12月3日に公開される映画『THE FIRST SLAM DUNK』。その14日前となる11月19日に東映アニメーション公式YouTubeチャンネルにて新たな映像が公開された。
そこでフォーカスされているのは、湘北バスケ部のシューティングガード、背番号14の三井寿。バスケ部を最大の危機に陥れた悪役として初登場した印象を覆し、今では人気投票を行えば必ず上位に名前が入る名キャラクターだ。今回は、そんな三井の名勝負を振り返りながら魅力を分析していく。
【写真】三井寿「バスケがしたいです」の名シーン 『SLAM DUNK』フォトギャラリー
■ブランクに苦しむ姿を徹底して描写
バスケ部襲撃という大波乱を経て、湘北最後のスタメンとしてプレイヤー復帰を果たした三井。中学時代にはMVPを獲得しており、1年生の頃に同じバスケ部員だった木暮公延が「同年代のバスケット選手でその名前を知らない奴はいない」と断言する実力者だ。
だが、ここで浮かぶのが「昔はすごかったが、今は?」という疑問。なにせ約2年もバスケットから離れていた選手が、果たして即戦力として活躍できるのか…。
最初の試練は、復帰2戦目の翔陽戦で訪れる。「5点以内におさえる」と豪語する翔陽の長谷川一志を相手に20得点を上げるものの、同時に体力不足という課題が露呈した。ここから三井は、ブランクに苦しみ続けることになる。
なお、この翔陽戦はロン毛をバッサリ切ってイケメンになった三井が、“弱点を持つ強キャラ”“逆境で燃える性格”という人気キャラの要素を見せつけて一気に読者の心を掴んだ試合でもある。不良時代の名残か、気性の荒い悪役感が抜けきらないイメージや、不良仲間の堀田徳男にベタ惚れされるなど同性へのモテ要素が多いのも好感度が高い。
ブランクという点では、全国大会出場をかけた陵南との公式戦も記憶に残る。三井はここでも体力不足に苦しみ、ついに試合終盤、倒れて試合を離脱してしまう。すっかり落ちてしまった体力に不甲斐なさを痛感し、「なぜオレはあんなムダな時間を…」と悔恨しながら涙を流す姿が胸を打つ。
そんな苦難を経て迎えた実質最後の試合、王者・山王工業戦では、苦しみ続けた三井の執念が結実。ディフェンスのスペシャリスト・一ノ倉聡、そして準エース・松本稔とのマッチアップで体力の限界を迎えていた三井が、フラフラになりながらも脅威の粘りを見せて、劣勢を覆す立役者となる。漫画内で描かれた限り、山王のエース・沢北栄治に次ぐ25得点という記録を残しており、滅多に感情を出さない流川楓が「すげーな…」と驚愕するほどの活躍を見せている。さらに三井が心から尊敬する恩師・安西監督の「今の君はもう十分 あの頃を越えているよ」という言葉も涙を誘う。
過去の代償として付いて回るブランクをなかったことにして安易に活躍させず、厳しい現実と向き合う姿を描き続けてきたからこそ、それを乗り越えた三井がより魅力的に映る。
■3P以外は? 三井の実力が分かる紅白戦
三井といえば、綺麗なフォームで外から射抜く3ポイントシュートが代名詞。しかし、それだけで全国の強豪校と渡り合ってきたわけではないことが分かる試合がある。
それは、神奈川大会で王者・海南大付属に敗北した後の、湘北バスケ部紅白戦。1年生対2・3年生という構図だったが、ハンデとして主将の赤木剛憲、三井が抜けた上級生チームは猛烈な成長を遂げているバスケ初心者・桜木花道の勢いを止めることができずにいた。
これを見て、安西監督が投入したのが三井。「桜木君を抑えてくれるかね」という要請に「やりましょう…」と笑みを浮かべていたが、読者としては「もしかして負けてしまうんじゃ…?」という不安があった。
この頃の桜木は持ち前の才能に基礎練習の成果も出始め、得点こそ少ないものの、試合で翔陽の花形透や海南大付属の高砂一馬ら強豪センターを圧倒することもあった。とはいえ、まだバスケットを始めて数ヵ月の素人相手に復活したヒーローが負ける姿は見たくない。
そんな心配をよそに、交代した三井は抜群のバスケセンスを発揮。桜木の武器・レイアップとダンクが役に立たないゴールから離れた位置に追い込み、完全に封じ込める。三井の3Pシュートによる得点力は抜群だが、それ以外はどうか…ということを読者に見せつけるような試合で、分析力とディフェンス力の高さも見せつけた。公式戦のような派手さはないが、うまさが光る“三井の神回”と言っていいだろう。
また、三井はオフェンスファウルをもらうのが非常にうまいのも特徴。紅白戦では、攻めあぐねて強引に切り込んだ桜木からファウルをもらい、全国を賭けた陵南戦でもオフェンスの鬼・福田に対してその力を発揮している。これには神奈川ナンバー1プレイヤー・牧紳一と翔陽の監督兼主将・藤真健司をも唸らせており、突出した身体能力こそないが、経験とセンスに裏打ちされた技術や駆け引きも三井の大きな武器といえる。
■最大の武器は安西監督の言葉
中学MVPに輝くも、酷使した膝が限界を迎え、あえなくバスケットを投げ出した三井。
湘北バスケ部を不良仲間とともに潰しに来た末に、「安西先生…!! バスケがしたいです……」というあまりにも有名な名言と共に彼はバスケ部に戻ってきた。得点力、経験、技術、センス、どれをとっても申し分ないが、最大の武器は別にある。それは“あきらめの悪さ”だ。
三井は体力の限界を迎えてからが真骨頂。“絶対にあきらめない男”は、終盤に得点を量産し始めることが多い。その際に口をついて出るのが、「あきらめの悪い男」というフレーズ。かつて心から尊敬する安西監督にかけられた「あきらめたら そこで試合終了ですよ…?」という教訓。“決してあきらめない”ということをバスケの信条としていることがうかがえる。
なかでも印象的なのが、海南大付属戦と山王戦で体力が尽きたときに口にした「俺は“最後まであきらめない男”三井だ!!」、そして「おう オレは三井 あきらめの悪い男」というセリフ。自責の念に苦しんできた三井が、それでも安西監督の言葉を胸に刻んでバスケットに向き合う姿勢を象徴した名セリフだ。
まもなく公開される新作映画では、原作のどのエピソードを取り上げるのか不明だが、新映像ではロン毛にキャップという三井の姿が登場。宮城リョータ同様、原作にはない過去が描かれるのかもしれない。
いずれにせよ、三井の活躍が描かれるのは間違いないはず。スクリーンでも持ち前の“あきらめの悪さ”を発揮してくれることに期待したい。(文・二タ子一)
映画『THE FIRST SLAM DUNK』は12月3日より公開。
※記事初出時、ポジション名に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
編集部おすすめ