大人気異世界転生ファンタジー『転生したらスライムだった件』(以下、『転スラ』)初の劇場作品『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』が公開中。本作では、主人公のリムルたちが鉱山毒に苦しむ「ラージャ小亜国」と女王・トワを救うため、国家を揺るがす大きな陰謀に立ち向かう姿が描かれる。

今回、主人公・リムル役を演じる岡咲美保と、本作のキーキャラクター・トワ役を演じる福本莉子が作品の推しポイントに加えて、声優と俳優の芝居の違いについて語ってくれた。

【写真】お互いの芝居を絶賛し合う岡咲美保&福本莉子 撮り下ろしショット

■初の劇場版は出演者も納得のクオリティ

――福本さんは、『転生したらスライムだった件』(以下、『転スラ』)をもともとご存知だったとお聞きしました。本作に携わるようになってからは、夜通し見るくらいハマったそうですね。

福本:そうなんです。私、アニメを観る習慣があまりないのですが、『転スラ』はすごく面白くて、観始めたら止まらなくなっちゃいました(笑)。登場人物がみんな個性的で愛おしいんですよね。なかでもリムルの人柄が大好きです。ちなみに私の姉も観ていて「めちゃくちゃ面白かった」と言っていました。

岡咲:『転スラ』の輪が広がっている。うれしい!

――岡咲さんは主人公のリムルをシリーズ通して演じ続けていますが、劇場版が制作されると聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

岡咲:いつか劇場アニメ化したらいいなというのは、『転スラ』シリーズが始まったときから漠然とは思っていたんです。とはいえ、劇場アニメ化は言えば叶うような、簡単なことではない。期待し過ぎると悲しい気持ちになっちゃうかなと思っていたのですが、こんなにも早いタイミングでお知らせがきてビックリしました。
これも応援してくださるみなさんのおかげです。劇場でリムルたちを観られるのが、素直にうれしいですね。

――実際に作品をご覧になっての感想も教えてください。

岡咲:オーガの生き残りがいたという掴みがまず最高です。あのキャラクターも登場するんだという驚きや、バトルシーンなど見どころが散りばめられていて、2時間弱ずっと飽きずに観ていられました。なかでもいちばんの注目ポイントは、やっぱりクライマックスかな。もう、自分が声優して出演しているということを忘れちゃうくらいに、夢中になって映像を見ていました(笑)。

福本:ヒイロやトワなどオリジナルキャラクターだけでなく、アニメでお馴染みの面々の活躍からも目が離せなかったです。個人的に印象的だったのがシオンの手料理。ものすごいインパクトです。アクションシーンもシオンの手料理もスケールがアップしていて、これはぜひ劇場の大きなスクリーンで見て欲しいなと思いました。

■莉子ちゃんは地声でもちゃんとトワになっている

――おふたりは同世代で、同じくお芝居の仕事をされています。
お互いの芝居についてはどのように感じましたか?


岡咲:私、自分の声を活かしてお芝居をするのがあんまり得意じゃないんです。自分と年齢が近い女性を演じるよりも、リムルのような自分とはかけ離れた存在のほうが、客観視して声のお芝居を作りやすくって。ただ、莉子ちゃんはピュアでかわいい地声のままお芝居をされていて。しかも、莉子ちゃんじゃなくて、ちゃんとトワになっているんですよ。みんなが守りたくなるような音色でかつ、王女らしい品の良さも感じました。私がもし声の芝居経験が浅いときにトワを演じることになったらと想像したら…正直、怖いです。それをやってのけた莉子ちゃんはすごいんです。

――それくらい、プロの声優から見てもトワを演じるのは難しいと?

岡咲:難しいと思います。病弱だから息は浅くなるけれど、言葉数は多い。テクニックのいる役だと思います。それなのに、いい意味でテクニックを感じさせない自然な上手さで表現できるのは、女優さんで培ってきた経験が活きているんだと思います。

福本:うれしすぎる! この音声を保存しておいて自信がなくなったときに聞きたいくらいです。


――福本さんは岡咲さんのお芝居を聞いてみて、どんな印象を持たれましたか?

