衝撃の解散発表から1年以上。6月29日に開催される東京ドームでの解散ライブを控えるBiSHが、テレビアニメ『天国大魔境』(TOKYO MX/MBSほか)のオープニングテーマ「innocent arrogance」を担当する。
解散は「自分たちで決めて、社長に言った」という6人。それぞれが現時点で抱く活動への思い、解散後の将来像とは。新曲の話とともに聞いた。
【写真】個性爆発! いろんなポーズをキメてくれたBiSH撮り下ろしカット(全6枚)
■『天国大魔境』のオープニングテーマは“責任重大”
BiSHがオープニングテーマを担当する本作は、青年漫画誌「アフタヌーン」(講談社)で連載中の石黒正数による近未来SFアドベンチャー漫画が原作。「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズ、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』などを手掛けたProduction I.Gがアニメーション制作を担当する本作の舞台は、未曾有(みぞう)の大災害により廃墟と化した2039年の日本。異形の化け物が巣食う世界で“天国探し”の旅をするマルとキルコが、崩壊した世界と対峙(たいじ)する。
――振り付け担当のアイナ・ジ・エンドさん、新曲「innocent arrogance」のポイントを教えてください。
アイナ:今回は事前のメロディ変更が何度かあって、(作詞・作曲を手がける)松隈ケンタさんの心意気を感じたし、私たちも気合いを込めてレコーディングしたので、とてもいい楽曲になったんじゃないかなと思います。(インタビュー時点では)これから振り付けをするんですけど、「誰を主役にしようか」「どんなメッセージを込めようか」と考えています。考えれば考えるほどイメージがふくらむ楽曲なので、聞いていただく方にはいろいろな着眼点で楽しんでほしいです。
――『キングダム』や『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』など、過去にもアニメ作品とのタイアップが多かったBiSH。本タイアップには、どんな思いがありますか?
セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):BiSHは、ありがたいことに原作ファンが多い作品に携わらせていただけることが多く、うれしいです。
今回の『天国大魔境』も話題作ですし、お話を聞いた時は責任重大と思ったんですけど、アニメ化のすてきなタイミングで一緒にスタートを切れるのは光栄でした。
――原作には、どのような感想を持ちましたか?
アユニ・D(以下、アユニ):作品のお話を受けてから、原作を読んだんです。個人的に「終末世界」や「異形生物」、「近未来」を描くSF作品が好きなので、世界観へ一気に引き込まれましたし、大ファンになりました。
チッチ:単行本を買ったみたいです(笑)。
アユニ:はい。電子書籍も買って、紙の単行本も自分でそろえました。でも、先ほど『天国大魔境』の担当編集さんから全巻いただいたので、メンバーみんなでたくさん読みます(笑)。
■衝撃の解散発表から1年以上 残りわずかな活動への思い
――新曲「innocent arrogance」への期待も高まる中、BiSHは、6月29日(以下、“6.29”)に東京ドームで開催される“解散”ライブに向けてひた走っています。2021年12月の解散発表から現時点まで、どのような思いで活動に取り組んでいますか?
