スーパーマリオブラザーズの世界を原作としたアニメーション映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が全国公開中だ。マリオ&ルイージのほか、ピーチ姫、クッパ、キノピオ、ドンキーコング、カメックなど、おなじみのキャラクターが大集結する本作は、“マリオの生みの親”である任天堂代表取締役フェローの宮本茂も製作として参加し、スーパーマリオブラザーズ愛にあふれた作品となっている。

そして、マリオ&ルイージの吹き替え声優を務めるのが、声優の宮野真守畠中祐。「ヒアウィーゴー!」など、誰もがゲームの声を脳内再生できるような既存の強いイメージがある中で、どんな役作りのアプローチを取ったのか。二人に話を聞いた。

【動画】宮野真守&畠中祐、貴重な「ヒアウィーゴー!」や「アバババババ」を披露! インタビューの様子

■「ヒアウィーゴー!」を猛練習

ーー宮野さんは「ルイージ役が畠中さん」、畠中さんは「マリオ役が宮野さん」と聞いたときの印象を教えてください。

宮野:そもそも自分がマリオの吹き替えを担当すること自体がビックリで、とてもありがたく、光栄だったんですけど、緊張やプレッシャーもあったので、そんな中で、弟のルイージ役が畠中くんって聞いたときは、なんか面白い組み合わせにできるんじゃないかって思いました。僕がお兄ちゃんで、畠中くんが弟っていう関係性が、すごく想像できて…。過去には、宿敵同士や師弟関係などで共演してきたんですけど、その経験があったからこそ、「兄弟いけるな」っていう感覚が僕の中にありました。

畠中:僕が宮野さんに初めてお会いしたのは、10代のときだったんです。宮野さんの作品にゲストとして出たことがあって。

宮野:そうそう。わ~。若いな~って(笑)。


畠中:あはは(笑)。僕にとって宮野さんは、そんな前からずっとお世話になっている方で、これまでもお芝居を近くで浴びさせていただいていたので、ヒーローのような存在なんです。だからこそ宮野さんが、僕の中でヒーローであるマリオの声を担当するのは、胸がワクワクしてうれしかったです。

ーー相性ピッタリだったのが納得です。今回、マリオとルイージの吹き替えは、「ヒアウィーゴー!」など耳なじみのあるゲームの声のイメージを守りつつ、クリス・プラットさんなどアメリカ版の演技も意識しないといけなかったんじゃないかなと思います。どのような役作りをしたのでしょうか?

宮野:今回はもとのキャストの演技をなぞるというよりかは、日本語版として自分たちのアプローチをしてくださいとディレクションがあったので、どんな心持ちでマリオを演じるかに集中しました。「ヒアウィーゴー!」や「イッツミー」、「ワッフー」などのおなじみのセリフは、ゲームの音声を再現してということだったので、そこはすごく頑張って、スタジオ内で二人で練習しましたね。

ーー短いセリフだからこそ難易度が高そうですが…。

宮野:難しいというよりかは、マリオを演じている喜びの方が勝っちゃって、自由にリアクションを入れていました。ジャンプする時に「フ~ッ!」って言ってみたり…! 自分が思いついたリアクションを満遍なく入れていいよって言われていたので、「マリオだったらどうするかな…」って自分の中で構築しながら叫んでいました。

ーー宮野さんなりの“マリオ”になっているんですね! 畠中さんはどうでしたか?

畠中:ルイージも相当表情がついたキャラクターだったので、「アバババババ」とか「アイヤイヤイヤイヤイヤ」とか「ウワ~」みたいな“これぞルイージ”みたいな声を随所に入れたいなと思っていました。だから原音と比べると、「アバババババ」「アイヤイヤイヤイヤイヤ」を多すぎるくらい言っちゃってるかもしれないんですけど、そこは“日本語吹き替え版ならでは”として楽しんでほしいです!

ーー注目ポイントですね。
それでは映画の演出について聞かせてください。今回の映画では、土管の中身やアイテムの摂取方法など、ゲームの世界を拡張した“映画ならではの演出”がたくさんありました。宮野さん、畠中さん的見どころはどこでしょうか?