福本:まず声を聞いたとき、TVアニメを見ていた一ファンとして、「あっ、リムルだ!」ってテンションが上がっちゃいました(笑)。ふだんから声のお芝居をされている方は魔法使いだなとも感じましたね。地声とはまったく違う声で芝居ができる、これがプロの声優なんだと思いました。

――福本さんは本作で声のお芝居をしてみて、いかがでしたか?

福本:もう何もかもが難しかったです。私は普段、役を演じるときはこの声でお芝居をしているんです。声色を変えることがあっても少し高くしたり、低くしたりというくらいのレベルで。だから、自分の声で勝負するとなったときに、どうやったらトワをみなさんに感じてもらえるのかなと、考えたんです。自分のなかで台本からトワの人間性をイメージして、地声よりもちょっと高くして、可憐に、かわいく聞こえたらいいなというアプローチから、役作りを始めました。

■声の芝居は自分で体感できないことも表現するから難しい

――キャラクターのイメージから役作りをするのは、普段やられている実写の映像のお仕事では無いのでしょうか?

福本:あまり無いですが、そういう現場もありました。ある作品では本読みをする前に、声のチューニングから始まりました。そこで監督から「もうちょっと声高めで」などのディレクションがあって、調整していったんです。こんな感じに形から入る作品もありますね。
アニメやマンガの実写化作品であれば、原作をリスペクトして演じるキャラクターの特徴をまずは捉えることがあります。作品や監督さんによって役作りの仕方も異なります。

岡咲:実写のお芝居って大変だ…。ずっとカメラに映されているので、色々なところに神経を研ぎ澄ませないとですもんね。私はちょっとでも自分の顔が映ると、緊張しちゃうのに。

福本:確かに、神経を使う箇所が違うのかも。声の芝居は声だけで情報を伝えるので、そこに集中しないといけません。あとは、声の芝居では自分が経験してないことも表現する機会が多いっていうのも、難しいと思いました。動きはアニメーションがやっているので、自分では体感しない訳じゃないですか。映像のお芝居などでは、自分が体験するなかで湧いてくる感情もありますが、声のお芝居はほとんどを想像しなくてはいけません。

岡咲:日常生活では経験しないことも、声のお芝居で表現することはありますね。

福本:例えば崖から落ちるなんて経験、現実の世界ではほぼないじゃないですか。
『転スラ』はファンタジーなので、絶対に経験しないであろう出来事が特に多くて…。想像ができないので、感情を表現するのも難しいなと思いました。

岡咲:そういえば、駆け出しのころは悲鳴のリアクションと言えば「わー!」しかないと思っていました。でも、それだとカッコ悪いからほかに表現する方法はないかって考えたんです。そんなとき、私は先輩方のお芝居を見て学びました。先輩方は日本語としてはハッキリ聞き取れない音や息を出していたんです。でも、悲鳴ってそういうものなんですよね。そのほうが「わー!」って口にするよりも自然に聞こえるし、気持ちも乗っているように聞こえる。分からない感情や表現は、先輩方の芝居を見て学び、引き出しを増やしていった気がします。

――最後に、本作の推しポイントを教えてください。

福本:原作やアニメが好きという方はもちろん、今回『転スラ』を初めて見るという方でも楽しめる作品になっています。記念すべき『転スラ』初の劇場版。
ぜひ大きなスクリーンで見ていただけたらうれしいですね。

岡咲:シナリオを読んだ時点から面白いのは分かっていましたが、声の芝居や音楽が加わってさらに感動する仕上がりになりました。アニメーションもすごくて、スクリーン映えする作品です。作品に関わっている側として「面白い」と公言するのが怖いときもありますが、本作は責任をもって「面白い」と言えます。オリジナルストーリーなので、原作を知らない方も楽しめます。ぜひこの機会に、『転スラ』の世界に触れてみてください!

(取材・文:M.TOKU 写真:小川遼)

 映画『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』は全国公開中。

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