昨年NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で、ヒロインの兄であるトラブルメーカーの“ニーニー”を演じ、一躍人気を集めた俳優の竜星涼。2023年は連続ドラマの主演という大役で幕を開け、新たな輝きを放つ。

3月に30歳を迎える竜星に、早く結果が欲しくてとがっていたという20代を経て、俳優としてより進化した今の気持ちを語ってもらった。

【写真】スーツ姿が決まってる!竜星涼、撮り下ろしショット

◆“人間再生ドラマ”を泥臭く演じたい

 福田秀による同名漫画を実写化する本作は、「“資産は人なり”。資産を手放す投資家はいない!」という理念を持つ投資会社「サンシャインファンド」の社長・三星大陽(竜星)が、自称“人間投資家”として、仕事での失敗や挫折をしてしまった人、将来の夢を諦めてしまった人、さまざまな事情を抱えた人々と出会い、「スタートアップ(起業)しよう!」と声を掛け、再び生きる希望を取り戻させていく“人間再生ドラマ”。

 今回のオファーにはじめは「起業だったり投資だったり、自分が経験していない分、ちょっとこう縁遠いものなのかなっていう印象や難しいイメージがあった」という竜星。しかし、原作や脚本を読むにつれ、「スタートアップはとても身近で、そしてそれによっていろんな未来を広げる手段の一つとしてとてもいいもの」と感じたそう。「それをドラマの中で、ちょっとコメディな感じで分かりやすくやっていくというのは、斬新で、あるようでなかった新しいドラマになるんじゃないか」と手ごたえを感じている。

 “人間投資家”大陽を演じるにあたり、「本当に起業する人みたいな感覚で」いろいろな本を買い込んで勉強した。「“投資と起業の絶対本”みたいなのとか、“これさえ読んでおけば!”系など、そういうのを読んでますね。いい勉強になるなって」と茶目っ気たっぷりな笑顔を見せる。

 しかし、本作のテーマはそうしたノウハウやハウツー的な部分ではないと力説。「知識を見せるドラマではなく、人と人との物語。台本にも書いてあるんですけど、頭でいろんなことを考えていても、動かすのは人と人の間に生まれる強いエネルギーだったりする。
目的とかをしっかり見据えて、そこに向けて動く力があれば、どんなことでもできるんだよっていうのをすごく感じています」と熱く語り、「人間再生ドラマとして、訳アリな人たちをどうやり直させるかっていうのを、小手先の技術というよりは、目の前の人を立ち上がらせるということを意識しながら、泥臭くやっていこうかなと思っています」と意気込む。

 共演には、小泉孝太郎、吉野北人、小手伸也と熱い役者魂を持った実力派が顔をそろえる。なかでも、大陽の叔父・義知を演じる反町隆史は、竜星がこの世界に入るきっかけともなった縁のある人物だ。「(スカウトされた時の)名刺の裏に反町さんの名前があって、最初は会えるという欲の塊でこの世界に入りました。自分が1ファンとして憧れていた先輩と、こうして自分の主演ドラマで共演できるというのは縁を感じます。快く『(ドラマを)やるよ』と言ってくださったとお聞きしたので、その男気に感謝していますし、がっつりお芝居をするのは初めてなので、すごくうれしいというか楽しみですね」と胸を躍らせる。

 座長として迎える撮影にも特別な気負いはない。「僕自身いつも思ってることは一つで、同じ目的やゴールに皆が同じように向き合える現場にできたらなと思うので、そこだけはしっかりしていれば。引っ張っていくよりも皆で同じ方向に走っていきたい。主演だからとかそういうことではなく、どのキャストも同じように、いい作品を作っていこうと走っていければ。あとは各々が違うことしようが何しようが最終的にそこのゴールさえ守っていければ、逆に各々の考えで自由にやることで、もしかしたら(作品が)横にぐっと広がることもあるかもしれない。そういうのは素直に受け入れながら、いろいろな先輩とおもしろいキャッチボールをしていけたらなと思っています」。