アイナ:解散を自分たちで決めて、社長に言った日から、うまく言葉にはできないんですけど「昔よりもっとしっかり生きよう」と思っています。ここまでの期間では、楽しいも悲しいも行き来したし、寂しさも知った。今は、“6.29”が楽しみだし怖い…。一辺倒な言葉では表せないけど、こうした日々が待っていたのはBiSHに入らなければ知らなかったので、グループに拾ってもらえた感謝でいっぱいです。
チッチ:解散発表した日は、私たちだけの事実だったものが「みんなの事実」になってしまったと思いました。でも、後戻りできないし、清掃員(=ファンの名称)のみんなもいろんな感情を抱くがのが分かっていたので、「全部を受け止めていきたい」と覚悟を持って活動してきたつもりです。よくも悪くも自分の思いが言葉にも態度にも出てしまうけど、それでいいかなと考えながら。「ありがとう」「愛してる」と、メンバーや清掃員にすべて伝え切って解散したいと思って、今はみんなと接しています。
アユニ:解散発表からの喜怒哀楽とか情緒の変動とか、環境の変化は全てが本当だし、大切なこと。最近では、これが“最後”となる場面も増えてきたので「全部忘れたくない」という気持ちで、しっかりしていこうと思いながら生きています。
モモコグミカンパニー(以下、モモコ):解散発表後の2022年は、1月から2月に事務所の別グループと一緒に回るツアー「WACK WACK SHiT TOUR」があり、5月から12月には単独ライブハウスツアー「FOR LiVE TOUR」があって。心が折れそうな時は「解散の事実が決まっているからこそ、今頑張らなくていつ頑張る」という力に変えていました。悪い方向には向かっていなくて、今は、前向きに捉えています。
ハシヤスメ・アツコ(以下、ハシヤスメ):グループへ加入した当時から、仕事への姿勢は変わっていません。BiSHが自分のやりたいことであるのは変わらずですし、最高のメンバーやスタッフさんと一緒に“BiSHチーム”として活動できているので、解散の日までみんなで手をつなぎながら、最後は「最高の“6.29”にしたい」と思っています。
リンリン:解散発表直後は、ライブで清掃員が泣いているのを見て、胸が苦しくなり私も泣きそうになることがありました。
でも、その後はライブを重ねるにつれてメンバー、清掃員との時間が楽しくなり、解散を忘れるぐらい、今まで以上にその日その日を心から楽しみつつ過ごしています。ハッピーとは言えないですけど、暗い気持ちにはならず、今を満喫しています。
■気になる解散後、6人それぞれが描く将来のビジョンは?
――株式会社BiSHの設立や、“次なるBiSH”を生み出すオーディション企画「BiSH THE NEXT」のスタートなど、新たな動きが発表されていますが、6人は今後どんな挑戦をしていきたいですか?
アイナ:純粋に歌とダンスが好きな思いでBiSHに加入してからは、人として成長できました。今も「欠点が多い」「至らない部分がある」と自分では思っているんですけど、BiSHを通して人と触れ合う機会が増えたし、そんな私にずっと向き合ってくれた、家族のようなメンバーのおかげで、表現の幅が広がり、みんなと一緒にステージへ立つのが生きがいになったんです。この経験を宝物にすれば、もっと歌とダンスが好きになれるし、表現の幅が広がると思っているので、解散から先では明るい未来を想像しています。
チッチ:“6.29”までBiSHを本気でやり抜く、精いっぱいかけ抜けるのが今の私がするべきことだと思うので、解散から先は考えられていません。頑張ってきた経験を大切に、みんなと燃え尽きたら幸せになれるんじゃないかなって。そうした先で、解散から先は自由に生きていたいと思います。
アユニ:BiSHへ加入するまでは言葉をまともに話せないぐらい、うまく生きられなかったんです。でも、BiSHに入って、メンバーや清掃員に出会えてからは、自分を“人間”にしてもらえました。解散後は“もっといい人間”になれるように、ナイスな方向へ行けるように頑張ります。
モモコ:昔からやりたいことやなりたいものはたくさんあったけど、どれも中途半端だったんです。
でも、BiSHに加入してやり抜く大切さを学んだので、解散後もグループでの経験を糧にしていきたいと思います。
ハシヤスメ:将来を考えるのは難しくて。今頑張ったからこその未来ですし、BiSHのハシヤスメ・アツコとして生きて、その先で何か新しいもの、広がるものがあれば、すてきな世界に向かえると思っています。とにかく今は、がむしゃらにやっていきたい気持ちが強いです。
リンリン:私は絵を描いたり、何でも作ることが好きなんです。作ったものへの愛着があるし、大切にしているので、解散後も何かを作り続けていきたいと思います。
(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)
TVアニメ『天国大魔境』は、TOKYO MX/MBSほかにて放送中。ディズニープラスにて世界見放題独占配信中。
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