今年度のアカデミー賞を席巻した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で、助演女優賞の栄に浴したベテラン女優のジェイミー・リー・カーティス。壇上で喜びを爆発させた彼女が伝えたことのひとつには、ジャンル映画ファンへの感謝があった。

1978年に公開され“スクリーム・クイーン”の称号を手にするとともに、彼女のキャリアを切り拓いたジョン・カーペンター監督によるホラー映画の金字塔『ハロウィン』。あれから45年、完結作『ハロウィン THE END』でついに長きにわたって演じたローリー・ストロード役との別れを迎えたジェイミーに、今の心境を聞いた。

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■オスカー受賞はジャンル映画のおかげ

――アカデミー賞受賞おめでとうございます。改めて感想を教えてください。

アカデミー賞に限らず、その場の出来事をしっかり体感することを大事にしたいので、事前の予想記事などは一切読まなかったんです。もちろん実際に受賞するなんて全く思っていませんでした。受賞した時の私の顔を見ていただければ、何が起きているのかわかっていないということは伝わったと思います(笑)。

(『エブエブ』が)色々な賞をいただいて、皆さんの温かい気持ちを感じたんです。私自身、そして私の仕事に対して、こんな風に受け止められているのかと実感することが多かったんですよ。気づけば自分も賞レースの渦中にいたわけですが、私のキャリアは、長年出演してきたジャンル映画があってこそ。それを自覚することがとても重要だと感じていました。そのことをファンの方に伝えたかったんです。
40年間ホラー映画と関わってきましたが、決してそれをなかったことにしようとしているわけじゃないんです。そのことをちゃんと伝えたかった。アカデミー賞授賞式の夜、私は自分がそこにいる理由をしっかり理解していました。ホラー映画を愛するみなさんが応援してくれたおかげなんです。本当に感謝しています。

――ジョン・カーペンター監督がツイッターで祝福メッセージを寄せていましたね。直接お話はされましたか?

まだ直接は話せていないんですよ。ジョンは、今回のハロウィン3部作の2作目「KILLS」が公開された時に留守電を残してくれて、「今映画を見た。君の演技が本当に素晴らしかった」と言ってくれたんです。ジョンに対しては、感謝の気持ちをずっと持ち続けています。頻繁に会話するわけではありませんが、とても素敵な関係を築けていると思います。

■ラストシーンはジェイミー自身のアイデア

――前作のハイテンションな作風から一転、今作は落ち着いたトーンのドラマ展開になりました。
最初に物語を聞いた時の印象を教えてください。


前作の終盤のエネルギーのままで3作目を始めるのは不可能でした。だから4年という歳月を挟むことになったんです。その中で、ローリーは娘の死をある程度は受け止めて、心を癒す時間があった。ローリーが傷つきながらも孫のために生きるという選択をすることで、観客は最初「彼女は大丈夫かも」と思うはずです。それこそが重要でした。監督のデヴィッド(・ゴードン・グリーン)の選択はとてもクレバーだと思います。

――コーリーという新たなキャラクターについてはどう感じましたか? マイケル復活のためには、新たなキーが必要だったのでしょうか。

その通りだと思います。この映画のオープニングは、それだけでホラー映画だと感じるシーンになっています。そしてオリジナルの『ハロウィン』を想起させるシーンでもある。ベビーシッターの男性・コーリーと少年が登場し、ある悲しい事件が起きる。
それは意図的なものだったのか、それとも事故だったのか。そのせいでコミュニティーの中に「怒り」のようなものが生まれますが、ローリーは若いコーリーに対して共感していく。このオープニングはすごく勇気のいる選択だったと思うし、すごく興味深いものでもありました。

――デヴィッド・ゴードン・グリーン監督とは、物語の結末について話し合いましたか?

実は、私が一番この映画に貢献できたのが最後のシーンなんです。撮影中に私から提案したんですが、私の中で、このシリーズはこう終わるべきだというものがあったんです。その案を受け入れてもらうために、かなり戦いました。私にとって、あの日、あの場所で、ああいう形でラストを表現するということがすごく重要だったんです。

他にもエンディングについては常に意見を求められました。この映画のテーマは「善」と「悪」であり、ローリーが善、そしてマイケル・マイヤーズが悪の象徴です。なので、彼らは物理的に戦わなければならない。これはそういう作品なんだ、と改めて学びました。マイケル・マイヤーズの迎える終焉にあいまいさがあってはいけない。
ハッキリとした形で終わらせなければいけない、という結論に至りました。

――劇中、ローリーとフランク・ホーキンス保安官補の会話の中で桜が印象的に登場します。日本では大きな悲劇があった場所に植えられる木でもありますが、桜にはどんなイメージがありますか?

それはすごく興味深いですね。フランクがなぜ桜に惹かれ、桜を見に行きたいと思っているのか、今すごく納得しました!私の中では、希望の象徴であったり、成長であったり、新しい命、新しい人生というものを象徴している花だと思います。自然というものは常に変化し続けていて、たとえ悲劇があったとしても、またそこに新しい花が咲く、そんな風に考えていました。

■ローリーとジェイミーの旅路は続く

――『ハロウィン THE END』の終わり方には100%納得していますか?

イエス。他の終わり方はあり得なかったと思います。恐らくですが、これが最後の「ハロウィン」映画ではないと思いますし、きっとこれからも作られると思います。全部をリメイクするようなことだってあるかもしれない。この先どうなるかはわかりませんが、新しいローリー・ストロードが出てきて、1978年の『ハロウィン』を新しく解釈した作品ができるかもしれない。今までもそういうことはありましたから。ただ、私はそこに出演はしません。
今回が最後だと決めています。「さようなら」と言うのはとても難しいことでしたし、すごくエモーショナルなことでもありました。ほろ苦い別れであると同時に華やかで美しい別れでもあると思っています。

――ローリーにはこれからどんな未来が待っているでしょうか。

1978年の『ハロウィン』に登場したローリーは、とても賢くロマンチックで、未来ある若者でした。しかし恐ろしい暴力によって全てを奪われてしまった。そしてその後の45年間、彼女は暴力的な行為にさらされ続け、精神的なサポートが与えられることはありませんでした。暴力の形はともかくとして、このことは世界中の人に起きることでもあります。

45年経った後、もしローリー・ストロードが癒される、喜びを見つける機会が巡ってきたとしたら、それこそが究極の希望のメッセージだと思っています。人生を完全に破壊され、あれほどの悲しみと苦痛を経験した少女が、一連の事件の最後に一縷の希望を手にできるかもしれない。それを描けたことを、とてもうれしく思っています。

――最後に、日本のホラーファンへのメッセージをお願いします。


みなさんのおかげで、私の人生があります。1978年から、そして2018年からの3部作まで、 みなさんがローリー・ストロードへの愛と、彼女とマイケル・マイヤーズの戦いをずっと見守ってくれたおかげです。みなさんがずっと私の仕事を応援してきてくれたからこそ今があります。本当に心から感謝しています。これからも誇らしく思ってもらえるように頑張りたいと思います。(日本語で)どうもありがとう。

(取材・文:編集部)

 映画『ハロウィン THE END』は公開中。

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