◆つながりや縁が財産「種まきしたものが1つ1つ実った」

 劇中、竜星演じる大陽は、さまざまな状況から抜け出せずにいる訳アリな人たちが一歩前へ進むきっかけを提示してゆく。そんな、何かに背中を押される経験は、竜星にはあるのだろうか?「岐路と言いますか、自分の中で一番大きく変わって、この仕事をやっていこうという自信を大きくもらえたのは、劇団☆新感線の舞台を初めてやらせてもらった『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』ですね。たくさんの方に観てもらいながら、自分も変わらないといけないっていう思いで挑んだ作品だったので、大きく変わったうえで自信というものを手に入れ、さらに自分が楽しむということも同時にもらったような気がします」。

 そんな竜星にとって財産だと思うものを尋ねると、「つながりじゃないですかね」との答えが。「大陽というキャラクターも縁だったりつながりだったりを大事にしている人間なのですが、僕もそっちタイプ。それがあることによって、今まで種まきしたものが1つ1つ実っていって、いろんな人が僕自身を応援してくださったり、以前作品でお世話になった方にまた呼んでもらったり。そういうことが今やっと増えてきて1つの形になり始めているので、僕自身にとって縁やつながりは財産なんだなと思いますね」。

 縁と言えば、竜星が俳優デビューを果たした作品は今回と同じフジテレビのドラマだった(上野樹里主演『素直になれなくて』/2010年放送)。当時について竜星は「目の前の機材や、撮影スタッフ、芸能人の方を見て、“うわー!芸能人だー!!”とか、“メイキング映像に映る現場だー!”とか、そんなよこしまな気持ちでしかなかったですね」と笑顔。いまだにそんな気持ちは忘れないようにしているそうで、「僕たちは、電車に乗っているサラリーマンや学生を体現してお芝居で見せていくので、こうなりたい、あぁなりたいっていう欲も忘れちゃいけないと思うし、いつまでも最初に感じた気持ちは忘れずにいたいと思います」。

◆早く結果が欲しくてとがっていた20代 経験を重ねやっとスタートラインに

 今年3月にはいよいよ30歳を迎える。20代を振り返ってもらうと「高校生から入って、いつの間にかこの仕事をやるようになって、ある意味20代はもっともっと早く結果が欲しかったりとか、周りに対しての嫉妬だったりとかがすごく出ていました。
ある意味ずっとずっととがっていたかもしれないです。欲深かったのかなと思います」との言葉が。

 それは今も続いているのか尋ねると、「もちろんありますけど、1つ変わったのは、自分の弱さや、かっこ悪さみたいなものを今までは隠してかっこつけていたのが、今はそうした自分を認めたうえでかっこよく行こうと思えるようになった」と明かす。「それによって、周りよりも自分に対してとか目の前のことに集中して、よりやれるようになった気がします」と実感している。

 そう考え方が変化していったのは自然な流れだったという。「25、26ですかね。これからどうしようとか、このままでいいのかとか、年齢的にも一番考えるというか。ちゃんとした結果を分かりやすく残せていない限りは、自信も持ちづらかったりしますし…。そういう葛藤みたいなものがある中で、“周りじゃないんだよ、自分なんだよ”“変わるか変わらないかは自分次第”っていうマインドが、横じゃなく自分のほうに矢印が向いたときに、自分と向き合うように少しずつ変わった気がします」と振り返る。

 「自分の中では、“まだ高校生だよ、俺”みたいな気持ちもある」ともいうが、「少しずつ大人になっている部分もあるんだろうなって。結局それでいいんだと思うし、でも昔あった欲っていうのは忘れずにいたいし。今は、欲がある中でいい力の抜け方ができています。
だからこそ、ここからは今だからこそできることを1つ1つクリアしていって、夢を1つずつかなえていきたい」と力強く前を向く。「その準備期間だったのかな、20代は。そのモヤモヤだとかいろんなものがないと今には至ってないと思うので、そういう意味ではいろんな経験をした、いい20代だったなと思います」。

 「やっとスタート地点に立った気がするので、あとはここから無我夢中に駆け抜けようかなと思いますね」と笑顔を見せる竜星涼。20代最後を連続ドラマの主演という大役で飾り、さらなる進化を見せて30代へ突入するその姿をしっかりと見届けたい。(取材・文:編集部 写真:松林満美)

 ドラマ『スタンドUPスタート』は、フジテレビ系にて1月18日よりスタート。毎週水曜22時放送(初回15分拡大)。

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