女優の唐田えりかが、遠藤雄弥とダブル主演を務める映画『の方へ、流れる』が公開を迎える。休養期間を経てオーディションで役を勝ち取った本作、唐田はどんな思いで作品に臨んだのだろうか――。
唐田が胸の内を明かした。
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■どんな役柄でも受け入れる態勢で脚本を読む
デビュー作の『今、僕は』がスマッシュヒットを記録し、2作目の『蜃気楼の舟』がカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭フォーラム・オブ・インディペンデントコンペティションに正式出品されるなど、国内外で注目を集めている竹馬靖具監督最新作。
ひょんなことから出会った男女が、東京の街を歩きながら、本音とも偽りとも感じられるような自身の身の上を赤裸々に話す会話劇が繰り広げられる。唐田は辛辣な物言いながらも、どことなく脆さを感じる女性・里美を演じる。
「私は役を演じるとき、どんな役柄でも受け入れる態勢で脚本を読み始めるようにしています。なので、いかなる役でも“どうしてこんなことを言うんだろう”みたいなものは基本的に感じないんです。今回の里美も棘のある言葉を発してはいるのですが、自分の弱い部分も分かっているので、相手に言いつつも、自分に対して投げかけている言葉もあるのかなと解釈していました」。
表層的な解釈では見誤ってしまうキャラクター。深読みすればするほど、里美の実態はつかみどころがなくなる。唐田は「脚本を読んでキャラクターについて考えることはしましたが、基本的に現場に行って、遠藤さんとのお芝居のなかで、どんなことを感じるかという部分を意識しました」とアプローチ方法を語る。
■絶対オーディションに受かりたかった
さらに唐田は、本作に「出たい」という思いに駆られた理由を明かす。「この作品のオーディションがあると聞いて、竹馬監督のこれまでの作品を拝見させていただきました。
そのとき、とても不思議な世界観で、演者さんたちがお芝居をしているというよりは、その世界に存在しているような感覚を持ったんです。自分もそういった世界に入ってみたくなり、オーディションには絶対受かりたいと思ったんです」。
もともとモデル志望で芸能界に入った唐田。2015年に女優デビュー以来、映画・ドラマにと出演を重ね、製作陣や監督からも高い評価を受けていたが、過去のインタビューでも「女優業へ自信が持てない」とやや後ろ向きな発言をしていた。
それでも今回「絶対オーディションに受かりたかった」という強い言葉を発した。「本当に以前はお芝居に対して分からないことが多く、前向きになれていない時期が長かったんです」と振り返ると「お芝居という仕事を続けていくなかで、何かをするのではなく、その世界にただ存在できるようになりたいなと思うようになったんです。そう考え始めてから、いい意味で力が抜けてきて、少しずつお芝居に対して前向きになってきました」と語る。
■芝居で恩返ししたい
さらに、唐田は「まだお芝居を“好きです”としっかり言えるほど自信が持てているわけではないのですが…」と前置きしつつも「お仕事をお休みしていた時期に、事務所の方々と毎日いろいろお話をさせていただいて…。こんなにも自分と向き合ってくださる方々がいるということに救われたし、変わらなければという思いがずっとあったんです。今はしっかりと作品に向き合い、いいお芝居をすることで、大切な人たちに恩返しをしたいという思いが、女優業への強い原動力になっています」と胸の内を明かした。
演じるのではなく、その場に存在するように…。そんな唐田のイメージした俳優像は、竹馬監督の現場で体現できたのだろうか――。
「変なところに力が入ることもなく、本当に現場に身を任せて立つことができたことには感謝しかないです」と撮影を振り返ると、共演した遠藤との距離感を含め、作りこむことなく“感じること”を大切にした撮影だったという。
作品が公開され、観客のもとに届く。「まだ自分が出ている作品を客観的に観ることができないんです」と苦笑いを浮かべると、今後について「まだこうしていきたいという具体的な目標を立てるよりは、与えていただいた役を丁寧に演じていくことを大切にしていきたいです」と語った。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)
映画『の方へ、流れる』は、11月26日より全国順次公開。
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