テレビアニメ『呪術廻戦』第2期となる「懐玉・玉折」(MBS/TBS系)が、7月6日より放送スタートする。本作のキーキャラクター、伏黒甚爾を演じるのは子安武人

子安は、甚爾に対し「悪党。倫理的には全くもって賛同できないけれど、ちょっと憧れる面もある」と思いを語る。また、本作で高専時代の姿が描かれる五条悟役の中村悠一は、これからの物語を踏まえて「甚爾が残したものが大きい。彼自身が出ていなくても、そこに存在しているような人物」と、甚爾の存在感の大きさを物語った。そんな2人に「懐玉・玉折」の見どころ、そして同じく今作のメインキャラクターである夏油傑への思いを聞いた。

【写真】中村悠一が演じる“若き日の五条悟”

■とことん落ちて好きなことをやれたら、逆に幸せなのかも

――「懐玉・玉折」のストーリーを読んだときの率直な感想を教えてください。

中村:「ただ強い先生」という印象が強かった五条ですが、「懐玉・玉折」では、その強さの裏付けや理由、そして五条と夏油の関係が明かされます。ここにきてようやく、五条という人物が掘り下げられるんです。そして、五条が戦うことになる甚爾。彼の苗字は伏黒ですから、当然、伏黒恵と何らかの関わりがある訳で…。そういう意味では「懐玉・玉折」は、この先の展開を見る上で欠かせない大事なエピソードだと感じました。

子安:中村くんが言っている通り、『呪術廻戦』のキーとなる話という印象が強いです。
それに「懐玉・玉折」って結局のところ、五条と夏油の物語なんですよね。決して、僕が演じる甚爾の話ではない。彼は五条と夏油の敵役です。ただ僕の気持ちとしては、それだけで終わってしまうにはもったいないなと。

――そんな子安さんは、甚爾を演じることが決まったとき、どんなお気持ちでしたか?

子安:すごくうれしかったですね。原作を読んでいて、甚爾を格好いいなと思ったんです。彼は悪党で、しかも人間としてきれいではないですし、落ちぶれてしまっているのですが強さがある。彼を見ていたら、とことん落ちて好きなことをやれたら、逆に幸せなのかもしれないと思うところもありますし、現実世界では彼のようになれないので、ちょっと憧れもある気がします。

――なるほど。

子安:ただ、現実世界ではそうなれなくても創作物のなかでは、そういう人物を演じることができるんですよ。だから甚爾をやりたかったんです。役を演じるという点では、正義の味方よりも、悪党を演じるほうが僕は楽しいのかも。


――中村さんは甚爾をどのような人物と捉えていますか?

中村:彼は、生い立ちとしては恵まれていません。ただ、ある特徴があるが故の強さを持っていて、しかも、その力を活用して仕事もしているんです。そこまで考えて彼を見ると、やっぱり格好よく見えるんですよね。壁を乗り越えて自分の力で生きていく彼に、憧れを抱くのは分かります。ただ、簡単に人を殺しちゃうので、そこはよくないですね。

子安:倫理的には全く賛同できない人物です。ただ、彼の底にある憤怒の塊のようなものは理解できる部分もあるかもしれない。

――見方を変えると、甚爾に共感できる部分がある。

中村:そうだと思います。甚爾が好きという方は、もしかしたら彼と同じような感情を抱いたことがあるのかもしれません。そういう誰しもが持っているような怒りや負の感情を思い切り出せるのが、お芝居の面白いところですよね。

■子安の声がもたらした、甚爾の強さに対する“説得力”

――中村さんは子安さんが甚爾を演じると聞いたとき、どう思いましたか?

中村:子安さんって、絶対折れない声をしているじゃないですか。
声質がフラフラしていないんです。

子安:うん。「生命力が強い声」と言われることがよくあります。

中村:子安さんの声って、そうなんです。役者なので芝居を変えることはできますが、声質はその人が持っているものなので、子安さんに決まったと聞いたとき、「なるほど、甚爾の強さの面をピックアップするんだ」と納得がいきました。

人間もそうですが、キャラクターって多面的なので、どの面をピックアップするのかは、声によっても変わると思うんです。例えば甚爾で言えば、陰湿な感じにするというキャスティングの方向もあったかもしれません。そのなかで子安さんが演じるということは、強さに説得力が欲しいんだと感じました。

子安:中村くん、いいこと言うね。

中村:ありがとうございます(笑)。

――反対に子安さんは、中村さんが演じる五条のどういうところに魅力を感じていますか?

