現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合/毎週日曜20時)。タイトル通り、松本潤演じる徳川家康がさまざまな困難に直面した際「どうする?」と苦悩する姿が描かれているが、中でも最も家康を困惑させているのが、岡田准一ふんする織田信長の存在だろう。
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■初登場はトラウマ級のインパクト「俺の白兎」
幼少期、信長の元でスパルタ指導を受けていた家康。その後今川義元の元に人質として送られ、帝王学を学んでいたが、桶狭間の戦いで今川義元が織田信長に討たれると状況は一変。今川への忠誠を尽くすか、はたまた今川を裏切り織田と手を結ぶか。家康は大いに悩まされる。
第1話「どうする桶狭間」では、今川義元から尾張の織田信長との戦いの先鋒を命じられ、無事にその任を果たしたが、その後戦局は大きく変わり信長は桶狭間で義元を討ち取る。その勢いで家康が陣を構える城へ向かった信長は、義元の首を槍にぶら下げながら馬上で「待ってろよ、竹千代。俺の白兎」と不敵な笑みを浮かべる。
第1話で信長の登場はほぼこのシーンに集約されているが、そのインパクトは絶大であり「こんな圧の強い信長から幼少期に、いじめにも近い指導を受けていた家康は、きっとトラウマになるほど信長を恐れているんだろう」ということが想起させられた。
■信長は「ひとり暴れている」岡田准一本人も自覚あり
そんな信長の存在は、家康の心を支配していく。信長を想像するたびにフラッシュバックのようによぎるのが、幼少期に受けた信長からの“かわいがり”だ。信長から徹底的にしごかれた家康は、何度も投げ飛ばされつつも、顔を近づけてくる信長に「食ってやろうか」というおぞましい言葉を掛けられる。
岡田自身、番組公式サイトにアップされたインタビュー動画(※1)で「ひとり暴れている感があるかも」と笑うと「好きとか嫌いとか、憎悪とか愛情とか、いろいろな存在を家康に感じてもらわなければいけない役」と信長像をとらえていたが、この言葉通り、厳しさの中にそこはかとない愛を感じさせるような感情も垣間見せる、何とも立体的な信長を好演している。
■信長×家康の関係=岡田准一×松本潤の関係性?
悩み抜いた中、信長と同盟を結ぶことを決心した家康。第4話「清州でどうする!」では、信長の待つ清州城にやってきた家康は、家臣からは「先に頭を下げてはなりません」と口を酸っぱく言われていたが、威圧的な信長を前に、先に名乗ってしまうというヘタレぶりを見せてしまう。
さらに今川の処遇について和議の提案をした家康だったが、信長は「冗談?」と一蹴すると、家康の首筋を何度も叩き平手打ち。さらに「情で自らを滅ぼすのか?」と家康を“顎クイ”。「いまだに白兎か、今川は滅ぼせ」と命令し、信長の妹であるお市(北川景子)を「めとれ」と告げる。駿府に瀬名(有村架純)という妻がいる家康が返事に困ると「俺が決めたことだ!」とゴリ押し。続けて「俺はもたもたするのが嫌いじゃ」と圧をかける。
まさにやりたい放題の信長だが、どことなく、ただいじめているのではなく、愛情の裏返しのような距離感が感じられるのも、岡田の言う「普通をどれだけ超えていけるか」という新たな信長像へのチャレンジなのかもしれない。第4話の終わり、お市は信長に「兄上が心から“信”を置ける方は、あの方お1人だけかも」と、信長にとって家康が大切な存在であることを明示するシーンがあったが、まさに愛ゆえに厳しく接するという2人の関係性を言い表しているようなセリフだった。
放送前の取材で、松本は同じ事務所の先輩である岡田に対して「岡田くんはV6時代に、ジュニアとしてバックで踊らせていただいていた直属の先輩。
岡田も番組公式サイトでのインタビューで「松本くんに出て欲しいと言われて出演を決めた」と話していたが、こうした2人の信頼関係があるからこそ、傍若無人に振る舞っているように見える信長でも、家康に対して何とも言えない愛を感じるのかもしれない。
史実では、今後信長と家康の間には、瀬名と嫡男・信康をめぐりさらなる過酷な運命が待っている。果たして2人はどんな関係性を作り上げていくのか――岡田信長、松本家康から目が離せない。(文・磯部正和)
大河ドラマ『どうする家康』はNHK総合にて毎週20時放送。BSプレミアム、BS4Kにて18時放送。
※1 織田信長役 岡田准一さんインタビュー 『どうする家康』ホームページ
※2 松本潤、岡田准一の信長は「怖い」 シネマトゥデイ