■マリオって「おじさんじゃないんです」

宮野:ゲームの世界になじみがある人たちにとっては、マリオとルイージがニューヨークで生活する姿が、結構面白いかもしれない。そこで描かれる彼らの姿は、物語の中でめちゃくちゃ重要で、ひげを生やして、おなかはちょっと出ているけれど、実は彼らってとても若くて悩みのある青年なんですよね。家族に認められたくて頑張る姿や、リアルなマリオたちの悩みが見られるのは、すごく映画ならではだと思います。おじさんじゃないんです…!

畠中:そうなんですよね。等身大だからこそ、結構、繊細で人間くさくて、そこが共感できるポイントかなと。あと、やっぱり今まで触れてきたマリオが、そのまんまいるっていうのが楽しいですよね。『マリオカート』なんかみんなやってたわけだし、それが劇場のスクリーンに、どーんと出てきたときの感動たるや…。あと音楽もたまんないですよね~。小さい頃から聞いて、絶対みんなが耳なじみのある音楽がオーケストラバージョンになって集まっているわけですから、それだけでもう十分楽しめる映画になっています。

ーー本当にそうですよね! 先程お話にも出ましたが、『マリオカート』のシーンは手に汗をにぎりました…。
お二人は『マリオカート』の思い出はありますか? カート派、バイク派、遊び方いろいろあると思うんですけど…。


宮野:なるほど、若いね。ここで世代が出ちゃうわけですよ。僕の時代はカートしかなかったんですよ…! もちろんいろんなカートがあることも知ってるんですけどね、僕が一番慣れ親しんだのは、スーパーファミコンの初代『マリオカート』なんです。レインボーロードが難しくてね、狭いからすぐ落っこちちゃって。攻略が難しかったですね。

ーーまさかのジェネレーションギャップが…! 畠中さんはプレイされたことは?

畠中:僕も友達の家で、(NINTENDO)64とかでしてたんですけど、どっちかというと、ゲームセンターの『マリオカート』で遊んでいました。写真撮影するやつ。帽子のフレームの下に自分の顔が写せて、それで走るわけですけど、めちゃくちゃ変顔して、ドン滑りしました(笑)。

宮野:滑ってそう。狙いすぎて、滑ってそう(笑)。

畠中:そう(笑)。
みんなでゲームセンターに集まって遊ぶのが、すごく楽しかったです。

ーーその思い出たちが映画になり、大スクリーンで体験できるのが本作の素晴らしいところですよね。

宮野:本当にそう! 映画の中で、僕が落ちまくったレインボーロードを走れたときは、なんか感慨深くて! あと、やっぱりマリオといえばパワーアップじゃないですか。みんなが通ってきたそれぞれのゲームがあると思うんですけど、ネコやタヌキ、ファイアだったり、ちっちゃくなったり、いろんなマリオがふんだんに出てくるので、「わたしのマリオ」や「僕のマリオ」をくすぐられるというか、童心に帰れる映画になっていました。

ーーとても共感します。すごく楽しい映画である一方で、最後にはほろりと泣けてしまうハートフルな部分もありました。宮野さん、畠中さんが、マリオとルイージを演じて得た、気付きを最後に教えてください。

畠中:ルイージからは「信じる力」を感じました。彼はきっと幼少期から、マリオにヒーローでいてほしかった。その思いがルイージを支えて、パワーになっていたと思うので、ルイージの“一途に信じる力を持った生き方”は、すごくすてきなところだと思います。

宮野:マリオって、ルイージにとってもみんなにとってもスーパーヒーローなんですけど、この映画では、そんな彼の人間味みたいなものが、すごくわかるんです。勇気があって、優しくて、前向きな男ではあるんですけど、1人の人間だから、くじけそうにもなるし、負けそうにもなる。
そんなマリオのリアルな気持ちが見られるところに、僕はグッと来ました。彼は、逆境でもめげないんですよね。スーパーパワーを持っているんじゃなくて、心がヒーローであるのがマリオなので、心さえ強ければ誰しもがヒーローになれるということを教えてくれる映画になっていると思います。(取材・文:阿部桜子 写真:小川遼)

 アニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は全国公開中。

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