「美少女戦士セーラームーン」シリーズの最終章となる劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」に、「セーラーコスモス」の声優として出演することが発表された北川景子。数々のドラマ、映画で主演やヒロインを務めてきた北川にとって、「美少女戦士セーラームーン」というコンテンツは実写版『美少女戦士セーラームーン』(2003年~2004年)のセーラーマーズ/火野レイ役で出演した、俳優仕事の原点でもある。

そんな原点に20年ぶりに戻ってきた思いや、その役どころ、セーラー戦士たちとの交流やデビュー20周年で大切にしてきたことなどを語ってもらった。(※本記事は「セーラーコスモス」についての一部ネタバレを含みます。ご注意ください。)

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■オファーに驚き 実写版セーラー戦士のみんなに率直に相談

――北川景子さんにとって20年ぶりの“里帰り”となる「美少女戦士セーラームーン」ですが、劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」に、声の出演のオファーを受けたときの思いをお聞かせ下さい。

北川:自分のデビュー20周年の年に、実写版から20年を経て、また縁ある作品に携われるのはすごくうれしいお話でした。ただ、オファーをいただいた時はすごく驚いてしまい、一瞬その意味が飲み込めず、少し考えてしまったんです。私も実写版で「美少女戦士セーラームーン」に出演させていただいたからこそ、自分たちセーラー戦士にとって「セーラームーン」はやっぱり沢井(美優)さんという思いが強いんです。私が今回演じるセーラーコスモスは、セーラームーンの未来の究極形なので、「自分でいいのかな」という気持ちが強くて。それで実写版セーラー戦士のみんな(沢井美優、泉里香、安座間美優、小松彩夏)に連絡して、「どうしたらいいと思う?」「私が演じるのはちょっと違うんじゃないか」と率直な思いで相談したところ、みんなは「『美少女戦士セーラームーン』という作品は自分たちにとってもすごく大切で、自分たち実写版戦士からアニメの劇場版に携わる戦士が出てくるのはすごくうれしいことだから、ぜひやってほしい」と言ってくれて。沢井さんもすごく楽しみにしていると言ってくれ、みんなが背中を押してくれたことで、挑戦することにしました。

――演じる上でどんなことを心がけましたか。

北川:セーラーコスモスは遠い未来のセーラームーンで、すごく長く辛い戦いをしてきた中、自分が誤った選択をしたのではないかと自分を責めた時期などもあったと思うんです。
実写版のセーラー戦士も含め、過去のコミックやアニメ、ミュージカルなど、ずっと一生懸命戦ってきたセーラー戦士の集大成となる役なので、どういう声を出せばそうした歴史を感じてもらえるのかには悩みました。 今回、(月野うさぎ/セーラームーン役)三石琴乃さんの声でガイドをいただいたんです。三石さんが聖母のように深みや温かみのある声で演じていらっしゃるガイドを聞いて、私も「超越した」とか「遥か遠い未来の」とか難しく考えるより、みんなを優しく包み込むような柔らかい声が出したいなと思い、アフレコに臨むことができました。

――完成した本編をご覧になっていかがでしたか。

北川:自分のことはともかく、錚々たるレジェンド声優の方々の集合体のようで、声優好きの方にとっても大興奮な作品だと思いますし、アニメ技術も凄くて、映像美も凄いんですよ。それにストーリーは、私たち実写版セーラー戦士が14ヵ月間一緒に過ごした月日も思い出されるものでした。

「仲間がいたから頑張れる」というのは、 今回の作品のテーマの1つでもありますが、私が20年間この仕事を続けてこられたのも、他の戦士たちがみんなずっとこの世界で、それぞれの場所で頑張っているから。思うようにいかない時、うまくいっていると周りは思っていても、自分では納得していない時など、それぞれあったと思うんですけど、それでも辞めずにこの業界に5人とも残っている。みんなが芸能界で頑張っているから、自分も頑張ろうという思いはずっと私の支えになっていて、そういう自分たちの歴史とも重なる気がしました。

■20年続く交流 実写版セーラー戦士たちは“戦友”

――デビュー作の仲間と20年も交流が続いているのは珍しいのでは。

北川:みんな今は35~37歳で、人生の半分以上を一緒に過ごしてきているので、もはや友達という感じでもなくなってきたというか。撮影中はやっぱりライバルで、誰が目立つか、誰が1番メイン回をもらえるかとか、負けたくない思いもありました。
でも、良い作品を作りたいという同じ目標に向かって全身全霊を注いでいた戦友みたいな感覚もあって、実写版が終わってさらに腹を割って話せるようになった気がします。