子安:中村くんのことはよく知っていて、僕のなかではかわいい後輩なんです。五条をどう演じているのかも、もちろん知っていました。
ただ、今回の五条は若いというところで、どういう風に来るのかが楽しみで。実際に聞いてみて思ったのは、ちゃんと若いということ。だから、僕も違和感なく物語に接することができました。

中村:高専時代から五条はとんでもなく強く、ある種、根拠のない自信を持っていて、調子に乗っています。ただ、そんな彼の成長や変化を見られるのが、今回のエピソード。その成長分を引いたことが、「若さ」につながったのかもしれないです。

――五条と甚爾に加えて、お2人から名前が挙がった夏油も「懐玉・玉折」の重要な登場人物です。彼についての印象も教えてください。

中村:序盤では五条と夏油がバカなこともしていますが、その後の彼を思うと「五条たちと過ごしているこの時間は何なんだろう」って思っちゃうんです。楽しそうにしていても夏油の心のなかでは、少しずつ何かが溜まっているのかなと。「懐玉・玉折」を踏まえてこれまでの物語を振り返ると、夏油の見え方や、五条とのやり取りも違って見えるんじゃないかな。

――なるほど。


中村:五条って、実は(物事を)深くは考えていないんですよ。高専時代は特に。今回の戦いがあって、夏油との別れがあって、人間的に成長して考えが変わったと思うんですよね。夏油が行き着いた先に対する五条の考えが、彼が虎杖(悠仁)たちに言っていることにつながっているんです。

子安:物語中の重要人物ではありますが、甚爾は夏油のことを「五条と一緒につるんでいる大して強くもねえ小僧」くらいにしか思ってないかもしれないですよね。

――「懐玉・玉折」においては、確かにそういう感情かもしれないですね。

子安:だから僕も、夏油に対して何かの感情を心に住まわせないようにしていました。目の前にある出っ張った石ころを蹴とばしてやろう、くらいの気持ちでしたね。

■甚爾というキャラクターが残したものは大きい

――今回、五条と甚爾はバトルを繰り広げます。芝居のかけ合いはいかがでしたか?

中村:五条としてはかなり追い詰められた戦いになりますが、お互いの気持ちをぶつけ合うというバトルではないんですよね。というのも、甚爾は五条のことを知っていて意識はしていますが、五条にとって甚爾は、いきなり出てきた訳の分からないやつなんです。そんな感情のなかでの戦いなので、かけ合いでも気持ちをぶつけ合うことがあんまりなくて。
せっかく子安さんと一緒にできるだけに、そこはちょっと残念でした。

子安:隣で呼吸をしている中村くんを横目で見つつ、自分のセリフを喋るというやり取りは楽しかったけれど、確かに熱いバトルって感じではなかったよね。強いもの同士のクールでドライな戦いだったから、極端に言ってしまえば役者としては物足りなかったかも。本当はもっとやり合いたかった。「なかむらぁ~、お前、持っているものをぜんぶ出してみろよ! ぶつけてこいよ!!」ってやりたかったな(笑)。でもそういう作品でも、キャラクターでもないので。あとアフレコを終えたいま感じることは、「懐玉・玉折」の甚爾って思っていたより出番が少ないということ。

中村:もっとガッツリ出ていた印象がありますよね。

子安:こんなに魅力的なキャラクターだから、もっと演じる機会があればと、役者・子安武人は思っていますね。

――甚爾スピンオフに期待ですね。

中村:さすがに先生も今は余力がないんじゃないかな(笑)。ただ、今後のストーリーを鑑みても、甚爾というキャラクターが残したものは大きい。彼の生い立ち、やってきたことすべてが、この後の物語に影響してきます。甚爾から始まったものがいっぱいあるから、彼が出て来なくても、作中で存在しているように感じるんです。だから、より「もっと出ていた」という印象があるのかもしれません。

子安:そうなんだよね。キャラクターのインパクトがすごい。

ーーそれくらいのキーキャラクターなんですね。

中村:『呪術廻戦』において相当なキーキャラクターだと思いますよ。それも含めて、冒頭でも話しましたが、「懐玉・玉折」は重要なエピソードだと感じています。

(取材・文:M.TOKU 写真:小川遼)

 アニメ『呪術廻戦』第2期は7月6日よりMBS/TBS系列全国28局にて放送開始。

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