2018年に公開された前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』から4年。最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』をひっさげ、待望の来日を果たしたコリン・トレボロウ監督が、レガシー・キャストを迎えたシリーズ最後の作品に込めた思い、さらには絶大な人気を誇るフランチャイズ映画を一身に背負うことの難しさ、醍醐味をエネルギッシュに語った。



【写真】トレボロウ監督が超気に入った羽毛恐竜ピロラプトル

■レガシー・キャストも壮絶なアドベンチャーに挑戦!

 1993年、マイケル・クライトン原作のSF小説をスティーヴン・スピルバーグ監督が映像化した『ジュラシック・パーク』から約30年。長きにわたったシリーズも本作が完結編となり、これを祝福するかのように、現在の主役クリス・プラット(オーウェン)とブライス・ダラス・ハワード(クレア)に加え、当時のレガシー・キャスト、サム・ニール(アラン)、ローラ・ダーン(エリー)、そしてジェフ・ゴールドブラム(イアン)が勢ぞろいした。しかも彼らは、顔出し程度の出演ではなく、悪徳会社バイオシンの不正を暴くために自ら体を張って調査に乗り出す主役級の活躍ぶり。

 キャストが物語にどう絡むか、「スティーヴン(・スピルバーグ)と徹底的に話し合った」というトレボロウ監督。「本作は、島を出て、広い世界に解き放たれた恐竜たちと人類の行く末を描いていますが、またしても科学の力で自然界の力を捻じ曲げてしまうようなことがあれば、人類も恐竜と同じように絶滅してしまうという教訓がテーマ。だからこそ、2015年に始まった『ジュラシック・ワールド』の物語を単に終わらせるのではなく、サーガに登場する主要キャスト全員で語るべき物語にしたかったのです」。

 そして今回は、“ジュラシック”をテーマにした2019年の短編映画『バトル・アット・ビッグ・ロック』を共作したエミリー・カーマイケルも脚本に参戦している。「これまでエミリーにとって私は、先生的な立場だったんですが、本作で同等のパートナーになれた感じがしました。夏の間、来る日も来る日もストーリーについて2人で話し合ったのですが、彼女が加わることによって、非常に新しい視点が生まれたと思います。例えば、『ジュラシック・パーク』のさまざまなキャラクターの言葉遣い。イアン博士の独特の間やエリーの明るいけれど頑固なところなど、一人一人のパーソナリティーを掘り下げながら、彼女はキャラクターに合った真実味のあるセリフで本作をさらにパワーアップしてくれました」。

■俳優陣も絶賛したトレボロウ監督のコミュニケーション能力

 トレボロウ監督らが来日する少し前、リモートインタビューに応じたジェフ・ゴールドブラムは、「コリンは俳優とコミュニケーションをとるのがうまい。
個人的には、10点満点のゴールドブラム・ポイントを差し上げたいぐらい(笑)」と冗談交じりに語っていたが、俳優との距離の取り方など、何か秘訣があるのだろうか?「私も若いころ俳優をやってたので、演技の難しさについて体感していますし、また、監督にどういうふうに指導してほしいかも理解しています。両サイドの気持ちが分かるので、コミュニケーションが円滑に進むのかもしれません。その中でも一番大切にしているのは、俳優を無理に縛らず、『自由を与えること』。あくまでも自分で模索しながら役を追求する作業はとても大事だし、俳優にとっても必要な時間だと思うんですよね」。

 特に今回は、『ジュラシック・ワールド』チームに加え、『ジュラシック・パーク』のレガシーチームが合体するというキャスティング。世代の違いや考え方の違いでギクシャクしたりしなかったのだろうか?「まったく問題なかったです。というのも、一緒のホテルで何ヵ月も合宿して撮影に臨んだので、気心も知れて、本当の友情や絆が生まれたんです。ただ、物語上、お互いのチームのことは何も知らない設定なので、そこを素知らぬ顔で演じるのは難しそうでしたね。とはいえ、みなさん、プロ中のプロなので、この場面ではどんなことが必要なのか、きちんと線引きをして役に没頭してくれました。恐竜映画ではあるけれど、彼らなしでは映画は成立しませんでした」。

 ただ、俳優ありきと語りながらも、本作には27体の恐竜が制作され、中でも火赤色の羽毛恐竜ピロラプトルを心底気に入ったトレボロウ監督は、あまりにも素晴らしすぎて、「実を言うと、恐竜だけをひたすら観せる映画を撮りたい衝動に駆られた」と告白。「ピロラプトルに関しては、色とか、羽毛とか、ものすごく研究されていて、素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
確かにあまりのクオリティーの高さに見惚れてしまったことは事実ですが、ストーリーもありますし、俳優も素晴らしい演技をしていますからね。もうどれが欠けてもこのシリーズは成り立たない…それが正解かもしれません」。

■フランチャイズ映画を成功させる秘訣は“バランス”

 さかのぼれば、『ジュラシック・パーク』が公開された1993年は、まだ少年だったトレボロウ監督。まさかこんな大作を背負う監督に上り詰めるとは思っていなかっただろう。そんな彼が、今、まさにシリーズの幕引きを担い、ここにいるわけだが、改めてファンが大勢いるフランチャイズ映画の難しさ、楽しさ、醍醐味を聞いてみた。

 「これは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の時にも感じたことですが、長く愛される大作シリーズを継承する場合、一番難しいのは、“バランス”ですね。本シリーズで言えば、あくまでも『ジュラシック・パーク』ファンという方もいらっしゃるし、単純に恐竜が人類に襲いかかるのを観るのが好きだという娯楽派の方もいる。もちろん、原作者マイケル・クライトンのファンもいて、科学やテクノロジーをものすごく重視する方もいる。同時にお子さんにも観ていただきたい…とか、いろんな思いがあるので、とにかくそこのバランスをどうとるのか、その力量が問われるのは確か」。

 さまざまな意見や要素を混ぜ合わせながら制作した本作も苦労の連続だったようだが、最後は、「大多数のジュラシック・ファンに気に入っていただける仕上がりになったはず」と力強く自信を覗かせていた。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は公開中。

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