革命的な映像世界で映画ファンを驚愕させたSF超大作『アバター』から13年。満を持して製作されたシリーズ最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のプロモーションで来日を果たしたジェームズ・キャメロン監督が、長年にわたる本シリーズへの思いとともに、「この作品は大スクリーンで観ることを想定した力作、絶対に劇場で観てほしい!」と訴えた。



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■続編まで13年かかったワケ

 本作の製作に13年という長い歳月を要したことについて、「少し傲慢に聞こえるかもしれないが、またモーションキャプチャーを使って続編を作っても、一作目と同じような成功、達成感を果たして得ることができるだろうか…と悩んだ時期も正直あった」とキャメロン監督は回想する。そんな彼を奮い立たせてくれたのが、素晴らしいキャスト、スタッフ、そして何より家族の存在だ。キャメロン監督は、2000年、『タイタニック』に出演していた元女優のスージー・エイミスと結婚し、子宝にも恵まれ、今、幸せな家庭を育んでいる。

 「SF映画は、あまり喜ばしくない未来が描かれていることもあるが、そこには“警告”という意味もあり、これはとても重要な役割を担っていると思うんだ。父親である私の気持ちとしては、子どもたちの未来を守ることはとても大切なことだからね。有名なSF作家アイザック・アシモフは、『SFは逃避だ』と言っていたけれど、私は『将来を見据えるもの』だと思っている。ただし、警告を発するだけでなく、そこに“希望”というものが見えなければ、観客と映画が繋がることはできない。ストーリーを考える上で、そこは最もこだわったところなんだ」。映画監督である前に、良き父としての思い…本作に込めた深い愛情が伝わってくる。

 さらにキャメロン監督は、映画作りにおいて、「どれだけ多くの人が映画を観て、どれだけの影響を受けたのか」も重要なファクターだと言う。実際、前作にインスパイアされ、熱帯雨林で働いたり、先住民の人を手助けしたり、自然環境保護に行動を起こした人もいたのだとか。キャメロン監督自身も約3年にわたって先住民の人をサポートする活動に従事しており、「それも続編製作を長引かせた原因の一つだ」と明かす。
ところが、先住民のコミュニティに関わる世界中の人々から、「私たちに光を照らすような映画を作ってください」という声が上がり、監督は完全に覚醒。「その言葉を聞いて、ようやく私のやるべきことが明確になったんだ。『アバター』という作品を作り続けることが、私にできる最大の社会貢献なんだと」。そこから続編製作に向けて、一気にキャメロン監督は加速する。

■最も推奨する劇場環境は「ドルビービジョンとIMAX レーザー」

 今回は、舞台をパンドラの森から海に移し、家族を守る先住民ナヴィの家族と侵略を企てる人類との壮絶なバトルが描かれるが、モーションキャプチャーを水中で最大限に機能させる最新技術パフォーマンスキャプチャーを採用し、前作を超える映像美が観る者を圧倒する。「続編製作が決まってから、シナリオの推敲とともにいろんな技術開発にもチャレンジし、結局、クランクインするまでに5年を費やしてしまった。ただ、その分、より進化した作品が完成したと自負しているよ。3D、4K、HDR(ハイダイナミックレンジ)、ハイフレームレートなどなど、最新技術の粋を集め、大スクリーンで観ることを想定して作ったので、DVD化や配信を待たず、絶対に劇場で観てほしい!でなきゃ意味がないからね」と強調する。

 さらにキャメロン監督は、「私が推奨する劇場環境は、ドルビービジョンとIMAX レーザー。細かいところがもう気になって、気になって…きっと何度も鑑賞したくなるはず!」と、リピートまで促す熱の入れよう。確かに本作は、劇場の大スクリーンで体験した人だけが、「『アバター』の最新作を観たぞ!』と胸を張って言える、そんな作品だ。先日の記者会見で、すでにパート5まで製作が決定したことを明言しているが、今後、どんな最新技術、そして壮大な物語を魅せてくれるのか、AI研究にも着手しているというだけに期待で胸が膨らむばかりだ。
(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は全国公開中。

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