ファッション誌でモデルを務めるかたわら、俳優としてドラマ『グランメゾン東京』や『DCU』、映画『名も無き世界のエンドロール』など数々の話題作で輝きを放つ中村アン。その美BODYと満開の笑顔は男女問わず幅広い世代から支持を集めている。

7月1日から俳優座劇場で上演される舞台、演劇集団Z‐Lion 第13回公演『笑ってもいい家』では、主人公の秘密を抱えたカメラマン・吉澤朱音役で主演を果たすなど、その活躍は絶好調だ。「芸能界の仕事は自分で選んだ仕事。誇りを持って臨みたい」と話す中村に、俳優業への思いやこれからの目標を聞いた。

【写真】飾らない笑顔が魅力の中村アン

◆“何かを得たい”“新しいことを知りたい”という貪欲な思いが原動力

 演劇集団Z‐Lion 第13回公演『笑ってもいい家』は、都会から離れた場所で共同生活を送る若者たちの姿を描いた人間ドラマ。中村は、仲間たちと共同生活を送りながらも、ある秘密を抱える主人公の朱音を演じる。

 本作は、中村にとっては初舞台にして、初主演舞台となるが、「以前から舞台にはすごく興味はあったんです」と話す。

 そして、「私はやってみたことがないことをやりたいという好奇心が強いんです。芸能界に入ったのもそうした思いが大きかったから。もちろん不安はあるけど、行ってみた先にはどんな世界があるんだろうと気になるんです。舞台も同じ。知り合いの方が出演する舞台を観に行くたびに、ステージの上からはどんな景色が見えるんだろうと想像していました。それに、自分のお芝居に向き合うことができるのも舞台だと思うので、そうした挑戦をしたいと思いました」と、出演を決めた理由を明かした。


 取材当時、すでに稽古はスタートしていたが、「まだまだ手探り状態」という中村。演じる朱音という役柄について聞くと、「私自身も、朱音という役がどう作り上げられていくのかまだ分からなくて…稽古でチャレンジしていくのみです。ただ、朱音は大きな問題を抱えていて、それでも家族を守りたいという思いが強い人です。誰にでも起こりうる問題を描いているので、リアリティを大事にしたいと思っています」と語ってくれた。

 この日、取材の中で中村からは「挑戦」「チャレンジ」という言葉が多く聞かれた。これまでも、モデル、タレント、そして俳優業と、数々の挑戦を続けて来た中村だが、「挑戦をしたい」という思いは尽きないようだ。その原動力は何なのか尋ねると、「貪欲さ」だと話す。

 「今回の舞台も、やらないという選択肢はありませんでした。やらないのは簡単だけど、それでは何も得られません。何かを得たいし、新しいことを知りたいという貪欲な思いが私の原動力になっているのだと思います。新しいことに飛び込まなければ、苦労することも少ないとは思うのですが、そんな生き方はつまらない。やってみてダメなら、次にいけるような気もするので、とにかくやってみようと思っています。
ただ諦めが悪いだけなのかもしれませんが(笑)」。

◆パブリックイメージに縛られた過去 「今、やっとスタートラインに」

 これまでの芸能生活では、「5年ごとに大きな出会いがあった。25歳でバラエティで世の中に出て、30歳の頃に『ラブリラン』というドラマで主演をいただきました。そして、35歳の今、初舞台に向かいます」と振り返る。そうして無我夢中で挑戦を続けてきた中村だが、役者としての思いが変わったのは実は2、3年前だという。

 「それまでは、私自身が自分のパブリックイメージに縛られていました。バラエティに出演していた時は、自分を作ることに必死だったんです。どうやって印象を残すか、どうやってパッと見でも分かってもらえるかを常に考えていました。でも、お芝居の畑にきたら、それはいらないものだった。なので、(演じるということは)すごく難しかったです。

私は、初めから女優を目指していたわけではなかったので、自分をどうやって消すのか、どうやって違う人になるのか、その感覚が分からなかったんです。ですが、『名もなき世界のエンドロール』という映画で初めて感情をぶつけるというお芝居をしてから、景色が変わりました。
『あれ、何か楽しい!』って。それからは、出会う作品、出会う方々に刺激を受け続けています」。

 そんな中村が目指すのは「期待に応えられる人」。「今、やっとスタートラインに立てたと私は思っています。こうなりたいという理想像があるわけではないですが、自分が選んだ仕事に誇りを持ちたいですし、求められる人でいたいと思っています」と目を輝かせた。

 最後に、『笑ってもいい家』という作品タイトルにちなんで、「笑顔になれる瞬間」を尋ねると「私は大変な時の方が楽しいんです」と満面の笑みで答えてくれた。「何もないのが苦手」なのだという。

 「仕事はもちろん大変なこともあるけどそれが楽しい。常に笑顔で仕事しているわけではないけど、心の中にはいつも喜びがあります。お休みはちょっとでいいんです。長期間休んで落ち着いてしまったら、社会復帰が難しくなっちゃう(笑)。ただ、そうはいっても、役者はオンオフが大きいお仕事。
お休みがまとまってあって、その後にスイッチを入れて次の作品に向き合うというペースなので、今が一番、自分と向き合っている時間が長いんです」。

 自分と向き合う時間には「今でも自分のイメージに縛られずに乗り越えるにはどうしたらいいのか考えますし、逆にイメージを持たれるというのは素晴らしく光栄なことだとも思います。有名になったことを窮屈に感じる時もありますが、有名になりたくてやってきたのにそれが窮屈なんて矛盾しているなと思ったり…。そんな余計なことまで考えてしまうから、暇は大敵」と笑いながら本音も明かしてくれた中村。今後も俳優として挑戦を続けていく姿を追いかけたい。(取材・文・写真:嶋田真己)

 演劇集団Z‐Lion 第13回公演『笑ってもいい家』は、7月1日~9日に俳優座劇場で上演。

編集部おすすめ