独立して3年目を迎え、ますます多忙を極める女優の前田敦子。今年に入り、テレビドラマだけでも『ウツボラ』(WOWOWプライム)、『かしましめし』(テレビ東京)、『育休刑事』(NHK総合)、『季節のない街』(ディズニープラス)、そして現在放送中の『彼女たちの犯罪』(読売テレビ・日本テレビ系/毎週木曜23時59分)と出演作が目白押しだ。

子育てに奮闘しながらも女優業にまい進する前田に、自身の“現在地”とともに、特別な時間と位置付ける“釣り愛”についても話を聞いた。

【写真】趣味の“釣り”でタチウオをゲットした前田敦子

■フリー1年目は映画、2年目は舞台、3年目の今年はドラマが中心の活動に「流れみたいなものをすごく感じています」

 2021年1月よりフリーとして再スタートを切ってから、ペースを緩めるどころかさらに精力的に仕事に取り組んでいる前田。独立して3年目、精力的に作品に出演し続ける彼女は何を思って女優業と向かっているのか。「3年目に入って思うのは、ここから先、新たな挑戦をするにしても、ありきたりなものにはしたくないので、自分の中で“変化”を付けていきたい」と語る。出演数もさることながら、いずれも演じ甲斐のある個性豊かな役であることも、その“変化”を意識したトライと言うべきだろう。

 また、今年はテレビドラマが多いが、「意図して選択したものではない」と言う前田。「流れみたいなものをすごく感じています。独立して1年目は映画出演が多かったんですが、NODA・MAP(第24回公演「フェイクスピア」)に参加させていただいたことがきっかけとなって、2年目は舞台をたくさんやらせていただきました。そして3年目を迎えた今年、テレビドラマにも積極的に参加してみようと思っていたら、立て続けにドラマ4本入ってきて。やっぱり流れってあるんだなということを改めて感じたので、今はまだ、その流れに乗って楽しんでみようかなと」。

 ただし、やみくもに流れに乗るわけではない。「自分の中で、これは絶対にやりたいとか、やりたくないとか、そういう選択肢を1回無くしてみようかなと思っています。
どんな役でも、どんな作品でも、トライすることによって、その先に自分に合っているものが自然と見えてくるんじゃないかなと。映画、テレビドラマ、舞台を中心にほぼ全種類、演じる場を経験してきたと思いますので、4年目となる来年、自分がどうなっているのか、すごく楽しみです。そこからがまた新たな挑戦の始まりだと思っているので」。先を見据える慎重さと、流れに身を任せる大胆さ、それが前田の真骨頂のようだ。

 それにしても、これだけ作品が重なってくると、役の切り換えは難しくないのだろうか?「私の場合、切り換えで困ったことはあまりないんですよね。役に呑み込まれたりしないですし、ずっと客観的に自分を見ているので。意外と心が強いんだと思います。あとは物理的な問題ですが、逆にいろんな役を複数やっていると、台本を覚えるという作業がものすごく大変なので、役に引っ張られる暇がないんです」と微笑む。さらに前田は、「役を“生きる”という感じではないけれど、最終的に『行き着くところは一緒なんだ』ということに気づいたら、冷静にお仕事に取り組めるようになりました。これはすごく大きいこと」と自らの“進化”に自信をのぞかせた。

■仕事も子育てもエキサイティング! 釣りは「待つ」時間を楽しめる唯一の趣味

 多忙な女優業とともに、子育て真っ只中でもある前田。4歳になる息子との生活は、「とても刺激的」だそうだが、その成長ぶりに手を焼くことも。
「だんだん物事がわかるようになってきたので、いろいろスムーズになった部分はありますが、その分感情も育っているので、『なんか淋しそうにしているな』とか『今日はちょっと楽しそうだな』とか、そういう心の状態もわかりやすくなってきて、時にはケンカになったりもします」と苦笑い。

 「私が一方的に叱るだけじゃなくて、どちらも同じような感じでちゃんとぶつかる、みたいなこともできるようになってきた感じですね。一人の人間になってきた証しだと思います。この間なんか、髪の毛を切ったらめちゃキレられて(笑)。サマーカットみたいな感じで後ろをかなり短くしたんですが、鏡を見て『こんなの嫌だ!』とか言って本気で怒っちゃったんです。最初は、それがちょっと面白くて笑っていたんですが、だんだん収拾がつかなくなってきて、思わず母に電話しちゃいました(笑)」。微笑ましいエピソードを楽しそうに語る前田にとって、仕事も私生活もエキサイティングな毎日のようだ。

 そんな彼女だが、気分転換はどのように図っているのだろうか。近年、海釣りに目覚め、二級小型船舶操縦士免許も取得したらしいが、意外な答えが返ってきた。「プライベートでは、実はあまり行けてないんです。ただ、釣りは一生楽しめるものなので、もう少し大人になって存分に楽しめるように、今、少しずつ準備をしている段階。それこそ人生最後の楽しみとして大事に(気持ちや技術を)育てていきたいと思っています」。


 どうやら、釣りは前田にとって特別なもののようだが、なぜそこまで惹かれるのか。「私はどちらかというと、日常的にずっと動き回っていて、せかせかしてるタイプなんですが、私の経験してきたエサ釣りは“待つ”という真逆の行為なので、そのバランスが心地いいのかもしれません。ただ待つのではなく、その先にある“アタリ”(魚がかかる瞬間)に集中しているので、余計なことを考えない“時間”を楽しむっていうんでしょうか…それが唯一できるのが釣り。まぁ、すぐ釣れたら、それはそれでテンション上がりますけどね(笑)」。

 そんな前田が、釣り専門チャンネル「釣りビジョン」で特別企画に参戦し、久々に沖に出てタチウオを狙うという。「正しい釣り方を教えていただいて、大物を1匹は釣り上げたい!」と意気込む前田だが、果たして釣果はいかに? 周りは海しかないという状況の中で、釣りに没頭する時間が何よりも好きだという彼女にとって、まさに念願の仕事と趣味のコラボレーション。追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する前田の勝負強さに期待したい。(取材・文:坂田正樹 写真:松林満美)

 『前田敦子 やっぱり釣りが好き!』は釣りビジョンにて9月10日21時放送。釣りビジョンVODにて同時配信。

スタイリスト:清水恵子(アレンジメントK) 衣装協力:PAS MARQUE、korocoro

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