『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』に未来デパートの配達員役でゲスト出演する山里亮太(南海キャンディーズ)。昔からドラえもん好きを公言している山里にとって、大きな夢をまた一つ叶えたかたちだが、そんな自身が共感するキャラや、重なるポジションは? 南海キャンディーズとして新ネタも作りながら、個人で多数のMC仕事やラジオをこなし、プライベートでは素敵な家庭も持つ今、手に入れたいモノとは? 山里亮太の気になる「今」に迫った。



【写真】ストイックな一面を語った山里亮太

■大好きな『ドラえもん』への出演をフライング発表!?

――先日、ツイッターでの「ドラえもんと話したんです」という不思議な発言が話題になり、その後に映画への声のご出演が発表されました。フライングで謎のつぶやきをしたとき、どんな心境だったのでしょうか。

山里:どれぐらいの温度で、どれぐらいの人に怒られるのかなと試してみたい思いと恐怖ですね。そもそも僕がこういう大作に関わらせていただくこと自体、微力なれど、1人でも多くの方に観てもらうために自分を使っていただく意味があるのだと思いますから、何か効果はあるかもしれないと。

――「匂わせ」的なつぶやきについて、実際に何か怒られましたか。

山里:これが意外と怒られなくて。会社は僕のSNSに注目していなかったんでしょうけど(笑)、ドラえもん関係者の皆さんからも全然怒られませんでした。すぐに公式発表があったし、ネタバレになることもなかったですし。

――大のドラえもん好きと公言されていますが、ドラえもん映画の中で、特に好きだった作品は何ですか。

山里:『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)』(1985)ですね。幼心に、武田鉄矢さんの「少年期」の歌が入るタイミングが天才的だと思ったんですよね。それに、よくみんなが言う「映画版のジャイアンいいやつ」現象の象徴的な作品ですし。
テレビアニメの通常回と違って、映画版で1年に1回あるギャップが良いんですよね。

――山里さんご自身は子どもの頃、ドラえもんのキャラクターに例えると、誰でしたか。優等生だったことから、ネット上では「出木杉君」説も出ていましたが。

山里:それはありがたいですね(笑)。でも、出木杉君は容姿端麗、頭脳明晰ですから、僕はそういう小学生じゃなくて、肥満児で保健室に「健康優良児」の写真を貼られていたくらいで。メインの5人以外の友達で、よく出てくる3人のうちの1人で太っていてほとんど喋らない子がいるんです。今、思い返せば、その子じゃないかな。

――では、ドラえもんのひみつ道具の中で、子どもの頃に1番欲しかったものと、今欲しいものは何ですか。

山里:子どもの頃に欲しかったのは「バイバイン」ですね。子どもの頃、松前漬けが大好きで、その中の数の子が特に好きだったんですけど、大きい数の子を2個連続で食べたら、お父さんが信じられないくらいキレたんですよ。「こんなに浅ましい子どもだと思わなかった!」と。それがすごくショックだったので、バイバインで数の子を増やしたいと思いました。
それから、今欲しいのは、「アヤカリン」。舐めてからラッキーなことがあった人に触ると、自分に同じ種類のラッキーなことが起こって、人の幸運にあやかれるアイテムで、自分の人生にぴったりだなと。これを持っていたら誰かに嫉妬することもないし。

■自分のやりたいことに対して、課題が定期的にずっと出続けるのが理想

――映画には「ユートピア」が登場しますが、山里さんが思い描くユートピアはどんな世界ですか。

山里:自分のやりたいことに対して、課題が定期的にずっと出続けるというのが、パーフェクトな世界ですね。

――課題をずっとやり続けたいと? やはり出木杉君的なストイックさですね。

山里:いや、ストイックというか、臆病なので、面白みがないんですよ(笑)。自分の世界であるライブを、自分がもういいと思うくらいまでやり続けていたいんですよ。例えばスポーツでも、練習も全部楽しんで、試合でいい結果を出して、最高の気持ちになる人もいるけど、僕の場合は、試合の日まではずっと不安で、自分はダメだとか向いていないとか思いつつ、試合の日に成功したらそれが全て「楽しかったこと」に一瞬にして変わる感じ。だから、「自分のやりたいこと=課題」で、それが定期的にずっと70歳から80歳くらいまであれば良いなと思います。

――仕事に慣れてしまわないよう、緊張感を維持しているところもありますか。

山里:慣れるほどの能力はないし、「今回成功できたのは、ここまでの積み重ねがあったから」、逆に言えば「これがなかったらできなかったんだ」と思う恐怖が常にあるんですよ。
何も準備せずにできてしまう人が山ほどいる世界なので、僕はできる限り準備します。

――では逆に、完璧を求めすぎて失敗してしまったこともありますか。

山里:それはたくさんあります。僕の場合、完璧なモノという勝手な正解を作って、それに近づけようとするんですけど、結局たどり着かなくて、心折れてしまう繰り返しです。理想とか目標って、ともすれば足を引っ張ってくるものだから。

■目標は、70歳でもライブをやっていること

――4月期にはオードリー・若林正恭さんとの2人の半生をドラマ化する『だが、情熱はある』(日本テレビ系)も放送されますし、プライベートでも素敵なご家族がいて、あらゆることを叶えてきた印象があります。それでもまだ叶えていない目標はありますか。

山里:実はそれ、東野(幸治)さんにも言われたんですよ。やっぱり目標は70歳でもライブをやっていること。ライブをやり続けているという自分の姿が、化け物だらけがひしめき合う(芸能の)世界の扉を、怖がらず開けることのできる免状みたいなものだと思うから。いくらレギュラー番組を持っていると言っても、筋肉がなくなったら、レギュラー番組も同時に終わっていくと思うし。ライブは筋肉というか、「自信の貯金」ですよね。
ライブをやっていて、笑い声を聞いた耳は自分の好調を作ってくれるんです。

――山里さんの筋肉、自信をドラえもんが作った部分もありますか。

山里:自信というよりむしろドラえもんから学んだのは「ドラえもんがいない世界に自分がいる」という現実です。それを認識したとき、誰も助けてくれないことが分かったから、自分が頑張るしかないと思った。僕にも初代マネージャーとか、自分を助けてくれるドラえもん的存在はいたと思うけど、ポケットから出してくれるのは解決策じゃなく、どうやったらそれを乗り越える体力がつくかを教えてくれるドラえもんだったなと思います。

――そうしたドラえもん代わりの存在を、今は誰、あるいは何が担っていますか。

山里:今は自分でなんとかポケットを作っている感じですね。ポケットの中に入っている道具は、ライブとかラジオとかで得た成果。それが飴とか光線とか、いろんなアイテムになって、ここぞというときに自信の素になってくれる感じかもしれないですね。

(取材・文:田幸和歌子 写真:松林満美)

 『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』は公開中。

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