないようなお仕事が入ってきました。
――学業との両立は大変ではなかったですか?
福本:受賞後すぐにNHK高校講座「物理基礎」に、事務所の先輩である斉藤由貴さんと一緒にレギュラー出演させていただいたのですが、当時土日に収録があって2本撮りだったんです。私は土曜日まで学校だったので、日曜日に東京で収録して、月曜日の朝、始発で大阪に帰るという生活を毎週していました。テスト期間などは、始発の新幹線では間に合わなかったので、飛行機で帰って空港から学校に直行するというときもありました。そのときはとても大変でしたが、やるからにはお仕事も勉強もどっちも頑張りたいという思いがあったので、逆に気合が入りました。
――今回オーディションを受ける方も、学業と芸能活動の両立に不安を持つ人も多いのではと思います。秘けつは?
福本:気合です!(笑)。根性論ではないですが、本当に「やるぞ」という気持ちさえあれば、きっと両立できると思います。
■応募者へ伝えたいこと「丸裸の自分を見てもらって」
――過去には沢口靖子さんや長澤まさみさんなど大活躍されている先輩がいる「東宝シンデレラ」オーディションですが、グランプリを受賞してプレッシャーみたいなものはありましたか?
福本:私は第8回「東宝シンデレラ」オーディションで受賞させていただいた人の中でも最年長だったので、最初からいろいろなお仕事を頂いたんです。でも逆に言えば、一歩ずつ進んでいくところを5段飛ばしぐらいの感じだった。自分の実力よりも大きな仕事を頂く機会が多く、プレッシャーを感じる暇がないというか、必死に食らいつかなければという思いが強かったんです。もちろん東宝シンデレラという伝統もありますし、先輩方に恥じないように…という思いはありますが、私は私なりの道を進めばいいという思いで、あまりプレッシャーみたいなものはなかった気がします。
――「なにか変わりたい」と思っていた気持ち。東宝シンデレラでグランプリを受賞して、変わりましたか?
福本:まず環境が180度変わりました。芸能界という全く知らない世界に自分がいるというのも奇跡だと思います。仕事って辞めようと思えば、いつでも辞められると思うのですが、これまで「辞めたい」と思ったことはないです。オーディション前は、大学に進学しても、何をやりたいんだろう…という漠然とした不安があったのですが、ある意味で強制的に環境が変わり進んだ道が、自分に向いていて、とてもやりがいのある仕事だったので、大きな喜びがあります。
――どんなときにやりがいを?
福本:昨年写真集を出させていただいたのですが、そのとき「お渡し会」があって、初めてファンの方と交流する機会があったんです。そのときに、作品のことなど温かい言葉をたくさん掛けていただき、皆さんの愛を感じることができました。応援してくださる人がいるからこそ、頑張れるんだなと改めて実感できました。
――第9回の応募者にメッセージをお願いします。
福本:「どうやったら気に入られるのかな?」みたいな思いで臨むよりも、丸裸の自分を見てもらおうという気持ちの方がいいのかなと思います。大変なこともたくさんありますが、私は一歩踏み出して良かったなと確実に思えているので、飾らず自分自身をアピールしていただければ。ご一緒できることを楽しみにしています。
(取材・文:磯部正和 写真:上野留加)