――5人はどんな関係性ですか。

北川:私たちの中では、セーラームーンの沢井さんが真ん中にいて、それを支えるその他4人という感じで、「この人を支えるんだ、守るんだ」という思いが14ヵ月の撮影の中で自然に育っていったんですね。いまだに(下の名前や愛称でなく)「沢井さん」と呼んでいるのも、沢井さんをみんなが守る、支える、沢井さんが真ん中という意識がみんなの中にあって、今も関係性が変わっていないからこそなんです。お互いにリスペクトし合っていて、お互い知らないことがほぼないくらい、唯一心を開ける場所だという気がします。

――どんなに多忙でも、「美少女戦士セーラームーン」という作品、セーラー戦士のお付き合いをずっと大切にされているのはすごいですよね。

北川:いえ、全然そんなことはなくて。例えば3~4ヵ月会えないような時期があっても、いつもそこにみんながいてくれるし、わかってくれるし、仲良くしてくれる。どんな集まりでも必ず声をかけてくれるんです。みんな良い時もそうでない時もあるし、うまくいっているように見えても、本人がやりたいこととは違っている時もある。それでも20年前と同じように友達でいてくれる、一緒にいたいと思ってくれるから続けられたんです。すごいのは、ずっと変わらず仲良くしてくれていたみんなの方で。
今は私に子どもがいることで、夜あまり出かけられないからと、集まるタイミングをランチに変えてくれたり、家に来てくれたりすることもあるんです。

――特に女性は人生のステージが変わるたびに、人間関係がリセットされることが多いですよね。まして芸能人同士は難しいところもありそうですが。

北川:本当にそうですよね。小学校から中学、高校、大学の友達で定期的に連絡をとる友達は、セーラー戦士以外1人ぐらいしかいなくて、高校生の時に仲良しだった子ともキャリアや結婚によって、やりたいことや向いている方向が変わってくると、ほとんど集まらなくなっちゃって、「1番仲良かった子って誰だったっけ」みたいなことが起きていたんです。そういう意味でも、戦士は特別で。私が結婚したときも本当に喜んでくれて、みんな披露宴に来てくれて、アルバムにしか入ってなかった「Friend」という曲をみんなで歌ったんですよ。

■人生で1番運が良かったことは、「美少女戦士セーラームーン」でデビューできたこと

――素敵なエピソードですね! 「美少女戦士セーラームーン」は、北川さんにとってどんな存在ですか。

北川:人生そのものですね。物心ついた3~4歳のときから「美少女戦士セーラームーン」が好きで、グッズも集めていましたし、初めて受けたオーディションも「美少女戦士セーラームーン」で、戦士同士の信頼だけでなく、プロデューサーさんもその後お仕事に呼んでくださったり、当時のスタッフさんともまた別の現場で会えたりするのが楽しみになっていて。自分にとって人生で1番運が良かったことは、「美少女戦士セーラームーン」でデビューできたこと。自分はこれが始まりだったから仕事がつながってきたし、「美少女戦士セーラームーン」でデビューしていなければ、今ここにいないと思います。


――デビューから20年で培ったご自身の強みは何ですか。

北川:変わらないことじゃないかと思います。器用じゃないからだと思いますが、仕事だからとか、相手によってスイッチを切り替えるのではなく、ずっと自分のままでいる方が楽なんです。それで、一緒にいたいと思ってくれた人がいてくれたり、また仕事したいと思ってくださった方が呼んでくださったりする。20年間大事にしてきたのは、ずっと等身大でいようという思いです。

17歳でデビューして、同い年で既に子役からキャリア10年という方もいる中、どんなに賢いふりや知ったかぶりをしても、自分が新人であることは変わらないし、できないことはできない。わからない時は正直にわかりませんと言い、自分を大きく見せようとせずにありのままでいる方が、後々信用してもらえるというのは、この20年間お仕事をしてきて感じたことでした。まずは人としてちゃんとしないことには、俳優はできないと思っているので、常に変わらないよう自然体でいることが私の20年で培った武器かもしれません。

(取材・文:田幸和歌子 写真:小川遼)

 劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」2部作は、≪前編≫が公開中、≪後編≫が6月30日より公開。

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