現在、大ヒット公開中の映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で、14歳の少女を演じて話題となっている御年73歳のシガーニー・ウィーバー。自身の青春時代を思い出しながらじっくりと積み上げた役作り、さらには過酷な水中アクションにも挑んだ撮影の舞台裏を振り返った。
【写真】顔にもなんとなく面影が? シガーニー・ウィーバー演じる14歳の少女キリ
■ジェームズ・キャメロン監督は私にとって“妖精”のような人
映画「エイリアン」シリーズ、特にキャメロン監督がメガホンをとった『エイリアン2』で魅せた勇敢な姿は多くの映画ファンを熱狂させ、シガーニーをトップスターに押し上げた。前作『アバター』でも、人間とナヴィとの争いの中で葛藤するグレース博士を見事に演じ切り、改めてキャメロン作品との相性の良さを感じさせた。シガーニーにとって、まさにスペシャルな監督“ジェームズ・キャメロン”とは、いったいどんな人物なのか。
「ジム(キャメロン監督)と出会ったこと、そして長年親交をもつことができてとてもラッキーだった」と笑顔を見せるシガーニー。「思い起こせば、『エイリアン2』の時は彼はすごくシリアスで、何かに突き動かされているところがありましたね。さまざまな技術を開発する科学者でもあったし、映画監督としてはとにかく完璧主義者で、常に緊張感を持って現場に臨んでいたのを覚えています。だから、『アバター』の前作で再会した時、すごく穏やかになった姿を見て驚きました」と述懐する。
「彼自身、『子どもたちから謙虚さを学んだ』と言っているんですが、結婚して、とてもハッピーな家族を持てたことが大きかったようですね。同時に遊び心が出てきたというか。でも、今振り返ってみると、『エイリアン2』のプロモーションツアーを一緒に回っている時に、その片鱗はありました。食事の時の会話がとにかく面白くて! だから、本当の自分を隠していただけなんじゃないかって、今は思っています。真面目だけれど、遊び心があって才能に溢れている…私にとって“妖精”のような人ですね(笑)」
■遊び心から? 73歳のシガーニーに14歳の少女役をオファー
そんな遊び心からだろうか、キャメロン監督は、なんとシガーニーに実年齢と59歳も差がある14歳の女の子キリ役をオファーする。
ただ、自身のティーンエイジャー時代を思い起こした際、「嫌な思い出も甦ってきた」と苦笑い。「実は私、11歳のときにすでに180cmを越えていたんです。だから、この頃のことをすごくよく覚えてるんです。体が大きくて、しょっちゅう物にぶつかるし、友だちよりはるかに背が高いので自分を“怪物”のように感じていました。だから、私の少女時代は決して優雅なものではないんです」と吐露。それでも、「真面目に何かに取り組んだり、友だちとふざけ合ったり、いろんな楽しい思い出が一番記憶に残ってる時代でもあるので、とても参考になりました。最終的には、“演じる”というよりも、その頃の少女に“成り切る”という感覚でしたね」。
■素顔が出なくても少女キリには私が投影されている
14歳役もさることながら、水中での過酷な演技も要求され、シガーニーにとっては、まさに俳優人生最大のチャレンジであったことは間違いない。「撮影の9ヵ月前位からトレーニングを開始し、最終的には6分半、息を止めて潜ることができるようになりました。
これだけの役作り、これだけの水中トレーニングを乗り越えて、14歳の少女キリに成り切ったシガーニーだが、素顔が全く露出されない(回想シーンでグレース博士役では登場するが)。愚問かもしれないが、一抹の虚しさは感じないのだろうか? これに対してシガーニーは、「それは違うわ」とキッパリ。「パフォーマンスキャプチャーというのは、私の演技をそのままキリというキャラクターに落とし込んでいるので、私そのもの。顔の形も、私の表情も、心と体の動き全てが私なので、むしろ愛着しかありません」と、その長きにわたって構築した演技に自信を漲らせていた。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は全国公開中。