『はいすくーる落書』『ママハハ・ブギ』(いずれも89年TBS系)などのドラマで人気を博して以降、ドラマ・映画を中心に確かな存在感で幅広い層から支持されている的場浩司。香取慎吾が3年ぶりに主演を務める映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』では、香取演じる裕次郎が勤めるホームセンターの店長・浦島役で出演。
【写真】時折見せる、やんちゃな少年のような笑顔がかわいい的場浩司
■“愛妻家”的場が抱く主人公夫妻の印象「特別異質な夫婦とは思えない」
映画『台風家族』の脚本・監督で知られる市井昌秀監督の最新作『犬も食わねどチャーリーは笑う』は、裕次郎と日和(岸井ゆきの)の結婚4年目夫婦のゆずらないバトルをコミカルに描いたブラックコメディ。仲良し夫婦だと思われている2人だが、日和は鈍感夫にイライラを募らせていた。その鬱憤(うっぷん)を吐き出さないとやっていられないと、日和は、妻たちの恐ろしい本音や旦那たちが見たらゾッとするようなエグい投稿がびっしり書き込まれた〈旦那デスノート〉に書き込みをする。そしてある日、裕次郎もその存在を知り、「これって俺のこと?」と思うような書き込みを見つけてしまう…。
笑えるだけでなく、時にヒヤリとして、大いに泣ける本作。的場は「今までコメディと言われていた作品とはちょっと違う角度から作られた映画だと感じました」と話す。そして、「芝居を大げさにするとか、表情とかで笑ってもらおうとしているのではなく、ナチュラルな芝居の中で、ナチュラルな人間像を見てクスッとする。すごく上質なコメディができたと思います」と胸を張った。
メディアでも家族とのエピソードを話すなど、愛妻家としても知られる的場だが、本作の裕次郎と日和夫婦については「一般的な今の若者夫婦はこんな感じなんだろうなと思いました」という。
「結婚生活を続けていけば、夫も妻も、出会った頃のトキメキなどは少しずつ薄れていくとは思います。
劇中でも、夫婦関係を大きく変えることになる〈旦那デスノート〉。的場は「実際に、自分のことを妻が書いていたらびっくりしますよね。あれは怖い」と笑いながらも、「今作では、〈旦那デスノート〉は妻の愛として描かれています。もし、そこに愛がなければただの怖いものでしかないけれども、最後まで観てもらえれば、愛があることを感じてもらえると思います。映画で観ると〈旦那デスノート〉の存在は非常に面白いものとして映るんじゃないでしょうか」と分析した。
■芝居以外への思いが変化「面白そうと思うものは全部やってみたい」
1988年『首都高速トライアル』で俳優デビューした的場は、来年にはデビュー35周年を迎える。「あまり役者としての自分を振り返ることはない」という的場だが、俳優人生の転機を問うと「たくさんの偉大な役者さんと知り合ったことが自分の中で大きな出来事だったと思います」と答えてくれた。
そして、「芝居って楽しいんですよ」と笑顔を見せる。
「いろいろなタイプの役者がいると思いますが、僕はクランクイン前に、僕が演じる役のことを僕以上に知っている人は絶対にいないと言い切れる状態まで仕上げていきます。生まれた時はどうだったか、小学校の時はどうだったか、どういう生活を送ってきたのかという台本に書かれていない、見えない部分まで考えるので、その作業は苦しいです。ただ、それをやり終えた後の芝居には説得力があると僕は思います。だって、僕以上にこの役を知っている人はいないんですから。だから、臆することなく、悪い意味での緊張をすることなく演じることができるんです。(芝居には)苦しいこともありますが、その先で見える景色は最高です」。
一方で、一人の人間“的場浩司”としては「海に行くのが大好きなので、よく行くんですが、海に行くとどうしてもいろいろなことを思い出して考えてしまいます。僕、ロマンサーなんで」とにっこり。
的場といえば、スイーツ好きや都市伝説好きとしても知られ、最近ではテレビ番組で俳句も披露している。そうした幅広い活動についても水を向けると、「昔はお芝居以外の仕事はしたくないと思っていましたが、今は自分が面白そうだと思うものは全部やってみたいです。仕事以外でも、面白そうだと思ったら、すぐにやってみる。だって、いつかは死んじゃうんですよ? だったら、何でもやってみた方が楽しい。だから、何でもやります」と語る。今、熱中していることを聞くと「台本を読んだり、台本を書く。企画する。家族と話す。メダカの世話をする。海に行く。すごくいっぱいあります」と言うが、「充実はしてない」とキッパリ。
「飢えているんですよ。まだ何か面白いことがあるだろう。もっと面白いことを探したい。そう思ってあれこれやっているんです。だから、熱中はしていても、充実とはまた違う。僕は、明日死んでも後悔しない生き方をしたいんです。だから、楽しいことややりたいことに、毎日一生懸命打ち込んで、全力でやっていきたいと思っています」。
自身を「好奇心の塊」だと評した的場が、今後は何を楽しみ、どんな活躍をするのか。楽しみは尽きない。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』は、9月23日より全国公開。