「特殊効果の神」と呼ばれる巨匠フィル・ティペットが監督を務めたストップモーションアニメ映画『マッドゴッド』の本編映像が初解禁された。映像は30年かけて制作したティペット監督の執念と狂気に満ちた内容となっており、これに驚がくした樋口真嗣、つくしあきひと、見里朝希ら各界のクリエイターから絶賛のコメントが寄せられた。



【動画】巨匠フィル・ティペット30年の狂気と執念! 『マッドゴッド』本編映像

 本作は、『スター・ウォーズ』『ロボコップ』『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズなど、名作の特殊効果を手掛けてきた巨匠ティペット監督が制作期間30年をかけて生み出した、執念と狂気のストップモーションアニメ。

 人類最後の男に派遣された孤高のアサシンが、地下深くの荒廃した暗黒世界に降りていき、拷問された魂、老朽化した地下壕、うごめく不気味なクリーチャーたちがうごめく地獄のディストピアを巡るダークファンタジーとなっている。数々のクリーチャーを生み出してきた天才が作り出したディストピアには、悪魔的でグロテスクなキャラクターのほか、幻想的で妖艶、メルヘンな<グロかわいい>キャラクターも登場する。

 今から約30年前、ティペット監督は『ロボコップ2』(90)の撮影後に本作のアイデアを閃き、制作を始めたものの、『ジュラシック・パーク』(93)で時代が転換点を迎え、業界が本格的にCGへ移行。「俺の仕事は絶滅した」とプロジェクトは中断された。それから20年後。ティペット・スタジオのクリエイターたちが奇跡的に当時の映像を発見し、彼らの熱望により企画が再始動。クラウドファウンディングで世界中のファンからの応援も集まり、2021年のシッチェス映画祭で上映された。

 今回初解禁された本編映像は、とびきり愛らしいクリーチャーの登場シーン。残忍な小人インプが、薄暗い部屋の中で容器の蓋を開けて何かを振りかけた先に広がっていたのは、緑にあふれ、カラフルな植物やキノコ、煌びやかな装飾で埋め尽くされた夢の国のような世界。まるでおとぎ話に登場するような美しい森の奥からひょっこり現れた、原色カラーで全身ドット柄の愛らしい2匹の謎のクリーチャーが、インプがふりかけた虫のようなものを食べている。

 地獄のディストピアの一幕はティペット監督の執念と狂気が垣間見える内容となっており、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』など特撮映画を手がけた樋口真嗣監督、『PUI PUI モルカー』の見里朝希監督、『メイドインアビス』作者のつくしあきひとなど、幅広いジャンルのクリエイターが絶賛のコメントを寄せている。


 アニメ映画『マッドゴッド』は新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国の劇場にて12月2日より順次公開。

■樋口真嗣、つくしあきひと、見里朝希ら絶賛! クリエイターコメント全文

■樋口真嗣(映画監督)
うわー! ぎゃー! ひーっ! やばい! ヤバすぎます師匠! こんなこと考えてたんですか? こんなこと作ってたんですか? 30年もかけて! コッソリと!

表では人形アニメを抛棄(ほうき)してカッコいいCGアニメーションを大作映画に一杯提供していながら、陰でやりたい放題じゃないですか! 最高です。カッコ良すぎますよ師匠!

■つくしあきひと(漫画家)
予告映像で得た「大体このぐらいのものが見られるんじゃないかな」って期待値が迂闊だったとすぐ思い知らされた。

誰もが一度は、わくわくする地獄を探検したいなぁ! って思ったことがあるはず。地獄表現の未踏域、マッドゴッドが叶えてくれる。

■見里朝希(監督/ストップモーションアニメーター)
容赦ない犠牲によって成り立つ、強烈で美しい地獄を見ているような世界観。長い年月をかけ、挫折を味わいながらもストップモーションや特撮の可能性を最後まで信じ切った、
フィル・ティペット監督の狂気に満ちた創造力に目を奪われました!

■松本光司(漫画家)
全カットがカッコイイです。奇怪でキュートな地獄めぐり。妥協のない絵作り、躊躇のないゴア描写。台詞が無いのでイメージの全てが想像力に直結します。一時も目の離せない、84分の強烈な悪夢体験でした。

■みうらじゅん(イラストレーターなど)
この世にCGがないと思ってみて。
あるのは特殊効果だけ。僕は夢想家じゃない。だって、この映画、スゴ過ぎなんだもの!

■ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
30年という月日が凝縮された、緻密で艶やかな、狂いきったこの世界。 それを観られるという、この贅沢。

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